アパート経営は公務員でもできる!その条件や注意点を解説

公開日:2024.01.05

最終更新日:2024.01.10

監修者:室田雄飛

執筆者:三澤 智史

2018年から厚生労働省は、副業・兼業の促進に関するガイドラインのなかで、副業・兼業に関する規定を新設しました。これをきっかけに副業を解禁する企業が増えてきました。
そのようななかで、公務員の方は「自分も副業としてアパート経営をしてみたい」「公務員の副業は厳しく制限されているので、アパート経営ができるかわからない」など、疑問を抱いているでしょう。
しかし、定められた条件を守れば、公務員でもアパート経営ができます。本記事では、公務員がアパート経営を行うための条件や注意点などを解説していきますので、これからアパート経営をしたいと考えている公務員の方はぜひ参考にしてください。

公務員がアパート経営をできないといわれている理由

民間企業に勤めている会社員と比べて、公務員は副業することを厳しく制限されています。これには、主に国家公務員法や地方公務員法などの法律で、公務員の副業について定められていることが、理由としてあげられます。

ここでは、公務員がアパート経営をできないといわれている理由について解説します。

国家公務員法に規定があるため

国家公務員には国家公務員法が定められていて、その法律のなかに副業に関する規定があります。具体的には、以下に示す国家公務員法 第103条と第104条が当てはまります。

第百三条 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。

(引用:e-gov 法令検索「国家公務員法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000120

この第103条は私企業、いわゆるほとんどの民間企業において役員にたずさわってはならず、経営もできないということです。

第百四条 職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。

(引用:e-gov 法令検索「国家公務員法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000120

この第104条は、報酬を得る場合には許可を得る必要があり、非常に難しいと考えられています。

地方公務員法に規定があるため

地方公務員も、国家公務員と同様に法律により定められていて、地方公務員法のなかに副業に関する規定があります。具体的には、以下に示す地方公務員法 第38条が当てはまります。

第三十八条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。

(引用:e-gov 法令検索「地方公務員法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000261

この第38条は、ほとんどの民間企業において役員にたずさわったり経営したりしてはならず、報酬を得ることもできないということです。

副業禁止の3原則があるため

また、副業を禁止する旨が記載されている3原則と呼ばれるものがあります。具体的には、以下に示す国家公務員法 第99条から第101条です。

第九十九条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

(引用:e-gov 法令検索「国家公務員法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000120

第百条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。

(引用:e-gov 法令検索「国家公務員法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000120

第百一条 職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない。

(引用:e-gov 法令検索「国家公務員法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000120

これらの法律は、公務員の社会的な信用を失うこと、機密情報の漏洩、本業をおろそかにすることに対して、厳しく制限しています。

公務員がアパート経営を始めるための条件

公務員の副業は、国家公務員法や地方公務員法などにより厳しく制限されていますが、条件を満たせばアパート経営ができます。

民間企業に勤めている会社員が副業として行っているアパート経営の規模を考えると、その条件はそこまで厳しいものではないといえるでしょう。しかし、条件を超えると法違反になるため、必ず条件の確認が必要です。

ここでは、公務員がアパート経営を始めるための条件について解説します。

アパート経営は4棟9室以下の小さい規模で行う

アパート経営では、一定の規模を超えないように注意しましょう。規模の大きさは人事院規則により以下のように定められていて、4棟9室の規模を超えると営利目的でアパート経営しているとみなされるからです。

独立家屋の賃貸については、独立家屋の数が5棟以上であること。

独立家屋以外の建物の賃貸については、貸与することができる独立的に区画された一の部分の数が10室以上であること。

(引用:人事院「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」/https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/14_fukumu/1403000_S31shokushoku599.html

前述した国家公務員法 第103条のように、営利目的の経営に該当しないことが大事です。

アパート経営による家賃収入は年間500万円未満に抑える

アパート経営による家賃収入は、年間500万円未満に抑えることが必要です。家賃収入の条件も人事院規則により、以下のように定められているからです。

不動産又は駐車場の賃貸に係る賃貸料収入の額(これらを併せて行つている場合には、これらの賃貸に係る賃貸料収入の額の合計額)が年額500万円以上である場合

(引用:人事院「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」/https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/14_fukumu/1403000_S31shokushoku599.html

例えば、家賃6万円の部屋を6室の規模で1年間経営すると、6万円×6室×12か月=432万円となり、500万円の範囲に抑えられるため問題ありません。

アパートの管理業務を自分で行わない

アパートの管理業務は自分で行わないようにしましょう。人事院規則により、以下のように定められているからです。

入居者の募集、賃貸料の集金、不動産の維持管理等の不動産又は駐車場の賃貸に係る管理業務を事業者に委ねること等により職員の職務の遂行に支障が生じないことが明らかであること。

(引用:人事院「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」/https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/14_fukumu/1403000_S31shokushoku599.html

