住宅ローン減税とは?
ここからは、住宅ローン減税の制度内容と条件についてご説明していきます。特に、どんな住宅が住宅ローン減税の対象となるのかよく理解しておきましょう。
住宅ローン減税制度の仕組み
住宅ローン減税制度とは、住宅ローンを利用してマイホームを購入する人に向けて、その金利負担の軽減を図るものです。毎年末の住宅ローン残高か住宅の取得対価のうち少ない方の金額に応じて、その1%が所得税から控除されます。もともと所得税が少なくて控除しきれないときは、残りを住民税からも控除できます。控除期間は10年間です。
住宅ローン減税を「住宅ローン控除」と呼ぶケースも多いですが、正式には「住宅借入金等特別控除」と呼びます。申請する際は、最初の年だけ確定申告を実施する必要があります。
消費税率が8%へ引き上げられた平成26(2014)年4月より、住宅ローン減税の控除額が引き上げられました。引き上げ前後の主な違いは以下のとおりです。
~平成26年3月 | 平成26年4月~平成33年12月 | |
最大控除額 | 200万円(20万円×10年間) | 400万円(40万円×10年間) |
住民税からの控除上限額 |
年間9万7500円 |
年間13万6500円 |
ただし以上はあくまで一般住宅の控除内容であり、「長期優良住宅」や「低炭素住宅」として認定された場合は控除の幅がさらに広がります。平成26年3月までは300万円、それ以降は500万円までです。
ここで長期優良住宅とは長期にわたって良好に使えるような措置を講じられた優良な住宅であり、耐震性や省エネルギー性など9項目の認定基準にクリアすれば認定されます。また低炭素住宅とは、省エネ法で定められた省エネ基準より一次エネルギー消費量が10%以上少ないのに加え、節水対策や木材利用など低炭素化につながる措置を講じられた住宅です。
平成31(2019)年10月から消費税が10%へ引き上げられた場合には、住宅ローン減税制度についても何らかの変更が加わる可能性もありますので注意が必要です。
住宅ローン減税を受けられる条件
住宅ローン減税を受けるためには、定められた条件をすべてクリアしている必要があります。クリアしていないと、制度的に用意してもらった控除が利用できなくなりますから、マイホーム購入前に入念にチェックしておきましょう。
まず、自身の居住が絶対条件です。住宅の取得日から6ヵ月以内に入居するとともに、12月31日まで続けて済んでいる必要があります。不動産投資用の住宅や別荘などは住宅ローン減税の対象となりません。
また、住宅の床面積が50平方メートル以上で、2分の1以上の部分が居住用でないといけません。この場合の床面積とは不動産登記上の床面積であり、マンションやアパートであれば専有部分の床面積で判断されます。売買契約書や不動産会社の販売資料などに記載される床面積とは算出基準が異なり、概ね登記簿面積の方が小さくなります。
住宅ローンの償還期間(返済期間)が10年以上あり、借入先は原則金融機関であることも条件です。たとえば親族や友人・知人などの個人から借りた場合は「住宅ローン」とみなされないため、当然住宅ローン減税の対象からも外れます。年収が3000万円以下であることも条件です。最初は住宅ローン減税を利用できたとしても、その後、年収3000万円以上となったことがあれば、その年だけ利用できなくなります。
住宅ローン減税の対象住宅は、新築住宅だけではありません。中古住宅や増改築(リフォーム)も対象に含まれます。
ただし、中古住宅の場合は、現行の耐震基準を満たしていることが別途条件として加わります。鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造のような耐火建築物の場合は築年数25年以内、木造のような耐火建築物以外の場合は築年数20年以内が条件です。それを過ぎている場合は、「耐震基準適合証明書」を発行してもらうか既存住宅性能評価で耐震投球以上と評価されるか、あるいは住宅瑕疵担保責任保険法人による中古住宅の検査と保証がセットになった保険(既存住宅売買瑕疵保険)に加入する必要があります。中古住宅を安く取得してリノベーションした場合は、築後年数が経過しすぎて減税対象外となってしまう可能性がありますので注意しましょう。
増改築等も住宅ローン減税の対象となります。その条件としては、工事費が100万円以上であるとともに、大規模な修繕や模様替え、耐震改修工事、バリアフリー化や省エネ化のための改修工事などです。ただし、こうした増改築やリフォームのためのリフォーム減税(特定増改築等住宅借入金等特別控除)が別にあることから、控除額を比較検討して選択する必要があります。両者を重複して利用することはできません。
住宅ローン減税でどれくらい安くなるのか?
