アパート経営は何年で黒字になる?黒字化のためのコツも紹介

公開日:2023.12.19

最終更新日:2024.01.10

監修者:室田雄飛

執筆者:杉山 明熙

不動産投資を検討している人の中には「アパート経営は何年で黒字になるのか?」という疑問を持つ人も多いと思います。アパート経営で利益を得るのは簡単ではないため、黒字化に向けた計画をしっかり立てなければいけません。
今回は、アパート経営において黒字化する年数や、押さえておきたい「キャッシュフロー」の概要などを解説します。アパート経営を黒字化するためのコツも紹介しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

アパート経営が黒字化するための年数は?

アパート経営が黒字化するために必要な年数は、アパートの取得費、家賃設定、諸経費率や修繕費などによって変動しますが、目安として10年といわれています。アパート経営は初期投資が高額なため、資金回収には長期的な視点が必要になります。

さらに、購入時に初期費用などで自己資金を拠出する必要があることから、アパート経営の最初の数年は赤字の覚悟が必要です。したがって、アパート経営は数年で安定した黒字を出そうとする人には不向きであり、長期的に計画を立てて実行できる人が向いているといえるでしょう。

アパート経営が黒字化するまでのシミュレーション

ここからは、実際にアパート経営で黒字化するまでのシミュレーションを行ってみましょう。ここでの黒字化の基準は、自己資金額(下記の表での2,000万円)を回収できることとします。

以下の表にしたがってアパート経営のシミュレーションを行います。

戸数 10戸
物件価格 6,000万円
初期費用 300万円
年間家賃収入 600万円
表面利回り 10%
自己資金(購入時) 2,000万円
融資金額 4,300万円
融資金利 2.0%
融資期間 25年
諸経費率 20%
空室率 10%
年間キャッシュフロー 200万円

①実質年間家賃収入

540万円:650万円(年間家賃収入)✕90%(空室率)

②年間諸経費

120万円:650万円(年間家賃収入)✕20%(諸経費率)

③年間ローン返済額

220万円:18.3万円(月々返済)✕12ヶ月

①−②−③=200万円

1〜3年目

アパートを取得した当初は、アパートの取得費や仲介手数料等の諸経費がかかるため、ほとんどのケースで赤字になります。アパート取得時の諸経費には以下のようなものがあげられます。

●融資の各種手数料
●印紙代(売買契約書、金銭消費貸借契約書)
●火災、地震保険料
●仲介手数料
●登記費用
●司法書士への報酬
●各種税金(固定資産税、不動産取得税など)

なお、不動産取得税は購入から半年後以降に納付書が届くため、納税の準備を忘れないようにしましょう。また、この時期は帳簿上赤字になりやすいため、アパート経営以外の収入がある場合は、このことを逆に利用して損益通算を行い節税に励むことをおすすめします。

アパート経営3年目が終了した時点での回収額は600万円のため、3割が回収できた計算となります。

4〜6年目

4年目を超えると購入時にかかった大きな出費がなくなるため、年単位では純利益が出ている状態になります。しかし、アパート取得当初の自己資金分はまだ回収できておらず、引き続き気を緩めずにアパート経営を続けていかなくてはいけません。

今回のシミュレーションでは年間200万円のキャッシュフローが出ており、6年目が終了した時点で1200万円を回収できたことになります。

7〜10年目

この時期になると、当初の自己資金分の回収が目の前です。しかし、築年数や設備の状況によってはまとまった修繕コストが発生する時期に差し掛かってきます。経年劣化や設備の交換、外壁や貯水タンクのメンテナンスなどはオーナー負担となるため、回収目前で予想外の出費に悩まされる可能性が高くなり、キャッシュフローが悪化する可能性も頭に入れておきましょう。

10年目が終了した時点で回収額が2000万円となり、自己資金分が回収できたことになります。ただし、大規模修繕や空室率の悪化などにともない、思わぬ出費の可能性があるため、シミュレーション通りに進まないこともあります。アパート経営は、あらゆるリスクに備えて準備することが重要です。

アパート経営を黒字化する方法

アパート経営を黒字化する方法には、大きく分けて以下の2つの方法があります。

●インカムゲインで安定した収益を目指す
●キャピタルゲインで大きな利益を目指す

それぞれを詳しく解説します。

インカムゲインで安定した収益を目指す

インカムゲインとは、アパート経営における家賃収入のことを指します。入居者がいる限り長期にわたり確実に収益を上げられる方法です。アパート経営での収入といえば、この方法を思いつく人が多いと思います。

