節税になる不動産投資の損益通算とは?仕組みや「良い赤字」「悪い赤字」の意味も解説

公開日:2022.12.13

最終更新日:2024.04.02

監修者:室田雄飛

執筆者:染谷 重幸

不動産投資で赤字が出た場合、ただ損失が発生しただけと思っている人も多いのではないでしょうか。しかし、不動産投資で赤字が出た際には、損益通算などの税制を利用することで節税が可能です。

不動産投資は赤字が出ても節税につながる投資であるため、節税の仕組みや出しても良い赤字について理解しておくことが大切です。本記事では、不動産投資の赤字が節税になる仕組みなどについて解説するので、不動産投資をするときの参考にしてください。

不動産投資における赤字とは

不動産投資で赤字になっているかどうかは、次の計算式で計算できます。

不動産所得 = 不動産収入 – 運用に必要な経費

上記の計算を行い、数字がマイナスになった場合は赤字です。

ただし、不動産投資における赤字は1つではなく「良い赤字」と「悪い赤字」に分けられます。

良い赤字とは会計上の赤字を指し、家賃収入で黒字にもかかわらず、減価償却を用いたことにより会計上だけ赤字になっている状態です。一方、悪い赤字とは、キャッシュフローがマイナスとなっており、会計だけでなく現金が減っている状態のことをいいます。

ここからは、不動産投資における赤字を計算するために必要な項目について解説します。

不動産投資の収入

不動産投資における収入は、家賃だけでなく次の表のような金銭も含まれます。

名称 内容
家賃 賃貸物件を貸す対価として入居者から得られる金銭
共益費 賃貸物件の修繕を行うために入居者から徴収する金銭
礼金 入居者が賃貸物件を借りる謝礼として払う金銭
更新料 入居者が賃貸契約を更新するときに支払う金銭
その他の収入 駐車場収入や太陽光発電の売電、自動販売機の設置収入など

上記の表のように不動産収入といっても、家賃以外に多くの項目があります。赤字の計算をするときには、すべての収入を合計することを忘れないようにしましょう。

不動産投資の経費

不動産投資の経費も、収入同様にさまざまな項目があります。不動産投資の主な経費は次の表の通りです。

名称 内容
固定資産税

都市計画税

不動産などの固定資産を所有している人に課税される税金
建物の損害保険料 火災保険や地震保険の保険料
修繕費用 リフォームや建物修繕に使った金銭
委託管理料 管理会社に管理を委託した際に支払う金銭
水道光熱費 建物共用部分で使用した水道料金や電気代
仲介手数料 賃貸契約時に不動産会社へ支払う報酬
広告宣伝費 賃貸契約時に不動産会社へ支払う金銭
給料 従業員がいる場合に支払う給与
地代

家賃

土地や建物を借りて賃貸している場合に払う金銭
立ち退き料 入居者を退去させるときに払う金銭
ローン保証料 ローンを借りるときに金融機関へ渡す金銭
ローンの利息 ローン返済と同時に支払う金銭
減価償却費 法定耐用年数に応じて償却された建物の価値
通信費 不動産会社などとのやり取りでかかった金銭
交通費 不動産管理などに必要な移動にかかった金銭

収入に比べ、経費として払う項目は多いため、確定申告時に漏れなく計上しましょう。

なお、不動産に関連しない支出は経費として認められません。たとえば、不動産管理に必要な交通費は経費ですが、不動産管理のついでに友人と会ったときの交通費は経費ではありません。漏れなく計上するとしても、経費以外の支出は合計しないよう注意が必要です。

 

不動産投資で赤字が出たら損益通算で節税を図ろう

不動産投資の収益から経費を差し引いて赤字になったときには、「損益通算」を使い節税を図りましょう。

損益通算とは、利益から損失を差し引ける税制です。

利益から損失を差し引けると、所得が少なくなり、所得税や住民税の課税額が少なくなります。不動産所得は損益通算が認められているため、不動産所得で出した赤字を給与所得から差し引くことが可能です。

たとえば、給与所得が200万円、不動産所得では100万円の赤字になったとして、損益通算のシミュレーションをしてみましょう。

給与所得200万円のままであれば、所得税が10万2,500円課税されます。しかし、給与所得200万円から不動産所得の赤字100万円を差し引くと、給与所得が100万円として所得税の計算が行われます。給与所得が100万円の場合、所得税額は5万円です。

今回の計算では損益通算をした結果、所得税が5万2,500万円節税されたことになります。

損益通算するときの注意点

損益通算は節税に役立つ税制であるものの、利用時には注意点もあります。

損益通算するときの注意点は次の通りです。

● 別荘の賃貸に関する損失は損益通算できない
● 土地取得のためのローンの利子は損益通算できない
● 国外中古不動産の赤字は損益通算できない

不動産所得で赤字が出たからといって、すべて損益通算できるとは限りません。損益通算を利用するときは、あらかじめ内容をよく理解しておきましょう。

別荘の賃貸に関する損失は損益通算できない

別荘の賃貸に関する損失は、損益通算できません。

不動産所得における損益通算は、賃貸する不動産によって適用されないことがあります。あくまで損益通算で認められるのは、生活上必要な住まいに関する所得だけです。別荘はなくても生活に困るわけではないため、生活上必要な住まいとは認められません。

