不動産投資における金利上昇のリスクとは?今後の金利の動向も解説

公開日:2024.01.04

最終更新日:2024.02.25

監修者:室田雄飛

執筆者:三澤 智史

不動産投資を始めるにあたり、なかなか予測ができず不安な要素となるのが金利上昇リスクです。金利上昇が起こると、キャッシュフローが悪化し、十分な資産形成ができなくなる可能性もあります。
さらに近々、マイナス金利政策が解除されて金利が上昇するだろうと予測している専門家も存在します。
しかし、不動産投資は長期的な視野を持って行うことが重要で、一時的な金利上昇についても冷静に考えなければいけません。
本記事では、金利上昇リスクやその対策などについて解説するので、金利上昇について不安を抱いている方はぜひ参考にしてください。

不動産投資のローンは変動金利が多い

不動産投資のローンは固定金利と変動金利に分かれますが、多くの人が変動金利を選んでいます。理由は、固定金利よりも変動金利の方が金利が低いからです。

たしかに変動金利は名前のとおり、一定期間ごと(毎年4月と10月)に金利が見直されて変動するため、金利が上がり固定金利を上回ることも考えられます。しかし、以下のグラフに示すとおり、長期にわたり変動金利が固定金利を下回っていることがわかります。

固定金利が変動金利を下回る時期が訪れる可能性もゼロではありませんが、このようなグラフの傾向から変動金利を選ぶ人が多いのも理由の一つです。

(出典:住宅金融支援機構「民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)」/ https://www.flat35.com/loan/atoz/06.html

 

不動産投資における金利上昇のリスクとは?

不動産投資ローンの金利が上がると、ローンを返済する間だけではなく、売却時の出口戦略にも大きな影響を及ぼします。

ここでは、不動産投資における金利上昇のリスクを解説します。

なお、不動産投資には金利上昇以外にもさまざまなリスクが付きまといます。以下の記事で、リスクの種類と対処法についても確認してみてください。
>不動産投資はリスクが高い?リスク一覧と対策方法について解説!

キャッシュフローが破綻する

不動産投資で物件を購入するときは基本的にローンを組みますが、金利が上昇するとローン返済額が増えるため、月々のキャッシュフローが破綻することがあります。

家賃収入とローン返済額が相殺されれば、月々の手出しは少なくなります。しかし、金利が上昇するとその分だけ支払う利息も増えるため、家賃収入を大幅に上回ってしまうのです。

例えば、2000万円のローンを35年で組んだと仮定して、金利が2.5%のときと3.0%のときを比べると、月々の返済額は5500円ほどの差が生じます。

よって、自己資金にある程度の余裕をもっておかないと、ローンの返済が厳しくなるため注意が必要です。

物件価格の全額をローンで賄う「フルローン」を利用すると、最初の自己資金を最小限抑えることができます。注意点を含め以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
>不動産投資をフルローンで始めるのは危険?基礎知識や融資を受けるポイントを紹介

金利が上昇すると不動産価格が下落する

金利が上昇すると月々のローン返済額が増えるため、これから不動産の購入を考えている人のなかには購入を決心できずにいる人が増え、不動産の買い控えが起こります。そのため、不動産がなかなか売れず、価格が下落します。

不動産に限らず、物の価格と金利には相関関係があり、以下のとおりです。

1.金利が上がる
2.国民はお金を借りづらくなり買い物を控える
3.物が売れなくなる
4.物価を下げて売れるようにする

不動産投資家は不動産を売却してキャピタルゲインを狙う出口戦略まで考えていますが、なかなか買い手が見つからない場合、やむを得ず価格を下げてまで買い手を見つけることになります。

 

不動産投資で金利上昇したときのシミュレーション

不動産投資で金利が上昇したときのシミュレーションをしてみましょう。共通の条件のもとで、パターンを3つに分けて考えます。共通の条件とパターンは以下のとおりです。

条件

● 借入額:2000万円
● 返済期間:35年
● 返済方法:元利均等

 

パターン

● パターン1:返済期間中は金利1.0%のまま
● パターン2:最初の5年間は金利1.0%、6年目以降は1.2%
● パターン3:最初の5年間は金利1.0%、6年目からの5年間は1.2%、11年目以降は1.5%

