会社で副業が禁止されている場合は、家賃収入に興味があっても副業にならないか不安になるでしょう。小規模なら副業として認められる可能性もあります。副業禁止の会社でも家賃収入が認められやすい理由や、会社員が不動産オーナーになるポイントを解説します。
会社員は副業がしづらい
近年は副業がブーム的に世間に広がりつつある一方で、多くの企業が依然として副業を制限しています。まずは、企業が副業を認めない理由や国としての方針を理解しましょう。
副業が制限される理由
働き方や価値観の多様化により、従業員に副業を認める企業が増えています。一方、いまだに副業を禁止している企業が多いのも実情です。
過去の裁判例では、副業が以下のいずれかに当てはまる場合、企業が従業員の副業を制限することは許されるとしています。
・労務提供上の支障がある
・情報漏えいの恐れがある
・同業他社に自社の利益を損なわれる恐れがある
・自社の名誉・信用・信頼関係を損なう行為がある
『労務提供上の支障』とは、副業により本業がおろそかになってしまうことを意味します。長時間労働につながる副業を行うケースでは、本業へのマイナスの影響が出やすくなることが懸念されるので、副業の制限が認められる可能性が高まります。
厚生労働省の副業・兼業の普及促進とは
副業を認めない企業が多い一方で、厚生労働省は副業・兼業の普及を促進しています。働き方改革の一環として、『モデル就業規則』の『許可なく他の会社等の業務に従事しないこと』という規定が2018年に削除されました。
厚生労働省の『副業・兼業の促進に関するガイドライン』では、従業員の副業が業務に支障をきたす事情がないなら、副業を認めるべきであるとの見解を示しています。
法律にも副業を禁止するものはありません。憲法第22条の『職業選択の自由』や、労働基準法第34条の『休憩時間の自由』の解釈から、副業は無条件に制限されるべきではないことが読み取れます。
家賃収入は副業に含まれる?
不動産投資を検討している人の中には、家賃収入が副業として会社に認められるかどうか不安な人もいるでしょう。家賃収入は副業に含まれるのか否かについて解説します。
家賃収入とは
賃貸物件を購入して第三者に貸し出し、入居者から得る賃料が『家賃収入』です。賃貸経営により賃料を受け取ること自体を家賃収入と呼ぶ場合もあります。
家賃収入に含まれるのは賃料だけではありません。礼金・更新料・管理費のほか、敷地内に設置した自動販売機や駐車場からの収入も家賃収入に含まれます。
実際にオーナーの利益として残るのは、家賃収入から必要経費を引いた分です。ローンを組んで物件を購入し、賃料をローンの返済に充てている場合は、ローンを完済するまで利益がほとんど残らない場合もあるでしょう。
副業禁止でも家賃収入は認められやすい
会社が副業を認めていないケースでも、家賃収入なら許される可能性があります。親から相続した物件を賃貸に出している場合、会社が物件を手放すよう指示すれば、会社は財産権の侵害で訴えられかねません。
転勤により一時的に自宅を貸し出すケースもあるでしょう。持ち家を空き家のまま放置するとダメージを受けやすいことや、売却を考えてもタイミングよく高値で売れるとは限らないことが、転勤で自宅を賃貸に出す主な理由です。
これらのようなやむを得ない事情で賃貸物件を所有している場合があるため、副業を禁止している会社も家賃収入が副業として認められるケースは多々あります。
「労務提供上の支障」が出る可能性が低い
本業に支障をきたしにくい点も、家賃収入が副業とみなされにくい理由の一つです。賃貸経営は多くの手間や時間を必要とする仕事ではないため、本業に支障が出る可能性は低いといえます。
「労務提供上の支障」が出る仕事の例としては、本業が終わった後に夜間から朝方まで働くような仕事が挙げられるでしょう。家賃収入なら、管理業務を工夫すれば、ほとんど手間をかけずに行うことも可能です。
ただし、企業によっては、明確に家賃収入を禁止している場合もあります。就業規則に家賃収入を認めない旨が記載されていれば、基本的には従わなければなりません。
「事業レベル」で投資をする場合は注意
部屋や建物を複数所有している場合は、家賃収入を認めてもらえないケースがある点に注意しましょう。賃貸経営が一定規模を超えると、副業ではなく事業とみなされかねないためです。
家賃収入の規模が事業レベルであるかどうかは、『5棟10室』を基準に判断します。戸建てなら5棟以上、アパートやマンションなら10室以上を貸し付けている場合は、経営が事業レベルであるとみなされやすくなるでしょう。
基本的に家賃収入が認められている国家公務員も、5棟10室以上の不動産で賃貸経営を行う場合は、許可を得るための申請書を提出しなければなりません。
家賃収入の税金はどうなる?