アパート経営は管理会社と契約して、管理を依頼することにより、本業である公務員の仕事に支障をきたさないようにすることが大事です。

公務員がアパート経営を始めるためにそろえるべき書類

公務員がアパート経営を始めるために、そろえるべき書類は以下のとおりです。

  • 自営兼業承認申請書(公務員が副業することを認めてもらうために必要)
  • 不動産管理の委託契約書(アパート経営の管理を委託するために必要)
  • 不動産登記簿謄本(アパートの構造や所有者などが記載されている書類)
  • 物件概要書(概要説明や写真・図面などが含まれている書類)
  • 貸借条件一覧表(家賃や賃借人の属性など最新の賃貸条件が記載されている書類)

上記の書類のなかには、民間企業に勤めている人にとって必要な書類も含まれています。しかし、自営兼業承認申請書は、公務員が副業するのを承認してもらうために、特に必要な書類です。

また、不動産管理の委託契約書も公務員にとって大事な書類です。前述した人事院規則に定められているように、管理業務を自分で行ってはならず、管理会社に依頼しなければいけないからです。

公務員は条件から外れてもアパート経営をできることがある

公務員は前述したとおり、管理する部屋の規模や家賃収入の大きさに制限があり、その制限を超えたり本業に支障をきたしたりすることがあってはいけません。しかし、条件から外れてもアパート経営をできることがあります。

ここでは、公務員が条件から外れてもアパート経営をできる場合について解説します。

アパート経営をできるケースとは?

生前贈与や相続で公務員がアパートを引き継いだケースでは、アパート経営できることがあります。生前贈与とは親などアパートを所有している人が生きている間に子どもへ引き継ぐことで、相続は親が亡くなったときに引き継ぐことです。

また、転勤などで自分が今住んでいるアパートに住めなくなったケースでも、アパート経営ができることがあります。

これらのケースは、親子関係などやむを得ない事情や、転勤など予期せぬ出来事が多いため、アパート経営の許可がおりやすい傾向にあります。

経営する際の申請方法

申請に必要な書類は前述した書類と変わりません。しかし、申請の許可がおりるまでには時間がかかることがあるため、相続や転勤などがわかった時点ですぐに申請しましょう。

職場や家庭の環境など、自分が置かれている状況をよく確認して、相続や転勤のケースに該当しそうな場合は早めに準備が必要です。

公務員がアパート経営を始めるメリット4つ

公務員は社会的に信頼度が高い職業のため、その社会的信用をアパート経営にも活かせます。民間企業に勤めている会社員よりも、月々の収支のバランスが良く大きな利益を出せる可能性もあります。

ここでは、公務員がアパート経営を始めるメリットについて解説します。

アパート経営は公務員の本業に影響しない

アパート経営は公務員の本業に影響することなくできます。公務員は自分で管理業務をして本業をおろそかにしてはいけないため、管理会社に日頃の管理業務を依頼することになるからです。

もし、自分で管理業務をする場合は、衛生管理のための清掃や設備機器の保守点検などが常に必要です。ときには、騒音や設備機器の不具合など、入居者からのクレームに対応しなければいけません。

しかし、管理業務を依頼することで、実際に公務員がアパート経営でやるべきことは、管理会社から定期的に管理状況の報告を受け、その内容を確認する程度で済みます。

少ない資金で始められる

アパート経営を始めるときは基本的に金融機関からローンの審査を受けますが、そのローンの審査に通りやすいため少ない資金で始められます。公務員は安定した職業なので、金融機関からの信用度が高いからです。

また、金利が低いローンほど審査に通りにくい傾向にありますが、信用度が高い公務員であれば低金利のローンを組めるでしょう。そのため、月々の返済額を抑えながらアパート経営ができます。

継続的に家賃収入が得られる

アパート経営をすれば、入居者から月々支払われる家賃を受取れるため、実際に働いていなくてもいわゆる不労所得というものが得られます。

しかし、基本的にはローンを返済しながらアパート経営していくことになるため、ローンの返済額の分だけ家賃収入は相殺されて少なくなります。ローンの返済額が家賃収入を大きく上回る場合は、月々の手出しが多くなり損失が出てしまうため注意が必要です。

相続税対策に有効になる

子どもへ財産を引き継ぐ場合、現金よりもアパートといった形で引き継ぐ方が相続税を低く抑えられます。アパートで相続したとき、相続税の計算に用いられる価格(相続税評価額)は実際の価格(実勢価格)より2~3割低いからです。

例えば、現金3000万円を子どもへ引き継ぐ場合と、実勢価格3000万円のアパートを子どもへ引き継ぐ場合を考えます。現金の相続税評価額は3000万円ですが、アパートの相続税評価額は2割減と考えると2400万円です。

同じ価格であっても、財産をアパートとして所有しておくことで、相続税評価額を600万円抑えられます。

支払うべき相続税は、その他全ての相続財産を合算して基礎控除金額で差し引いた金額に税率をかけることで計算しますが、税率は10~55%に及びます。少なくとも600万円×10%=60万円の差が生じるため、大きな金額です。

公務員がアパート経営にあたり準備すること3つ

アパート経営では大きなお金が動くため、事前に準備をしなければ大きな損失につながります。管理の手間がかからない分、最初の準備はしっかり行うことが必要です。特に、公務員は管理業務を必ず管理会社に依頼するため、管理会社選びも重要になります。