以上の条件とパターンでシミュレーションした結果をまとめると、以下の表のとおりになります。

パターン1 パターン2 パターン3
返済総額 2371万1746円 2429万7460円 2492万6875円
月々の返済額

(1年目から)

5万6457円 5万6457円 5万6457円
月々の返済額

(5年目から)

5万8084円 5万8084円
月々の返済額

(10年目から)

6万0181円
パターン1との

返済総額の差

58万5714円 121万5129円

上記の表から、金利が上昇すると月々の返済額は数千円の単位で増え、返済総額は100万円以上に及ぶこともあります。

 

まもなく金利上昇するといわれている理由

日本では国債金利が上昇し、それにともない固定金利がすでに上昇しています。そして、まもなくマイナス金利政策が解除されると考えている専門家が存在するとともに、変動金利もそれにともない上昇するかもしれません。

ここでは、まもなく金利上昇するといわれている理由を解説します。

米国の金利上昇の影響

米国では新型コロナウイルスの感染拡大で低迷していた経済の回復が進み、金利を大幅に上昇させました。米国で金利上昇が起こると、日本も米国に影響されて金利を上昇する傾向にあります。

よって、マイナス金利政策を続けて低金利のままである日本も、いずれ金利が上がり不動産投資のローンの金利も上がるだろうと考えられています。

世界情勢の影響

ウクライナ機器やイスラエル・パレスチナ問題などの世界情勢も日本の金利に影響します。これは、原油などのエネルギー問題が起こり、日本の物価が上昇することによるものです。

物価が上昇してインフレが起こると、日本銀行はインフレを抑えるために金利を上げる流れとなり、不動産投資のローンの金利も上がることになります。

賃金上昇をともなう物価上昇

日本銀行の植田総裁は、マイナス金利を解除して金利上昇させるタイミングを見計らっています。これには国民の賃金が関係しています。

2023年10月31日の総裁記者会見で、植田総裁は賃金の上昇をともなう形で物価が上昇することを目指していますが、現状はまだ賃金が上がっていません。

日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を維持していくことで、賃金の上昇を伴うかたちで、2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現することを目指していく方針です。

(引用:日本銀行「総裁定例記者会見」/https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk231101a.pdf

また、以下の図のように、インフレにはコストプッシュ型と需要牽引型の2種類があり、植田総裁が目指しているのは需要牽引型の方です。

(出典:住宅ローンアナリスト モゲチェック塩澤「マイナス金利解除の時期は? 第一生命経済研究所エコノミストは2024年前半も予想!」/https://note.com/takashi_shiozawa/n/n30ddfd1b7c51

賃金が上昇すると、国民は物をたくさん買うようになるため需要増大になり、インフレが起こります。このサイクルを実現するために、さらなる賃金上昇が必要と考えられています。

 

金利上昇リスクを避けるために!所有物件でできる対策

不動産投資ローンの金利が上昇してもリスクを軽減する方法はあります。しかし、場合によっては不動産を売却して、投資をやめることも考えなければいけません。いずれのときも、大きな損失がないよう慎重に判断することが大切です。

ここでは、今の段階で不動産投資をしている方ができる、金利上昇リスクへの対策を解説します。

不動産投資のリスク管理の大切さについては、以下の記事も併せて読んでみてください。
>不動産投資はリスク管理が大切!分散投資の方法と注意点を解説

借り換えをする

金利が低い不動産投資ローンに借り換えをすることで、月々に支払う利息を抑えられます。各金融機関を調べて、それぞれの金利を比較してみましょう。

その際、今組んでいる不動産投資ローンに5年ルールや1.25倍ルールがない場合は、それらのルールがついたローンに借り換えるのも一つの方法です。

5年ルールとは、返済額の見直しを5年ごとに行うため、金利が変動しても5年間は返済額が変わらないというものです。また、1.25倍ルールとは5年ごとの見直しの際に返済額が増えたとしても、1.25倍までしか増えることはないというものです。

注意点として、借り換えには数十万円の手数料がかかります。借り換えによりどれだけ返済額が減るか、よく調べてから決めましょう。

主な借入先ごとのローン金利の相場については、以下の記事でまとめています。少しでも返済額を抑えるためにも、併せてチェックしてみてください。
>不動産投資のローン金利の相場は?借入先の相場を徹底比較

