不動産投資をフルローンで始めるのは危険?基礎知識や融資を受けるポイントを紹介

公開日:2024.01.18

最終更新日:2024.01.18

監修者:室田雄飛

執筆者:杉山 明熙

「自己資金が少ないけれど不動産投資を始めてみたい」と考えている人は多くいるかと思います。実際、不動産投資では購入時だけでなく経営の中で多くの出費が発生します。しかし、フルローンを利用することで購入時の自己資金を抑え、手元に資金を残した状態で不動産経営を始められるのです。
今回は、不動産投資におけるフルローンの基礎知識やメリット・デメリット、フルローンを利用した不動産投資で気をつけるべきポイントを解説します。

フルローンの基礎知識

ここでは、不動産投資におけるフルローンの基礎知識を解説します。

フルローンとは物件価格の100%をローンでまかなうこと

フルローンとは、物件を購入する際、物件価格の全額をローンでまかなうことです。

たとえば、物件価格が5,000万円の場合、フルローンを利用すると金融機関から5,000万円の融資を受けて購入できます。ただし、購入時にかかる諸費用は自己資金でまかなう必要があるので注意が必要です。

フルローンを利用すれば自己資金を抑えて物件が購入でき、不動産経営のために資金を残しておくことができます。手元に資金を残しておくことで、その資金を入居者トラブルや建物の修繕費に充てられるのです。

ただし、フルローンは借入額が多い分、毎月の支払いが高額になりキャッシュフローが悪化するおそれがあります。また、借入額が多いと金利上昇リスクが高まり、支払額の増加幅が大きくなるため、やみくもにフルローンを利用するのは避けましょう。

オーバーローンとの違いは?

フルローンは物件価格の100%をローンでまかなえますが、諸費用までは融資がおりません。しかし、「オーバーローン」を利用すれば購入時の諸費用もローンに組み込むことができます。

物件を購入する際、仲介手数料や印紙代など、物件価格以外にもさまざまな経費がかかります。オーバーローンはそれらの費用を物件価格と一緒に借り入れることができるのです。具体的には、物件価格が5,000万円、購入時の諸費用が300万円の場合、合計5,300万円のローンを組んで物件を購入できます。

オーバーローンは購入時にかかる経費まで融資がおりるため、フルローンよりも多くの資金を手元に残せます。

オーバーローンの注意点としては、そもそも取り扱っていない金融機関があることです。オーバーローンは物件の担保評価以上の金額を融資することになるので、金融機関にとってリスクが大きいのです。また、オーバーローンの取り扱いがあるとしても、通常のローンに比べて審査が厳しくなることにも注意しましょう。

フルローンの不動産投資で必要な初期費用

フルローンは物件価格をすべてローンでまかなえますが、以下の諸費用は組み込めません。

【フルローン対象外の諸費用一覧】

● 仲介手数料
● 印紙税
● 登録免許税
● 不動産取得税
● 司法書士手数料
● 火災保険料、地震保険料
● 固定資産税清算金
● ローン保証料
● ローン事務手数料 など

購入時にかかる諸費用の目安は、物件価格の7〜10%程度だといわれています。物件価格が5,000万円の場合は350万〜500万円程度です。諸費用額にばらつきがあるのは、購入する物件によって火災保険料や税金額などが変わるためです。

諸費用は、資金計画でおおよその金額を把握することができます。かならず購入前に、不動産会社のコンサルタントから資金計画を作成してもらいましょう。購入時に資金ショートを起こさないよう、余裕を持った自己資金の用意が重要です。

フルローンの融資がおすすめな人は限られている

フルローンを利用すると少ない資金で不動産投資を始められますが、誰にでもおすすめできるわけではありません。初心者がいきなりフルローンを利用して不動産投資を始めると、毎月の返済額が多くなり失敗してしまう可能性があります。

フルローンに向いている人の特徴は以下の通りです。

● 低金利でフルローンの融資が受けられる人
● 年収が高く金融資産を多く所有している人
● 不動産投資経験が豊富な人

「低金利でフルローンの融資が受けられる人」がおすすめな理由は、金利が低ければ毎月の返済額が軽くなるためです。投資用のローンは、住宅ローンと比べると金利が高く設定されています。フルローンの場合はさらに金利が高くなるため、できるだけ低金利で借りることが重要なのです。不動産会社から紹介された金融機関や、日頃取引のある金融機関で、1%台前半まででフルローンを組めるのであればおすすめといえるでしょう。