インカムゲインのメリットとしては、安定した収入が手に入ることです。一度きりの収益ではなく、入居者がいる限り安定的に収入を得られます。また、インカムゲインはキャピタルゲインと異なり、短期間で利益が発生することもメリットです。入居者が決まれば、入居日からの収入が確定するため収支計画が立てやすいのです。

このように、インカムゲインはコツコツと積み上げていく収入のため、一度で大きな利益を生み出すことはできません。一度の取引で大きな利益を目指す人は、キャピタルゲインの収入を重視しましょう。

キャピタルゲインで大きな利益を目指す

キャピタルゲインはアパートを取得時より高額で売却し、購入と売却の差益で利益を得る方法です。アパートの周辺環境が良くなることで価格が上がる可能性があり、そのタイミングでアパートを売却し利益を得るのです。

キャピタルゲインのメリットは、なんといっても一度で大きな収益を得られる点です。周辺環境の変化や金融情勢、不動産市況が活発化することでアパートの価値が上がり、一度の取引で高額な利益を生み出すことが可能です。

その反面、キャピタルゲインは利益の確定までに時間がかかるというデメリットがあります。数千万円〜数億円の取引には長期間を要することが多いため、買主が見つからない限り利益を確定できません。また、多くのケースでは購入時より売却時のほうが価格が下がるため、利益が出にくいことも頭に入れておかなければいけません。

このように、キャピタルゲインで大きな利益を目指すことはハイリスク・ハイリターンの側面が多く、難易度が高い方法だといえるでしょう。

アパート経営で鍵となるキャッシュフローとは

アパート経営では、キャッシュフローを正しく理解することがもっとも重要です。キャッシュフローを理解せずに目の前のお金を追いかけるだけでは、アパート経営に失敗してしまいます。ここでは、アパート経営において非常に重要なキャッシュフローについて解説します。

キャッシュフローとは

アパート経営においてのキャッシュフローとは、家賃収入からアパート経営に必要なすべての経費を差し引いた後の「手元に残る現金の流れ」のことです。アパート経営では、家賃収入から得た収益の中からすべての経費を支払わなければいけません。

そのため、アパートの取得費や維持管理でどのような費用がかかっているかをきちんと把握し、キャッシュフローをプラスにすることが重要となります。

所得とキャッシュフローの違い

キャッシュフローと近い言葉で「所得」があります。アパート経営における所得とは、確定申告で所得税や住民税を計算するための、帳簿上の収支のことをいいます。そのため、所得で計算すると黒字でも、キャッシュフローが赤字になっていることもあります。

また、所得とキャッシュフローの違いを理解するためには、経費の種類についても知っておかなければいけません。アパート経営で必要な経費には以下のものがあります。

●管理委託費
●建物と設備の減価償却費
●修繕費
●固定資産税、都市計画税
●ローン利息
●火災保険、地震保険料
●共用部分や空室の電気水道料金
●仲介会社に支払う広告宣伝費
●その他通信費や消耗品、交通費など

上記で気をつけるべきポイントは、「お金が実際に出る支出」と「お金の出入りがない経費」に分かれることです。ほとんどが「お金が実際に出る支出」ですが、建物と設備の減価償却費は「お金の出入りがない経費」にあたります。

さらに、ローンの元本分や所得税、住民税は実際にお金が出ていきますが、経費にならない支出となります。このように、実際にどれだけの現金が手元に残るのかを知りたい場合は、所得だけでなくキャッシュフローを正確に把握することが重要です。

アパート経営を黒字化させるコツ8点

アパート経営は10年で黒字化を目指せるものの、何の対策も講じずにただ運営しているだけでは黒字化は難しいものです。ここからは、アパート経営を黒字化させるコツを8点紹介します。

収支シミュレーションを実施する

収支シミュレーションは、アパート取得時に物件を比較する際によく用いられますが、キャッシュフローを正確に把握する目的としても活用できます。

収支シミュレーションで重要な要素は以下のとおりです。

●自己資金額
●融資金利
●融資期間
●空室率
●諸経費率
●修繕費
●家賃下落率

これらの要素をしっかりと予測できれば、さまざまなパターンのキャッシュフローを計算することができます。また、正確な収支シミュレーションは、アパート経営が黒字化するまでの期間をコントロールすることにもつながるため、アパートの売却やその後の経営計画に役立ちます。

