不動産売却の確定申告で必要な書類とは?控除の特例についても解説

公開日:2022.10.07

最終更新日:2024.02.14

監修者:室田雄飛

執筆者:染谷 重幸

不動産を売却して確定申告をする際は、必要書類を添付しなければなりません。必要書類は共通で必要なものと控除の特例を受ける際に必要なものに分けられます。

今回は不動産売却で確定申告する際に必要になる書類について説明し、税金控除を受けられるケースも紹介します。

不動産売却では確定申告が必ず必要?

不動産を売却したとき、売却益により譲渡所得を得たときは確定申告が必要です。また、特例の利用で納税を免れる場合も確定申告をしなければなりません。

一方、不動産の売却で損失が出た場合には確定申告の必要はありませんが、確定申告をすれば還付を受けられる場合もあります。

ここでは、不動産売却で確定申告が必要な場合、不要な場合について紹介します。

確定申告が必要な場合

不動産を売却した場合、確定申告が必要な場合と不要な場合があります。まず、売却による利益で譲渡所得を得た場合、確定申告をして所得税を支払わなければなりません。

また、不動産売却では税金控除を受けられる特例が多く用意されています。それらの特例により税金が免除される場合も、確定申告は必要です

それぞれの内容を詳しく見てみましょう。

利益が出たとき

不動産の売却で利益が出た場合は確定申告をしなければなりません。利益が出た場合とは取得所得価格よりも高い価格で売却できたときで、その差額が利益です。利益は譲渡所得として確定申告に計上します。

譲渡所得は売却による収入金額から不動産取得で支払った金額のほか、譲渡費用を差し引いて計算します。譲渡費用とは、不動産売却で支払った仲介手数料や印紙代、登記費用、測量費用などです。

例えば5,000万円で購入した不動産を6,000万円で売却した場合、仲介手数料などの譲渡費用を200万円支出したときは、6,000万円−(5,000万円+200万円)=800万円が譲渡所得です。

相続した土地など、取得価格が不明な場合もあります。そのような場合は収入金額の5%で計算するものとされています。例えば6,000万円で売却した不動産の購入価格がわからない場合、6,000万円×5%=300万円が取得費です。そのため、購入価格が不明な場合は譲渡所得が発生する可能性が高く、確定申告が必要になるケースがほとんどと考えてよいでしょう。

特例を利用できるとき

不動産売却では特例の利用で税金が安くなるケースがあります。特例の適用で納税を免れる場合でも、確定申告が必要です。

特例はケースによりさまざまな種類があります。代表的なのは居住していた土地を売却する場合で、要件を満たせば譲渡所得から3,000万円までの控除を受けられます。

特例を適用した場合、控除により譲渡所得がなくなるケースもありますが、そのような場合でも必ず確定申告をしなければなりません。

不動産売却で受けられる特例については、このあとの項目で詳しくお伝えします。

確定申告が不要な場合

不動産売却で譲渡所得が発生しない、もしくは購入価格よりも安く売却した場合など損失が発生した場合には確定申告の義務はありません。

しかし、不動産売却で損失が出た場合、一定の要件にあてはまれば確定申告をしたほうが良い場合があります。

確定申告が不要な場合と、確定申告することで還付請求できる場合を紹介しましょう。

損失が出たとき

不動産売却で譲渡所得が発生しない、もしくは購入価格よりも安く売却した場合など損失が発生した場合には確定申告の義務はありません。

例えば5,000万円で購入した不動産を5,000万円以下の価格で売却した場合、あるいは5,000万円以上で売却できたが仲介手数料などの譲渡費用を差し引くとマイナスになる場合は譲渡所得が発生せず、納税の義務はなくなります。そのため、確定申告をする必要はありません。

損失が出ても還付できる場合がある

不動産売却で損失が出た場合に確定申告の必要はありませんが、確定申告をすることで有利になる場合があります。

「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の要件にあてはまれば、不動産売却の損失をほかの所得と損益通算して税額を抑えることができるのです。

損益通算で還付できる可能性があるのは、以下のケースです。

 ・マイホームを買い替えた場合
 ・売却代金で住宅ローンが完済できない場合

マイホームの買い替えで損失が生じたとき、一定の要件を満たす場合は損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除できます。さらに、控除しきれなかった損失は翌年以後3年以内に繰り越すことが可能です。

また、住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額で売却して損失が生じたときに一定の要件を満たす場合も同じく損益通算ができ、翌年以後3年間繰り越すことができます。