繰り上げ返済をする

手元の資金に余裕がある場合は、繰り上げ返済をするのも一つの対策です。繰り上げ返済により残債を減らし、月々に支払う利息分を減らせるからです。

例えば、以下の条件で繰り上げ返済をした場合を考えます。

【条件】

● 借入額:2000万円
● 返済期間:35年
● 返済方法:元利均等
● 金利:最初の10年間は1.0%、それ以降は1.2%

11年目に100万円を繰り上げ返済

以上の条件で繰り上げ返済した場合としなかった場合をまとめると、以下の表のとおりになります。

繰り上げ返済した場合 繰り上げ返済しなかった場合
返済総額 2396万3776円 2412万1757円
月々の返済額 5万3963円 5万6457円

繰り上げ返済することで、月々の返済額は2500円ほど、総支払額は15万ほど抑えられることになります。

しかし、そもそも不動産投資は金融機関から融資を受けながらできることがメリットであるとともに、繰り上げ返済により生活資金が減ってしまうことは注意が必要です。

変動金利から固定金利に切り替える

変動金利で不動産投資ローンを組んでいる場合は、金利が変動しない固定金利に切り替えることで、金利上昇によるリスクを回避できます。金利が変動しないことで、精神的な不安を取り除くこともできるでしょう。

しかし、変動金利が固定金利を上回るのを確実に予想することはできないため、固定金利に切り替えの際は十分に考えて判断することが大事です。あくまで、選択肢の一つとして考えておくと良いでしょう。

物件を売却する

月々の返済が厳しくなった場合は、物件の売却も考えた方がいいでしょう。売却益が残債よりも多い場合は、自己資金を切り崩すことなく売却できます。特に、金利が上昇しているときは、インフレによる物価上昇とともに物件の価格も上昇している可能性があり、高い価格で売却できます。

売却益と残債を比べたうえで、物件を持ち続けるリスクや、自己資金を切り崩してでも売却するときの損失を考えて判断しましょう。なお、物件の所有期間が5年以内で売却する場合は譲渡所得税が39.63%かかり、5年を超える場合でも20.315%かかるため、多くの税金を支払うことにも注意が必要です。

長期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいいます。

短期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のものをいいます。

(引用:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」/https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm

短期譲渡所得の税率 

所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=合計39.63%

長期譲渡所得の税率 

所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%

(引用:三菱UFJ不動産販売「不動産売却でかかる税金は? 譲渡所得税の計算方法や知っておきたい特例も解説」/https://www.sumai1.com/useful/plus/sellers/plus_0164.html

 

これから不動産投資を始めるうえで注意したいこと3つ

これから不動産投資を始める方は、金利上昇リスクにそなえてローンの返済計画を十分に検討しなければいけません。その際、考えられるさまざまなパターンについて、シミュレーションをすることも大事です。

ここでは、今の段階で不動産投資をしている方ができる、金利上昇リスクへの対策を解説します。

低金利の不動産投資ローンを選ぶ

月々の返済額を抑えるために、低金利の不動産投資ローンを組める金融機関を選ぶことが大事です。前述したとおり、金利がわずかに違うだけで、返済総額は100万円以上も変わることがあるからです。

不動産投資ローンを選ぶ際は、金利の高さだけではなく審査の通りやすさも考えつつ、複数の金融機関を比べて検討しましょう。

例えば、メガバンクや都市銀行など規模が大きな金融機関の金利の相場は、変動金利で1~2%ほどです。金利が低いですが、審査を通過するのは難しい傾向にあります。

一方で、地方銀行など規模が小さな金融機関の金利の相場は、変動金利で2~3%ほどです。金利が高い一方、審査に通過しやすい傾向にあり、メガバンクと対照的な関係があります。

頭金を多くする

不動産投資ローンを組むときに、頭金を多くすることも対策の一つになります。残債にかかる利息の分を減らすことで、月々の支払額を抑えられるからです。

例えば、共通の条件のもとで、パターンを2つに分けて考えます。共通の条件とパターンは以下のとおりです。

条件

● 借入額:2000万円
● 返済期間:35年
● 返済方法:元利均等
● 金利:1.0%

 