したがって、アパート経営を始めた後も収支シミュレーションを定期的に行い、キャッシュフローを正確に理解するようにしましょう。

借入金利が低い金融機関を選定する

アパート経営の際は、できるだけ金利が低い金融機関を選ぶことが重要です。たとえば、最初に解説したシミュレーションでは融資金額4,300万円で融資金利を2.0%で設定しましたが、金利が2.5%の場合は以下のようになります。

【借入金額4,300万円、借入期間25年の場合】

融資金利 月々支払 総返済額
2.0% 18.2万円 5467.7万円
2.5% 19.2万円 5787.1万円

このように、借入金利が0.5%違うだけで毎月の返済額が1万円違い、25年間の総返済額には320万円の差が出ます。総返済額の差はそのままキャッシュフローの差となり、得られる収支が大きく変わってくるのです。

金利が低い金融機関を選ぶためには、複数の金融機関へ相談をしましょう。さらに、不動産会社の提携先金融機関を紹介してもらうことで金利優遇を受けられる可能性があります。また、アパート経営を開始してからも金融機関の情報を常にチェックし、タイミングを見てより低金利の商品に借り換えると、少しでも早い黒字化を実現することができます。

自己資金を多く入れる

アパート経営の黒字化を早めるためには、少しでも多く自己資金を入れることを心がけましょう。自己資金を多く用意すれば融資金額を少なくでき、毎月の返済額を減少させることができます。毎月の返済額が減ることでキャッシュフローが良くなり、早期の黒字化が実現するのです。

アパート経営では、アパートの取得費と諸経費を合わせた初期費用に対して、3〜5割の自己資金を用意できれば安心だといわれています。キャッシュフローを安定させ、不測の事態に対処するためにも、自己資金割合を増やしてアパート経営を始めることをおすすめします。

繰り上げ返済を行う

繰り上げ返済は毎月の返済とは別に、まとまった金額を返済して、借り入れを前倒しにする方法です。繰り上げ返済は融資の元本に対して行われるため、繰り上げ返済をする度に金利が再計算され、総返済額を減らすことができます。

また、繰り上げ返済は一定金額以上で手数料が無料になる金融機関が多いため、できるだけ大きい金額で行うほうがお得です。繰り上げ返済はいつ行ってもいいため、自身で資金計画を立てられる点もメリットといえます。

アパート経営が軌道に乗ってくるとキャッシュフローが良くなり、手元に現金が残りやすいため、積極的に繰り上げ返済を行うことで経営が黒字化しやすくなるでしょう。

ランニングコストを抑えすぎない

アパート経営では多くの経費やコストがかかってきます。少しでもコストを抑えてキャッシュフローを良くしたいと思いがちですが、ランニングコストの過度な削減はアパート経営の黒字化を遠ざけてしまうので気をつけましょう。

たとえば、室内の壁紙を張り替えることで清潔感がアップするにもかかわらず、目先のリフォーム代のために張り替えないと、入居者希望者が減ってしまい結果的にキャッシュフローが悪くなってしまいます。

つまり、古くなったものを取り替えるなど、入居者のためのランニングコストは抑えすぎないことを心がけましょう。適切なタイミングで行う修繕は、快適な住環境を提供しキャッシュフローを良くするのです。

質の良い管理会社を選ぶ

アパート経営において、管理会社がもたらす影響は大きいといえます。よって、質の良い管理会社を選ぶことでアパート経営の黒字化を早められるでしょう。

具体的には、滞納リスクや空室リスクを回避するために、実績が高い管理会社を選ぶことが挙げられます。とくに、アパートに空室が多いと、その分の家賃収入が減りキャッシュフローが悪くなります。

そのため、空室率を下げたいということであれば、賃貸仲介に強い管理会社を選びましょう。賃貸仲介に強い会社は空室を埋めるための営業に優れており、空室リスクを極力下げることができます。

また、アパート経営には入居者トラブルは避けられません。質の良い管理会社であれば、入居者トラブルに迅速に対応し、不要な退去を防ぐことができます。

空室リスクや入居者トラブルは専門性が高いため、オーナー自ら対策を行うよりプロに委託するほうが適切に対処できます。アパート経営では常に管理会社と連絡を取ることになるため、少しでも質の良い管理会社を選ぶようにしましょう。