家賃収入で一定額以上の所得が発生した場合は、所得に対して税金がかかります。サラリーマンが家賃収入に関して支払うべき税金について理解しておきましょう。
自分で確定申告をして納付する義務がある
給料をもらっているサラリーマンは、給与所得に対して所得税や住民税が課されます。しかし、税金は会社が給料から天引きして納めてくれるため、自分で納付する必要がありません。
一方、家賃収入で年間20万円超の所得を得ている場合は、サラリーマンでも自分で納税する義務があります。前年度分の税金を確定申告して納めなければなりません。
課税対象となるのは、収入ではなく所得であることに注意しましょう。年間20万円超の賃料を得ている場合も、経費を差し引いて所得が20万円以下になるなら納税は不要です。
不動産投資での確定申告を分かりやすく解説|必要書類や提出の流れも
家賃収入は「不動産所得」として扱う
家賃収入により発生した所得は、基本的に『不動産所得』として扱います。給与所得と同様、課される税金は所得税と住民税です。
不動産所得は累進税率が適用されており、所得額が大きいほど税率も上がります。サラリーマンが確定申告を行う場合は、給与所得と不動産所得を合算した金額により税額を算出しなければなりません。
不動産所得が赤字となった場合も、確定申告で給与所得と相殺すれば、合計所得が減るため所得税や住民税を減らせます。不動産投資が節税になるといわれる理由の一つです。
サラリーマンの不動産投資のポイント
サラリーマンが効率よく賃貸経営を進めていくためのポイントを解説します。事業を拡大したくなった場合の考え方も押さえておきましょう。
賃貸管理会社を利用する
忙しいサラリーマンが不動産投資に取り組むなら、賃貸管理会社の利用が不可欠です。物件の管理業務を賃貸管理会社に任せれば、ほとんどの管理業務から解放されます。
賃貸管理会社を利用しない場合、入居者対応や建物管理を自分で行わなければなりません。時間や手間が必要な上、管理業務のノウハウも学ぶ必要があるでしょう。
一方、賃貸管理会社を利用すれば、入居者募集・入居者対応・点検・修繕などを全て行ってくれます。賃貸管理会社には管理業務のノウハウが蓄積されているため、業務を的確にこなせる点もポイントです。
重要な場面に時間を割こう
サラリーマンが不動産投資を効率的に進めるためには、重要な場面に時間を割くのがポイントです。特に物件探しの際は、不動産会社の言葉のままに動くのでなく、自分でも情報を入手して物件を吟味しましょう。
不動産会社によっては、魅力的な言葉を並べて実際は利益が出せない物件をすすめてくるケースもあります。本当に利益が出る物件なのか、建物の状態や立地などさまざまな角度から確認することが重要です。
物件の選択肢が絞れたら、時間を作って実際に足を運んでみましょう。建物の劣化具合や周辺環境など、自分の目で見なければ分からないことも数多くあります。
勤務先が許可すれば資産管理会社設立も視野
不動産投資が軌道に乗ってきた場合は、物件を増やして事業を拡大したいと考えるケースもあるでしょう。職場が許すなら、将来的な資産管理会社の設立を視野に入れるのも一つの方法です。
法人化して賃貸経営を行えば、税金面で大きなメリットを受けられる可能性があります。節税のポイントとなるのは、所得税と法人税の税率の違いです。
個人の所得税に関しては、所得額により税率が最大45%にまで上がります。一方、法人税の税率は、所得が800万円を超えても23.2%までしか上がりません。
所得税の税率は、900万円を超えると23%から33%になります。家賃収入の所得が900万円近くになってきたときが、法人化を検討するベストなタイミングです。
会社を家賃収入に関わらせたくないときは?
不動産経営をしていることを会社に知られたくないと考えるサラリーマンも多いでしょう。会社を家賃収入に関わらせないようにするためのポイントを解説します。
住民税の納付方法は「自分で納付」を選ぶ
不動産所得にかかる住民税の納付方法は、『特別徴収』と『普通徴収』の2種類から選択可能です。特別徴収を選んだ場合、住民税は給与から天引きされるため、家賃収入を会社に知られる可能性があります。
一方、普通徴収なら自分で納付書を使って住民税を納めることが可能です。給与からは天引きされず、会社に何らかの通知が行くこともありません。
普通徴収を希望する場合は、確定申告書Bの第二表『住民税に関する事項』欄にある『自分で納付』にチェックを入れましょう。『給与から差引き』を選ぶと特別徴収になってしまうので注意が必要です。
不必要に社内で話さないようにする
会社を家賃収入に関わらせたくない場合は、社内で不必要に家賃収入のことを話さないようにしましょう。信頼できる同僚に話すときも、近くで誰が聞いているか分かりません。
『ここだけの話』は、得てして『ここだけの話』で広まっていくものです。経営が軌道に乗ってきたら誰かに自慢したくなるものですが、少なくとも社内では話さないほうがよいでしょう。
ただし、職場以外の場に投資家仲間がいるなら、情報交換を兼ねて積極的に交流するのがおすすめです。不動産会社やインターネットからは得られない、貴重な情報を入手できる可能性もあります。
まとめ
副業を禁止している会社でも、家賃収入なら認められやすくなります。やむを得ないケースがあることや、本業に支障をきたしにくいことが主な理由です。
サラリーマンが不動産投資に取り組む場合は、賃貸管理会社を積極的に利用しましょう。管理業務を任せられるため、手間や時間をかけずに経営を進められます。
経営が軌道に乗ってきたら、節税対策として法人化を検討するのも一つの方法です。家賃収入に興味があるなら、職場の就業規則をチェックした上で、物件探しから始めてみましょう。