不動産売却したときに受けられる税金控除の特例

不動産を売却した際は、税金を抑えられる控除の特例があります。特例を受けられるのは、主に以下の場合です。

・居住用不動産を売却したとき
・相続した不動産を売却したとき
公共事業などのために不動産を売却したとき
不動産売却で損失が出たとき

ここでは、不動産売却の際に受けられる税金控除の特例のうち、代表的なものを紹介します。

居住する不動産を売却した場合

居住する不動産を売却した場合、以下のような特例が設けられています。

居住用財産の3,000万円特別控除 所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる
所有期間が10年超の居住用財産を譲渡した場合の特例 居住用住宅を売却して一定の要件にあてはまるときは、税額を通常よりも低い税率で計算する軽減税率の特例の適用を受ける
特定のマイホームを買い換えたときの特例 一定の要件のもと、譲渡益を将来に繰り延べることができる

 

相続した不動産を売却した場合

相続した不動産を売却した場合、一定の要件を満たせば3,000万円の控除を受けられます。これを「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」といいます。

適用されるには被相続人から家または家と土地を相続し、相続の開始があった日から3年以内に売却することなど細かい要件があります。家屋の状態にも条件があるため、よく確認しておきましょう。

その他の税金控除・特例

不動産売却で損失が出た場合や、公共事業などで不動産を売却した場合にも特例があります。

損失が出た場合の特例は、前の項目でも紹介した2つの損益通算ができるものです。

また、公共事業や区画整理などのために不動産を売却した場合、以下のような特例があります。

公共事業などのために土地建物を売った場合の最高 5,000万円まで特別控除を差し引く特例 土地収用法やその他の法律により土地や建物を売却した場合
特定土地区画整理事業などのために土地を売却した場合の2,000万円の特例 国土交通省の市街地のまちづくり活性事業などのために売却した場合
特定住宅地造成事業などのために土地を売却した場合の1,500万円の特例 地方公共団体などに土地を買い取られた場合など

 

不動産売却の確定申告で必要になる書類は?

不動産売却で確定申告をする場合、必ず提出が必要な書類と、特例の利用により必要になる書類があります。共通して必要な書類は確定申告書のほかに登記事項証明書、売却時・購入時の売買契約書のコピーなどがあります。

また、特例を利用する場合は、それぞれ所定の書類が必要です。

ここでは、不動産売却の確定申告で必要になる書類について紹介します。

共通して必要なもの

不動産売却の確定申告をする際は、誰でも共通して必要な書類は以下のとおりです。

・確定申告書B
・確定申告書第三表(分離課税用)
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
・土地の登記事項証明書
・売却時/購入時の売買契約書(コピー)
・売却時/購入時の手数料・税金の領収書(コピー)
本人確認書類(e-taxでは不要)

土地の登記事項証明書は、法務局の窓口で取得します。郵送やオンライン請求による取得も可能です。

売却時の売買契約書は収入の証明のために必要です。手数料・税金の領収書は収入から差し引く費用の証明になります。

購入時の売買契約書は、不動産の取得価格を証明するものです。相続した不動産の場合、被相続人が購入したときの売買契約書を探しておきましょう。

購入時の売買契約書がない場合は売却価格の5%が取得価格となるため、税金が高くなる可能性があります。売買契約書以外でも取得価格を証明できれば認められる可能性があるため、税務署に相談してみてください。

特例を利用する際に必要なもの

特例を適用する場合、それぞれ追加で書類が必要になります。主に必要になるのは、以下の書類です。

・居住用不動産の売却で受けられる特例:戸籍の附票の写しなど
・相続した不動産を売却した場合に受けられる特例:相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書など(税務署で入手できます)
・マイホームを買い替えた場合の特例:戸籍の附票の写し、買換えた家の登記事項証明書、売買契約書の写しなど
損失が出た場合の特例:戸籍の附票の写し、新居の登記事項証明書、売買契約書、残高証明書、住宅ローンの残高証明書など

特例の適用を受ける場合は、それぞれの必要書類をよく確認して漏れなく揃えましょう。

必要書類の書き方

不動産売却の確定申告で記入が必要な書類は、以下の3つです。

・確定申告書B
・確定申告書第三表(分離課税用の申告書)
譲渡所得の内訳書

紙で作成する場合とWebで作成する場合の2通りあります。Webで作成する場合は、国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成して印刷するか、e-taxで提出します。

それぞれの書き方について、見ていきましょう。

紙で作成する場合

紙で手書きする場合、計算ミスや入力漏れに気をつけましょう。特に、以下の点に注意してください。

・黒いインクのボールペンで強く記入する
・マス目に記入する数字はマス目からはみ出さずに丁寧に記入する
訂正する場合は訂正したい文字を二重線で消し、上の欄などの余白に正しい文字を記入する

計算ミスや入力漏れがある場合はもちろん、読めない文字があるときも税務署から問い合わせや再提出を要求されることになります。再提出になると申告の期限に間に合わない可能性もあるため、下書きをするなどして間違いのないようにしましょう。