また、「年収が高く金融資産を多く所有している人」は、フルローンを組んでも不動産経営を始めた後のリスクに柔軟に対応できるので、フルローンに向いています。資産がなく毎月の返済でギリギリの人がフルローンを組んでしまうと、建物の修繕や空室リスクに耐えられません。

「不動産投資経験が豊富な人」は、不動産経営の中で起こりうるトラブルやリスクを事前に予測できます。それにより、あらかじめどれくらいの資金を用意しておけば良いのかを分かっているので、フルローンを利用しても問題ないでしょう。

とはいえ、上記で紹介した人でも、フルローンを利用するとキャッシュフローが悪くなりやすいです。そのため、フルローンにこだわりがない人は、自己資金を用意して通常のローンを組むことをおすすめします。

フルローンのメリット3選

フルローンを利用して不動産投資をすると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、フルローンのメリットを3点紹介します。

自己資金を残しておくことができる

不動産経営には、初期費用以外に多くの経費がかかります。しかし、フルローンを利用すれば自己資金を手元に残し、経費をすぐに支払うことができるのです。

不動産経営には、主に以下のような費用がかかります。

● 室内の原状回復費
● 建物の大規模修繕費
● 広告宣伝費
● 管理料
● 固定資産税 など

これらの費用を適切に支払うことで、健全な不動産経営ができます。もし手元の資金が足りず経費が支払えなくなると、空室が増えキャッシュフローが悪くなるという、負のスパイラルに陥ってしまうのです。

また、手元に資金を残しておけば、私生活で不測の事態が起きた際に、生活費に回すことができるというメリットもあります。

レバレッジ効果が大きくなる

不動産投資でのレバレッジ効果とは、少ない資金で大きな資産を手に入れることです。物件購入時にフルローンを利用すれば、レバレッジ効果が大きくなります。

たとえば、5,000万円の物件を購入する際、500万円の諸費用がかかったとしましょう。

①自己資金を3,000万円用意し、2,500万円のローンを組む。

②自己資金を500万円用意し、5,000万円のフルローンを組む。

上記の2パターンでは、フルローンを利用した②のほうが少ない自己資金で大きな運用ができるため、レバレッジ効果が高くなります。レバレッジ効果が高いと、少ない資金で大きな利益を得られるため、効率の良い投資ができるでしょう。

団信の効果を最大限活かすことができる

団信とは「団体信用生命保険」のことで、ローン契約者に万が一のことがあった場合に、残債がゼロになる保険です。物件を購入する際にフルローンを利用すれば、団信の効果を最大限に発揮できます。

自己資金を多く入れて物件を購入した場合と、自己資金を少なくしてフルローンで物件を購入した場合、契約者が亡くなったときに残るのは購入した不動産だけです。自己資金を多く入れたからといって、その分の資金が戻ってくることはありません。

このように、ローンの残高が高いほど団信の効果が高くなります。また、フルローンで物件を購入した後に万が一があった場合、不動産とともに多くの資金を家族に残せることもメリットです。

フルローンのリスク2点

フルローンにはメリットがある一方、いくつかのリスクも存在します。ここでは、フルローンを利用する際のリスクを2点紹介します。

返済額増加のリスク

フルローンを利用すると借入額が増えるため、返済の負担が大きくなりキャッシュフローが悪くなるというリスクがあります。借入額が増えるとローンにかかる利息も増加します。それにより毎月の返済額と総返済額が大きくなり、不動産経営の負担が大きくなることにつながりかねません。

予期せぬ修繕や空室が続いても、手元に資金が残っている間は安心ですが、もし手元の資金が底をついた場合、その後の経営が立ち行かなくなってしまいます。フルローンの利用によって毎月の返済額が大きくなっているため、家賃収入だけではトラブルに対応できない可能性が出てきます。