不動産投資をするにあたり、別荘などの娯楽施設に該当する不動産は節税の観点から見た場合、避けたほうがよいといえます。国税庁のホームページにも、別荘などの娯楽施設は損益通算適用外と明記されています。

参考:国税庁 No.2250 損益通算

土地取得のためのローンの利子は損益通算できない

土地取得のためのローンの利子は、損益通算できません。

不動産投資を行う場合、多くの人が土地と建物の両方をローンで購入します。区分所有マンションも土地の持分を購入しなければならないため、一棟アパートや一棟マンションに限った話ではありません。

ただし、ローンの利子で損益通算が認められないのは土地だけです。建物を購入するために借りたローンの利子は、損益通算の対象となることを念頭に置きましょう。

たとえば、土地の購入に利用したローンの利子が年間20万円、建物の購入に利用したローンの利子が年間10万円発生したとします。この場合、建物の利子にあたる10万円のみが損失として計上できるということです。

土地のローンに対する利子は金額が大きくなるケースもあるため、損益通算できないことは理解しておく必要があります。

参考:国税庁 No.2250 損益通算

国外中古不動産の赤字は損益通算できない

国外所有の中古不動産で発生した損失の一部が、令和3年以降に損益通算できなくなりました。

損益通算できなくなったのは、「耐用年数を簡便法により計算した国外中古建物の減価償却費に相当する部分の金額」です。減価償却が通算できないのは投資家にとって大きなデメリットであるため、国外の中古不動産を節税目的で購入する場合は注意しなければなりません。

なお、減価償却費以外の損失は認められるケースもあるため、どの経費がいくら損失として認められるのか税理士や税務署に確認しておくのも必要です。

参考:国税庁 No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算

 

帳簿上の赤字は「良い赤字」

不動産投資における赤字には、「良い赤字」と「悪い赤字」の2種類があります。

良い赤字とは、次のような赤字を指します。

● 資産の増加を狙った赤字
● 減価償却など節税目的の赤字

上記の赤字がなぜ良い赤字といわれているのか、詳しく解説していきます。

資産の増加を狙った赤字

不動産投資の目的として、資産の増加を狙って出る赤字は「良い赤字」です。

たとえば、10年で資産1,000万円を目指して貯金したとします。この場合1年間で100万円も貯金しなければならないため、年収が高くないと難しい目標です。

しかし、2,000万円の不動産をローンで購入し、ローンや経費の合計が10年間で200万円発生したとします。そして、10年後に不動産価格が1,800万円まで落ちたと仮定しても、不動産投資をすることで資産が1600万円増えたことになります。赤字が累積すると損失のほうが大きくなるため、キリのよいタイミングで売却すれば資産の大幅増加が見込めるわけです。

シミュレーションのように不動産投資で赤字が出たとしても、貯蓄するより資産が増えているのであれば、良い赤字といえます。

減価償却など節税目的の赤字

節税を目的とし、減価償却などで出た会計上の赤字は「良い赤字」です。

減価償却とは、建物の耐用年数に応じた価値損失を経費として計上できる税制です。

減価償却は実際に発生した費用ではなく、計算上で発生した費用であるため、現金が減っていないのにもかかわらず経費計上できます。この仕組みにより会計上だけ赤字にして、キャッシュフローが黒字のまま所得を圧縮できます。

不動産投資の成否に大きく影響するため、減価償却の仕組みは必ず理解しておきましょう。

なお、減価償却については「不動産投資は減価償却が重要!意味や計算方法を徹底解説」で詳しく解説していますので、内容が気になる人はご覧ください。

参考:国税庁 No.2100 減価償却のあらまし

 

キャッシュフロー上の赤字は「悪い赤字」

不動産投資における悪い赤字は、次のような赤字です。

● 空室による赤字
● ローン返済や金利上昇による赤字

悪い赤字は不動産投資の失敗に直結するため、なぜ悪い赤字と呼ばれるのか内容を理解しておきましょう。

空室による赤字

空室による赤字は、「悪い赤字」です。

空室が発生すると、不動産収入である家賃が途絶えてしまいます。ローンの返済や固定費用は空室かどうかにかかわらず発生するため、収入が無い状態のままだと現金がどんどん減ってしまいます。空室が長く続くと長年得た利益がなくなるだけでなく、生活費を不動産投資に回すなどの危険性が高まる悪い赤字です。