ここでは、公務員がアパート経営にあたり準備することについて解説します。

物件のリサーチ

経営するアパートがどのような場所にあるか、リサーチすることが大事です。入居者がなかなか見つからず家賃収入が得られないことや、自然災害が多い場所では建物が損傷するリスクなどがあるからです。

立地条件においては、駅近であったり学校や病院などの公共施設が近くにあると、利便性が高いアパートといえるため、入居者を見つけやすくなります。

できれば、そのアパートまで足を運び、実際に自分の目で周辺環境を確認しておくといいでしょう。現地を見るとアパートの雰囲気や入居者の気持ちがわかり、インターネットで調べるよりもわかる情報がたくさんあります。

災害情報においては、アパートがある場所をハザードマップで調べることで、安全な場所に位置しているかどうかわかります。地図上で危険なエリアがわかりやすく色付けして表示されるため、調べるのはそれほど難しくないでしょう。

アパート経営の収支のシミュレーション

月々のローンの返済額による支出と家賃収入による収入のバランスを考えて、収支のシミュレーションをしましょう。ローンの返済額が高すぎる場合は、金利を低くするために他の金融機関へ考え直す必要があります。

また、ローンの返済額が高く収支がマイナスになるとしても、出口戦略としてアパートの売却したときを考えることも重要です。それまでの月々のマイナス分の合計より高い価格で売却できれば、最終的にプラスとなり大きな利益を出せるからです。

もしくは、アパートを売却せずローンを完済するまで経営した場合、それ以降の経営では月々の家賃収入がローン返済額により相殺されることがありません。家賃収入がそのまま月々の収入になります。

シミュレーションを考えるときは、月々の収支だけではなく、以下のグラフのように売却したときやローンを完済した後のことも視野に入れるといいでしょう。

管理会社の選定

信頼できる管理会社を選び、アパートをしっかり管理してもらうようにしましょう。怠慢な管理会社に依頼するとずさんな管理により、入居者からの信頼が下がったり、新しい入居者がなかなか決まらず、家賃収入を継続して得られなくなったりする恐れがあるからです。

管理会社は必ず大手が良いとは限らず、長年にわたり地域に根付いているその地元の管理会社を探すのもいいでしょう。その地域の情報に詳しく、頼りになることが多々あります。

また、長く経営している会社ほど管理をしっかりしている可能性が高いため、経営年数をもとに判断するのもいいでしょう。宅建業免許番号を見ると、その会社が何年経営しているかがわかります。

宅建業免許番号は「国土交通大臣免許(10)~号」という記載になっていて、カッコ内の数字は免許を更新した回数です。5年に1回の免許更新があるため、例えば6年目以降の場合は(2)になります。

できれば20年目以降の(5)以上が望ましいという意見もありますが、管理会社選びの一つの参考例として考えるといいでしょう。

公務員がアパート経営を始めるときの注意点

アパート経営では、始める前や経営の際に毎年、役所に手続きが必要です。手続きを怠ると大きな損失や、罰則として社会的な信頼を失うことになります。

ここでは、公務員がアパート経営を始めるときの注意点について解説します。

アパート経営を始める前に役所に申請する

アパート経営を始めるための必要書類は、事前に申請するのがいいでしょう。もし許可がおりなかったとき、既にアパート経営を始めていた場合は、減給など懲戒処分や懲戒免職になる恐れがあるからです。

さらに、家賃収入を得られない状態で、ローンの返済だけが続くことになります。大きな損失にもつながるため注意が必要です。

アパート経営を始めた翌年から確定申告する

アパート経営を始めると、翌年の2月16日~3月15日までに確定申告をしなければいけません。アパート経営は前述したとおり手間をかけずにできますが、確定申告だけは唯一手間がかかる作業といえます。

確定申告をしないと、本来納めるべき税金に加えて無申告加算税を支払うことになるため注意が必要です。

公務員は条件をよく確認してアパート経営を始めよう

公務員がアパート経営を始める際の条件や注意点について解説しました。

公務員は社会的な信頼度が高い分、副業への制限も厳しく定められています。そのため、しっかりと条件を理解して慎重に取り組まなければいけません。

しかし、よく調べてから始めれば、民間企業に勤めている会社員よりも銀行からの融資など好条件で受けることができ、その分大きな利益も期待できます。

J.P.RETURNSでは、アパート経営についてマンツーマンで話を聞ける個別相談をご用意しています。また、管理業務も行っているため、管理の依頼も承っています。ぜひ一度J.P.RETURNSまでお問い合わせください。

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室田 雄飛

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室田 雄飛

J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長

J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。

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この記事を書いた人

三澤 智史

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三澤 智史

不動産ライター。大手ゼネコン在籍中は、一級建築士としてマンションや事務所ビルなど数多くの建築施工に携わり、海外建築の施工も経験あり。現在は不動産投資で都内に3つの物件を所有。
これらの経験を活かし、大手メディアで不動産ジャンルに特化して記事を執筆している。

資格

一級建築士、一級建築施工管理技士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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