ここで、フルローンと自己資金を入れて借入額を減らした場合のシミュレーションを見てみましょう。

【シミュレーション条件】

● 物件価格5,000万円
● 金利2%
● 返済期間25年

①フルローンを利用し5,000万円を借り入れた場合の返済額

毎月の返済額:211,927円

総返済額:63,577,961円

②自己資金を用意し3,000万円を借り入れた場合の返済額

毎月の返済額:127,156円(▲84,771円)

総返済額:38,146,723円(▲25,431,238円)

このように、借入額が2,000万円減ると毎月の返済額が約8.4万円、総返済額が約2500万円下がります。フルローンは手元に資金を残せるメリットがありますが、毎月の返済が増えることに不安があるという人は、利用を控えたほうがいいでしょう。

金利上昇のリスク

フルローンを利用し借入額が増えると、金利上昇による影響を強く受けることになります。「変動金利型」のローンを利用している場合、借入金額が多いほど、金利上昇時の返済額の増加幅が大きいのです。

フルローンと自己資金を入れて借入額を減らしたケースの、金利上昇によるシミュレーションをみてみましょう。

【シミュレーション条件】

● 物件価格1億円
● 返済期間20年
● 金利が2%から3%へ変動

①フルローンを利用した場合

毎月の返済額:505,883円(2%)→554,597円(3%)△48,714円

②自己資金を用意し5,000万円を借り入れた場合

毎月の返済額:252,941円(2%)→277,298円(3%)△24,357円

シミュレーション結果を見ると、借入金額が少ない②は、支払額の上昇をフルローンの約半分まで抑えることができました。金利上昇の気配が見え始めたときや、将来の不安を少しでも抑えたいときは、フルローンの利用を控えるのがいいでしょう。

金融機関からフルローンを受けるための4つのポイント

金融機関からフルローンを受けるためには、どのような点に気をつければいいのでしょうか。ここでは、フルローンを受けるためのポイント4点を紹介します。

社会的地位を上げ金融資産を増やす

金融機関がローン審査の際に重要視するポイントは、年収や勤務先、勤続年数などの「社会的地位(属性)」と「金融資産の多さ」です。金融機関は、この2つの力が高いほど返済能力が優れていると判断し、フルローンを貸し出す可能性が高くなります。

社会的地位が高い人の代表的な例は以下のとおりです。

● 上場企業や公的機関など倒産リスクが低い会社に勤務している会社員
● 勤続年数が長い会社員
● 安定して高い年収を得ている会社員
● 数期にわたり安定した収益を得ている自営業者

フルローンを受けるためには、上記の属性に少しでも近づけるようにするといいでしょう。

また、他の不動産や株式などの金融資産が多い人も、フルローンを借りられる可能性が上がります。金融資産の例として、他にも運営している不動産がある、土地を所有しているなどがあげられます。金融資産を多く所有していれば、もし返済が滞ったとしても、資産を現金化して返済に充てることが可能です。そのため、金融機関から高い信用を得られます。

金融資産を所有していない人は、まず資産を増やして金融機関からの信用を高めましょう。すでに資産を所有している人は、ローン審査時に資産の多さを金融機関へ伝えてください。そして、少しでも信用度が高いことを金融機関にアピールしましょう。

価格の大部分が土地価格で占めている物件を選ぶ

金融機関がローンの審査をする際、申込者の属性と同時に、物件の評価も審査します。購入する物件は担保として抵当権が設定されるので、物件の担保評価が高いほうが審査に通りやすいのです。

物件の担保評価を高める方法として、土地の価格が多く反映されている物件を選ぶ方法があります。建物は年数が経つにつれて資産価値が下がりますが、土地価格は年数が経っても低くなりません。そのため、金融機関からすると万が一貸し倒れがあった場合でも、土地価格が高いと換金率が高いため、安心して貸し出せます。

したがって、「築年数が浅く立地が悪い物件」より「建物は古く立地が良い物件」を狙って購入するほうが、フルローンを受けやすくなるでしょう。

賃貸経営の実績を作っておく

不動産投資をしていない初心者より、すでに投資物件を所有していて、賃貸経営の実績がある人のほうが金融機関からの評価が高まります。フルローンを受けるためには、まず不動産投資の経験を積んだ状態でローン審査に挑むことが望ましいです。