空室を防ぐには、不動産購入前に物件の周辺環境を確認することが重要です。駅までのアクセスの良さや治安の良さ、競合物件の少なさなどを確認しておくとよいでしょう。

不動産購入後に空室が増えた場合、家賃の値下げでも部屋を埋めることはできますが、安易な値下げを行うと返って利益が出にくくなるため注意しなければなりません。

ローン返済や金利上昇による赤字

ローン返済やローンの金利上昇による赤字は、「悪い赤字」です。

ローン返済やローンの金利上昇による赤字は、キャッシュフローを圧迫してしまいます。家賃とローン返済の差額が少ないと、空室の期間がちょっと出るだけで大きな赤字となるのです。

ローン返済による赤字は不動産投資の失敗につながるケースが多いため、予想される家賃収入とローン返済の差額が大きくなるように投資計画を立てることが大切です。

ローン借入時に多く頭金を入れればローン返済額が下がるため、管理に必要な余剰金を正確に計算し、残った金銭を頭金に回すのがよいでしょう。

 

「悪い赤字」の改善方法

不動産投資を開始してから「悪い赤字」が出てしまうケースも考えられます。投資後に悪い赤字が発生したときのために、改善方法を覚えておきましょう。

悪い赤字の改善方法は、次の通りです。

● ローンの借り換えを検討する
● 管理会社を変更する
● 不動産投資のプロに相談する

悪い赤字が発生しても、改善方法を理解して早急に対策すれば大きな損失は生まれません。早めの対策を行って不動産投資を成功に導きましょう。

ローンの借り換えを検討する

ローン返済による赤字が発生したときには、ローンの借り換えを検討しましょう。

ローン返済で発生する赤字は悪い赤字であり、早急に改善が必要です。空室をすぐに埋めたり、家賃を上げたりするのは現実的でないため、まずローンの借り換えを検討します。

不動産投資用ローンはさまざまな金融機関が提供しており、今借りているローンよりも金利の低いローン商品がないか探してみましょう。金利の低いローンに借り換えられれば月々の返済額だけでなく、返済総額も減らすことが可能です。

なお、ローンの借り換えをするときには、借り換え費用に注意しましょう。ローンの一括返済費用や新規借入費用が高い場合、借り換えたことにより損失が大きくなってしまいます。ローンを比較するときには、金利だけでなく費用も比較しましょう。

管理会社を変更する

空室による赤字が発生したときには、管理会社の変更を検討しましょう。

空室はキャッシュフローを悪化させてしまうため、すぐに改善を図らなければなりません。空室を埋めるためには、管理会社を変更するのも1つの方法です。

管理会社の管理の質は、居住者の生活の質に影響します。清掃員の掃除の仕方が悪かったり、クレームに対する処理が遅かったりすれば、居住者のストレスも増加するでしょう。空室の発生を防ぐうえで、管理会社選びは非常に重要な要素です。

また、管理会社の変更は、管理委託費の改善につながることもあります。質の高い管理会社に変更したとしても、委託管理費が高くなっては意味がないため、費用対効果を考えて変更しましょう。

不動産投資のプロに相談する

悪い赤字が発生したときには、不動産投資のプロに相談しましょう。

悪い赤字の改善方法として、ローンを借り換えたり管理会社を変更したりすることが有効とお伝えしました。しかし、実際に変更するときに、どのローンや管理会社を選択すればよいのか判断できないことも多いはずです。どのように改善すればよいか迷ったときには、信頼できる担当者に相談するのが一番です。

信頼できる担当者であれば、親身になって赤字の改善点を探し、解決法まで教えてくれます。

また、相談するときには悪い赤字の改善方法だけでなく、今後の不動産運用についても聞いておき、赤字が発生しないように対策を実施しておきましょう。

不動産投資の赤字で節税するときはプロに相談しよう

不動産投資の赤字には、「良い赤字」と「悪い赤字」があります。

悪い赤字が出たときには、信頼できる不動産会社の担当者に相談し改善していきましょう。

また、良い赤字だったとしても、上手な節税方法を不動産会社の担当者に聞いておくことが大切です。効率的に節税するには税金の知識が必要であるものの、一般の人だとなかなか税金について理解できません。税金の知識がない状態で節税対策をしてしまうと、かえって税金が多くなることもあるため、必ずプロに相談してから進めていきましょう。

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室田 雄飛

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室田 雄飛

J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長

J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。

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執筆者

この記事を書いた人

染谷 重幸

この記事を書いた人

染谷 重幸

大学在学中に家庭教師のアルバイトをきっかけにデイトレーダーへ転身。24歳で資産運用法人を設立する。25歳から大手投資用マンションディベロッパーと業務提携後、およそ6年間にわたり資産運用アドバイザーとして活躍。その後、大手不動産仕入れ会社で販売統括責任者として従来の投資用物件の流通システムを革新するプロジェクトを立ち上げる。国内最大規模の投資イベント「資産運用EXPO」で登壇実績があり、同業他社からも多くの見学者が立ち見の列を作った。2020年にJ.P.RETURNSに参画。オンラインでの商談やWEBセミナーを導入し、コロナ禍でも年間300件以上の顧客相談を担当している。

資格

宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)

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