キャピタルゲインのタイミングを逃さない

アパート経営を黒字化する方法として、家賃収入によるインカムゲインのほかにキャピタルゲインがあると解説しました。このキャピタルゲインのタイミングを逃さず、少しでも高い金額でアパートを売却することも、アパート経営を黒字化させるコツといえます。

アパート経営は永久に続けられるものではありません。経年劣化によって維持することが難しくなったり、需要の移り変わりで空室が目立ったりすることで、アパートを手放さなくてはならないタイミングがきます。そのときに、売却するタイミングを見極められるかどうかが重要です。

アパート経営を始める際に、売却に関する具体的な選択肢を考えておきましょう。たとえば、築古のアパートであれば一定期間で取り壊して土地として売却することや、建て直して新築アパートを経営する選択肢も考えられます。また、賃料が下がる前に高値で売却することで次の投資の資金を確保できる可能性もあるため、アパート経営の岐路で適切な判断を下せるように、事前に出口戦略を描くようにしましょう。

黒字化できる物件を選ぶ

アパート経営を黒字化させるためには、最初にどの物件を選定するのかが重要なポイントです。物件を選ぶコツとしては、立地や建物状況などを総合的に判断することが挙げられます。

たとえば、周辺環境が優れていても建物の状態が悪いと入居者に選んでもらえません。逆に建物の設備や外観が良くても、需要のないエリアに建っているアパートは空室が目立ってしまいます。

周辺環境を判断するポイントとしては以下があげられます。

●交通アクセスが良い
●買い物環境や公園など住環境が良い
●周辺に競合する物件が少ない
●特定の企業や学校に依存していない

このように、アパートの立地を判断するうえで重要なポイントは、長期的に賃貸需要が見込めるエリアかどうかです。アパート経営は10年以上の長期にわたるプロジェクトのため、さまざまな角度からエリアを見極めることが重要です。

さらに、アパートを取得するタイミングで外壁や設備が修繕時期を迎えているケースがあります。そのため、取得前に修繕履歴や劣化状況のチェックも欠かさずに行いましょう。

高額な費用がかかる外壁の修繕ですが、国土交通省の調査結果では以下のような修繕基準が発表されています。

●外壁塗装:8〜18年周期
●タイル貼り:10〜15年周期

(出典:「国土交通省:賃貸住宅の計画的な維持管理及び性能向上の推進について」)

取得の時点で修繕が必要なタイミングの場合は、その分の費用も考慮することで適切な経営計画を立てられます。

また、アパート経営を始めた後も、経済状況や地域の情報など情報収集を欠かさず行いましょう。そうすることで、周辺環境の変化や金融情勢が不安定になったときでも適切に対処できます。

まとめ

今回は、アパート経営が何年で黒字化するのかについて解説しました。

アパート経営で収支が黒字化する目安は10年といわれており、長期的な計画が重要です。さらに、最初の数年は赤字を覚悟して経営に取り組まねばならず、我慢強いメンタルも必要となります。

また、帳簿上の所得とは意味のことなるキャッシュフローについての理解を深めることで、黒字化を早められるでしょう。この記事で紹介したアパート経営を黒字化するコツを参考に、キャッシュフローを良くして少しでも早い黒字化を目指してみてください。

J.P.RETURNSでは、不動産投資に関するキャッシュフローや税金について、マンツーマンで話を聞ける個別相談をご用意しています。資金繰りに関する相談や安定したアパート経営をしたいという方は、お気軽にJ.P.RETURNSまでお問い合わせください。

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この記事を監修した人

室田 雄飛

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室田 雄飛

J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長

J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。

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この記事を書いた人

杉山 明熙

この記事を書いた人

杉山 明熙

元不動産営業の専業WEBライター。
不動産営業を12年間経験し店長、営業部長として、売買仲介、賃貸仲介、新築戸建販売、賃貸管理、売却査定等、あらゆる業務に精通。
個人ブログにて不動産営業への転職のお手伝い、不動産営業のノウハウ、不動産投資のハウツーなどを発信。
不動産業界経験者にしかわからないことを発信することで「実情がわかりにくい不動産業界をもっと身近に感じてもらいたい」をモットーに執筆活動を展開中。

資格

宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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