すでに投資物件を所有している場合、その物件で一定の家賃収入があり、キャッシュフローがしっかり出ていれば、返済能力が高いと判断されます。それにより、フルローンを受けられる可能性が高まります。また、ケースによっては所有している不動産を共同担保に設定できるため、担保を補完する役割も果たせるでしょう。

提携銀行からの融資を紹介してくれる不動産会社を選ぶ

不動産会社の中には、提携している金融機関の融資商品を紹介してくれる会社があります。その不動産会社と金融機関の間では、長年の実績や深い信頼関係が築けているため、個人で融資を申し込むよりも良い条件が期待できるでしょう。

提携銀行の紹介を受けられるか確認するには、担当のコンサルタントに直接聞く方法や、ホームページをチェックする方法があります。ただし、不動産投資をメインにしていない会社では、投資用のローンに詳しくない可能性があります。そのため、提携銀行の紹介を受けるためには、不動産投資会社に相談するといいでしょう。

フルローンで不動産投資を始めるために注意するべきこと

フルローンを利用して不動産投資を始める際に、気をつけなければいけない点があります。

返済後利回りを重視する

不動産投資は利回りの計算が重要で、利回りが高いほど収益が大きくなります。ただし、フルローンを利用して不動産投資を始める場合は、「返済後利回り」を重視して物件を選ぶようにしましょう。

返済後利回りとは、家賃収入から管理費・修繕積立金などのコストや税金、ローン返済額を差し引いた、最終的に手元に残る金額のことです。たとえ物件資料上での表面利回りが良くても、返済後利回りを確認しなければ、キャッシュフローが悪化する可能性があるのです。

フルローンを利用した場合は毎月の返済額が多いため、返済後利回りが低くなるケースが多いです。不動産経営を始めたあとにキャッシュフローが悪くならないよう、フルローンの場合はとくに返済後利回りを意識しましょう。

一般的に、返済後利回りは2%以上あることが望ましいとされています。購入前に返済後利回りを計算できるよう、経費の額やローン金利をあらかじめ確認しておくことが重要です。

慎重に返済シミュレーションを行う

不動産経営では、購入前に返済シミュレーションを行うことが一般的ですが、フルローンを利用する際は、さらに慎重にシミュレーションをしましょう。フルローンは毎月の返済額が多いだけではなく、金利上昇のリスクもあり、少し状況が変わるだけで経営が圧迫されることもあるのです。

具体的には、以下の点に気をつけてシミュレーションしましょう。

● 家賃収入におけるローン返済額の割合
● 手元の資金がどれくらいもつのか
● 空室やトラブルへの対策
● 具体的な出口戦略

何より重要なのは、どうすれば長期的に安定した不動産経営を行えるのかです。「フルローンを組んだから不動産経営に失敗した」とならないよう、ファイナンシャルプランナーや不動産投資会社のコンサルタントに納得いくまで相談しましょう。

まとめ

今回は、不動産経営におけるフルローンについて解説しました。フルローンとは、物件価格の100%をローンでまかなうことで、手元に資金を残しておける点が大きなメリットです。ただし、毎月の返済額が多くなりキャッシュフローが悪くなりやすいため、慎重な返済計画を立てることが重要といえます。

少ない自己資金で不動産投資を始める際は、不動産投資のプロによるアドバイスが不可欠です。J.P.RETURNSでは、不動産投資のリスクや資金計画に関する相談を承っております。また、提携金融機関の投資ローンの紹介も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。プロへの個別相談はこちらから。

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この記事を監修した人

室田 雄飛

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室田 雄飛

J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長

J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。

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執筆者

この記事を書いた人

杉山 明熙

この記事を書いた人

杉山 明熙

元不動産営業の専業WEBライター。
不動産営業を12年間経験し店長、営業部長として、売買仲介、賃貸仲介、新築戸建販売、賃貸管理、売却査定等、あらゆる業務に精通。
個人ブログにて不動産営業への転職のお手伝い、不動産営業のノウハウ、不動産投資のハウツーなどを発信。
不動産業界経験者にしかわからないことを発信することで「実情がわかりにくい不動産業界をもっと身近に感じてもらいたい」をモットーに執筆活動を展開中。

資格

宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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