パターン

● パターン1:頭金を100万円入れる
● パターン2:頭金を500万円入れる

以上の条件とパターンでシミュレーションした結果をまとめると、以下の表のとおりになります。

パターン1 パターン2
返済総額 2252万6399円 1778万3999円
月々の返済額 5万3634円 4万2343円

頭金を多く入れると、その分だけ月々の返済額を大きく抑えられます。生活資金を十分に確保したうえで、頭金をどれだけ入れるか検討すると良いでしょう。

返済期間を長く設定する

不動産投資ローンを組むときに、返済期間を長く設定しておくのも良いでしょう。月々の返済額が減り、資金繰りが楽になるからです。

また、ローンを組み返済が始まると、途中で返済期間を短くできますが、長くすることはできません。そのため、返済期間を長く設定しておき、自己資金に余裕が出てきたときに、繰り上げ返済などで返済期間を短くする選択肢を持っておくのも良いでしょう。

しかし、返済期間が長くなると支払う利息の分が多くなるため、返済総額が増えることには注意が必要です。

例えば、以下の条件で返済期間を25年と35年の場合を考えます。

条件

● 借入額:2000万円
● 返済方法:元利均等
● 金利:1.0%

以上の条件で返済したときの結果をまとめると、以下の表のとおりになります。

25年 35年
返済総額 2261万2189円 2371万1746円
月々の返済額 7万5374円 5万6457円

返済期間が10年長くなると、月々の返済額は2万円近く減りますが、総支払額は100万ほど増えることになります。資金繰りが楽になる反面、支払総額が増える点を理解して、返済期間を検討することが重要です。

以下の記事では、不動産投資の中でも「マンション投資」に焦点を当て、ローン返済のポイントについて解説しています。
>マンション投資のローン返済で失敗しないためのポイント

これから金利はどのように変動する?

不動産投資ローンの金利がいつから上昇するのかは、誰も正しく当てることはできません。しかし、日本銀行の植田総裁の発言から、2024年の春季労使交渉が行われる時期あたりではないかと考えられています。

前述したとおり、今のマイナス金利を解除するには、賃金の上昇が必要ですが、その賃金についての交渉が2024年の春に行われるからです。そして、それにともない不動産投資ローンの金利も上昇していくと考えられます。

取りあえず今後については、来年の春季労使交渉は一つの重要なポイントでありま

すし、その前後、ここまで上がってきた賃金が物価にどれくらい跳ねているかとい

うことを丹念に確認するという作業も、引き続き必要になるというふうに考えてい

ます。

(引用:日本銀行「総裁定例記者会見」/https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk231101a.pdf

 

今は不動産投資をすべきなのか

不動産投資は長期的な視野を持つ必要があるため、一時的な金利上昇により不動産を売却して投資をやめるべきではありません。金利は上昇することもあれば、下がることも考えられます。

また、インフレが起こってもお金の価値は下がりますが、現物資産である不動産の価値はなかなか下がることがありません。一方で、デフレが起こっても、家賃収入は物価変動の影響を受けにくいため、安定した収入を継続して得られます。

よって、不動産を所有しておくことは、同じ価格の現金を持っておくよりも、資産価値が下がりにくいといったメリットもあります。

もちろん、自己資金に余裕がない場合は、わずかな金利上昇にも耐えられないため、そもそも不動産投資を安易に始めるべきではありません。金利の変動に対して冷静な判断をするためにも、ある程度の自己資金が必要です。

 

大きな金利上昇がない限りは様子を見る

現時点で不動産投資をしている方は、低金利の状況が続いていることもあり、しばらくは様子を見ましょう。また、これから不動産投資を始める方は、不動産投資ローンのシミュレーションをしてしっかり検討すれば、十分な資産形成ができるでしょう。

「不動産投資を始めてみたいけど金利上昇リスクに不安がある」という場合は、専門家に相談することもおすすめです。J.P.Returnsの無料個別相談では、不動産投資についてわかりやすく説明させていただきます。もちろん、金利上昇リスク以外の不明な点についても回答させていただきますので、ぜひ一度お問い合わせください。

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この記事を監修した人

室田 雄飛

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室田 雄飛

J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長

J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。

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この記事を書いた人

三澤 智史

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三澤 智史

不動産ライター。大手ゼネコン在籍中は、一級建築士としてマンションや事務所ビルなど数多くの建築施工に携わり、海外建築の施工も経験あり。現在は不動産投資で都内に3つの物件を所有。
これらの経験を活かし、大手メディアで不動産ジャンルに特化して記事を執筆している。

資格

一級建築士、一級建築施工管理技士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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