Webで作成する場合

確定申告書等作成コーナーによる作成は、手書きで作成するよりも間違いが少なくなるためおすすめです。正しい数字を入力すれば、必要な計算は自動で行われます。作業時間を短縮し、計算ミスを防げます。入力すべき項目に漏れがある場合は作成を完了できないため、入力漏れの心配もありません。

間違いが少ないとはいえ、当然ながら最初に正しい数字を入力することが前提です。売却価格などの入力を間違えないよう注意しましょう。

確定申告の手順

確定申告は自分で行うことができます。しかし、ほかの収入もあり計算が煩雑になる場合や忙しくて期限内に作成できない場合、税理士に依頼する方法もあります。

不動産売却で特例を利用する場合は添付する必要書類も多く、自分で行う場合は早めに準備しなければなりません。

確定申告の手順について、自分で行う場合と税理士に依頼する場合に分けて紹介します。

自分で行う場合

自分で確定申告を行う場合、以下の手順で行います。

・必要書類を集める
・申告書を記入する
・申告書と添付書類を提出する
納税する、または還付を受ける

納税が必要な場合、申告時期と同じ3月15日までが納付期限です。還付を受ける場合は、申告書提出後、およそ1ヵ月~1ヵ月半ほどで申告書に記入した預金口座に振り込まれます。

提出方法は、税務署の窓口に提出するか郵送、もしくはe-taxによる提出の3種類があります。

税理士に依頼する場合

不動産を売却した場合、特例が適用されれば節税が可能です。しかし、要件は煩雑で、どの特例が適用になるのか判断に迷う場合もあります。適用になる場合、必要書類をすべて揃えるのも負担になるでしょう。そのような場合には、税理士に依頼するのもおすすめです。

税理士に依頼すると費用がかかりますが、利用できる特例を見逃して余分な税金を払うという事態を防げる可能性があるでしょう。特に売却による譲渡所得が大きい場合は、依頼するメリットがあります。初回の相談は無料の税理士事務所もあるため、まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。

不動産売却で確定申告する際の注意点

不動産売却で確定申告する際は、いくつか注意したい点があります。まず、確定申告の期限内に提出することが大切です。期限に遅れた場合は延滞税が課せられます。

また、確定申告が必要であるにもかかわらずしなかった場合、本来の納税額に加えて追徴課税が課せられるため注意してください。

ここでは、不動産売却で確定申告をする際の注意点を紹介します。

期限に遅れないこと

確定申告の期限は、不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日まで(曜日によりずれる場合もあり)と決まっています。期限を過ぎると最大14.6%の延滞税が課せられるため注意しましょう。

特に不動産売却で特例を受ける場合は必要書類が多いため、早めの準備が必要です。

なお、還付を受けるだけの場合はこの期限を過ぎても問題ありません。売却の翌年から5年以内に提出すれば還付を受けられます。

確定申告をしなかった場合

確定申告が必要なのにしなかった場合、本来の納税額に加えて延滞税や無申告加算税が課せられます。

無申告加算税は納付すべき本税に加えて課される罰金的な性質のもので、税率は以下のとおりです。

・納付しなければならない所得税額が50万円まで:15%
・50万円を超える部分:20%

税務署からの調査を受ける前に自分から確定申告をした場合は税率が5%になります。

なお、以下の条件にすべてあてはまる場合、無申告加算税は課せられません。

・申告期限から1ヵ月以内に自主的に確定申告した
・確定申告の手続きをした日までに、支払うべき所得税を全額納付した
確定申告の手続きをした日の前日から過去5年以内に、確定申告の期限に遅れたことがない

不動産を売却したら確定申告を忘れずに

不動産を売却して譲渡所得がある場合、確定申告しなければなりません。損失が出た場合は確定申告の必要はありませんが、特例により確定申告をして還付を受けられる場合もあります。

不動産売却にはさまざまな特例があり、要件にあてはまれば税金を抑えることが可能です。特例を受けるためには必要書類の添付が必要になるため、早めに準備を始めましょう。

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この記事を監修した人

室田 雄飛

この記事を監修した人

室田 雄飛

J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長

J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。

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この記事を書いた人

染谷 重幸

この記事を書いた人

染谷 重幸

大学在学中に家庭教師のアルバイトをきっかけにデイトレーダーへ転身。24歳で資産運用法人を設立する。25歳から大手投資用マンションディベロッパーと業務提携後、およそ6年間にわたり資産運用アドバイザーとして活躍。その後、大手不動産仕入れ会社で販売統括責任者として従来の投資用物件の流通システムを革新するプロジェクトを立ち上げる。国内最大規模の投資イベント「資産運用EXPO」で登壇実績があり、同業他社からも多くの見学者が立ち見の列を作った。2020年にJ.P.RETURNSに参画。オンラインでの商談やWEBセミナーを導入し、コロナ禍でも年間300件以上の顧客相談を担当している。

資格

宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)

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