住宅ローン減税でどれくらい所得税や住民税が控除されるのか、事前に計算シミュレーションを行っておきましょう。
住宅ローン減税の計算方法は、平成30(2018)年現在で年末時点の住宅ローン残高の1%です。住宅ローン残高が2000万円の場合は、20万円(2000万円×1%)が控除対象となります。ただし、課される所得税額と控除対象となる住民税額(上限は13.65万円か前年課税所得の7%のうち小さい方)の合計額が20万円に達していないのであれば、こちらが控除対象となります。
たとえば、ある年の所得税が3万円で住民税が15万円、住宅ローン残高が2000万円だったとします。この場合、控除対象は2000万円の1%に当たる20万円ですから、所得税+住民税の18万円すべてが控除となるように見えます(2万円が還付されることはありません)。
しかし、実際にはそうなりません。住民税の控除対象上限額が13万6500円ですから、実際の住宅ローン減税額は所得税3万円+住民税13万6500円=16万6500円となります。住宅ローン控除の可能額が大きくても、実際はそうならない可能性が大きいので注意してください。あくまで限度額・住宅ローン残高の1%(控除可能額)・所得税額と控除対象住民税額の合計額の3つの中で、最も小さい額が実際の控除対象として選択されるのです。
実際には、自分の課税所得(年収ではありません)やほかの控除(医療費控除や寄附金控除など)との関連で住宅ローン減税の額が決められます。インターネット上で住宅ローン減税の計算ツールがありますから、そちらを利用して事前シミュレーションを行うことをおすすめします。
住宅ローン減税の注意点
減税額の計算の箇所でお伝えしたとおり、実際の減税額は控除可能額とは異なるなどの注意点があります。最後に、住宅ローン減税を利用する際の注意点をいくつかお伝えします。控除対象外となってしまうと、毎年の家計に数十万円単位の負担が増えることになるのでよく確認してください。
400万円はあくまで最大控除額として考える
現行制度における理論上の最大控除額は400万円です。しかし、実際には毎年40万円の控除を10年間継続する人はあまりいないことに注意が必要です。住宅ローンの残高や毎年の税額によって控除額が減るため、実際は最大控除額をフルに活用できないケースが多くなります。
まず、住宅ローンの返済が進めば年末時点の残高も減少するため、40万円の控除を10年続けるには5000万円以上の借り入れが必要となります。仮に4000万円を借り入れたとすると、最初の年は40万円控除の可能性もあるものの2年目以降は必ず40万円未満の控除になります。
また、計算方法のご説明のところで見たとおり納付する税金以上の金額は還付されません。仮に控除可能額が20万円あったとしても、所得税額と住民税額(あるいは住民税からの控除上限額)の合計が18万円であれば、控除額も18万円までとなります。残りの2万円が返ってくることはありません。
中古住宅は、2014年3月までの措置が適用される場合がある
消費税が非課税とされる中古住宅の個人間売買の場合などの特殊なケースの場合、住宅ローン減税拡充前の措置が適用されます。先にお伝えしたとおり、最大控除額は200万円(20万円×10年間)、住民税からの控除上限額は9万7500円です。
投資用の不動産には適用されない
住宅ローン減税の対象となるのは居住用の住宅だけであり、投資用不動産をローンで購入したとしてもこの制度は適用されません。
ただし、不動産投資だと控除が全く狙えないかというとそうでもありません。建物に費やしたお金を建物の耐用年数の分だけ振り分ける「減価償却」や、不動産所得を赤字にして給与所得などのほかの所得と差引き計上する「損益通算」などの方法によって節税できる可能性もあります。
こうした節税方法については、不動産会社のセミナーや税理士などの専門家への相談などを通じてきちんと学ぶ方がよいでしょう。本やインターネットなどで独学することもできますが、解釈が間違っていると意図したとおりの節税ができずにキャッシュフローへ大きな影響を及ぼしかねません。
「住宅ローン減税の仕組みを学んで賢く節税しよう」
住宅ローン減税制度は複雑であり、自分の住宅にどう適用されるか考えようとしても簡単には理解できません。しかし、住宅の購入が人生を左右する一大イベントであることを踏まえると、理解をなおざりにしたままではいられないでしょう。
制度の概要と計算方法についてはご説明しましたが、詳細についてはぜひ不動産会社や専門家に相談していただければと思います。少しでも多くの控除を引き出すべく、住宅の購入やリフォームなどの前からシミュレーションをじっくり行ってください。
減税・節税対策についてはセミナーでさらに詳しく解説しています。