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不動産投資における経費とは
不動産投資における経費とは、不動産の運用や管理にかかるお金、つまり収益を得るために使用した費用のことです。物件購入時のローン金利から不動産投資の学習代まで、経費にできる費用は多岐にわたります。
家事でかかった費用は、必要経費として認められません。しかし、家事と業務の両方にかかわりのある費用のうち、取引の記録などによって明確に区分けできる場合には、業務遂行のためにかかった金額に限って必要経費として認められます。
具体的には、店舗と住宅とが併用の場合の租税公課・家賃・水道光熱費などが挙げられます。経費の詳細については、下記の国税庁ホームページに記載されているので、参考にしてください。
参考:国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」
不動産投資において経費が重要な理由
不動産投資で経費が重要な理由は、支払う税金の額と関係してくるからです。経費を支出として計上し、不動産所得を圧縮できたならば、支払う税金も少なくなります。
不動産所得とは、不動産の総収入金額から必要経費を引いた金額です。不動産所得は給与所得と損益通算できるため、仮に不動産投資で赤字になった場合には、給与所得からその分が引かれます。そのため、課税対象となる所得は減り、所得税や住民税の節税につながるでしょう。
不動産投資が赤字になってしまうケースが発生してしまうのは、減価償却費用がかかわってくるケースが多いです。減価償却費用については後述しますが、実際の出費がない場合でも計上可能なため、節税効果を高められる経費といえます。
節税効果が大きい経費である減価償却費を理解しておこう
不動産投資において、特に重要なのは減価償却費です。減価償却とは、会計処理の仕方を表す言葉のことです。実際にお金を払っていなくても経費として認められ、節税効果が高いとされます。
時間の経過や使用によって、価値が減少していく資産を取得した場合は、取得費用を使用可能な年数に振り分けて計上します。この使用可能な年数が、法定耐用年数です。
住宅の法定耐用年数は、建物の構造によって異なります。
建物の構造 | 住宅の法定耐用年数 |
木造 | 22年 |
軽量鉄骨造(厚さ3mm以下) | 19年 |
軽量鉄骨造(厚さ3~4mm) | 27年 |
鉄骨造(厚さ4mm超) | 34年 |
鉄筋コンクリート・鉄筋鉄骨コンクリート造 | 47年 |
償却率もそれぞれ、建物の構造によって異なります。ちなみに土地に関しては、経年によって劣化しないと考えられるため、減価償却の対象ではありません。このほか、建物の修繕費用は内容によって減価償却費として計上できます。
減価償却を利用した節税について詳しく解説した記事もあるので、ぜひ確認してみてください。
不動産投資の『減価償却』を利用して節税できる⁉その仕組みや計算方法までプロが徹底解説
不動産投資で落とせる経費
不動産投資の経費として落とせる費用は定められています。不動産投資の経費は、投資のタイミングによって異なる部分があり、大きく分けると以下の2種類です。
・投資用不動産の購入時に落とせる経費
・投資用不動産の運用時に落とせる経費
ここでは、それぞれを表にして紹介します。
また、下記記事では不動産投資における節税の裏技を紹介しています。ぜひ合わせて確認してみてください。
> 不動産投資で節税する裏ワザ|経費に認められるものも紹介
投資用不動産の購入時に落とせる経費一覧
不動産投資にかかる税金 | 不動産投資には毎年税金がかかりますが、不動産取得税と印紙税、登録免許税は、不動産を取得した時点でかかる税金です。 |
入居者募集時にかかる費用 | 入居者募集で発生する広告宣伝費は、必要経費として計上できます。このほかにも空室対策として、家具・家電・商品券など入居者へのプレゼントを企画した場合には、これらの費用も経費として計上可能です。 |
司法書士や税理士への報酬 | 投資用物件の登記・名義変更などの手続きを司法書士に依頼する場合や、税金について税理士に相談する場合の報酬は、経費として落とせます。 |
旅費や交通費 | 投資物件の購入・交渉や契約のための不動産会社訪問、決済や面談のための金融機関訪問などが該当します。 |
情報収集や勉強のためにかかる費用 | 不動産投資をするための情報収集や勉強にかかった費用は経費として計上できます。新聞・書籍などの資料購入代・セミナー受講代・コンサルティング費用などです。ただし、不動産投資に関係ない雑誌購入代などは、費用として認められません。 |
以下の記事では、経費計上できる項目についてさらに詳しく解説しています。
マンション投資で計上できる経費とできない経費を徹底解説!
投資用不動産の運用時に落とせる経費一覧
管理費 | 管理費の具体的な内容は以下の4つです。
・エレベーター、共用部分の照明、防犯カメラ、ドアホンなどの建物に付随する設備の保守点検 |
修繕積立金 | 建物の劣化に備えて、定期的に建物管理会社に支払う修繕費用 |
賃貸管理代行手数料 | 賃貸管理会社に支払うお金 |
リフォーム金 | 入居者が退去した後の壁紙の張り替え、破損部の交換など、細かなメンテナンスに使用される費用 |
損害保険料 | 火災保険料や地震保険料など、損害保険会社に支払うお金 |
税金 | 固定資産税・都市計画税 |
借入利子 | 不動産投資ローン返済額の利息分 |
減価償却費 | 建物、建物附属設備、器具備品などの減価償却費
この場合、不動産購入費用のうち、建物部分は、減価償却の年数で割った金額を毎年計上します。減価償却期間は、法定耐用年数と築年数によって算出されます。 |
その他 | ● 管理会社との打ち合わせなど、不動産運営に関する交通費 ● 管理会社との連絡などに用いた通信費 |
不動産投資で落とせない経費とは?
次に不動産投資で落とせない経費を紹介していきます。
修繕費や各種保険料などで自宅にかかわるもの | 投資した不動産に自らが住んでいる場合、その一室は収入を得る目的のものではないため、自宅部分の修繕費は、経費として認められません。 |
不動産売却によって生じる譲渡損 | 自分の所有する不動産の売却による譲渡損は、譲渡所得とみなされるため、不動産所得の必要経費には計上できません。 |
住民税・所得税などの税金 | 不動産投資に関連する税金は、必要経費になります。ただし、住民税や所得税は、不動産の所有・非所有にかかわらず納める義務があるため、経費として計上できません。 |
個人的な生活費用 | 私生活の費用なのか、不動産投資にかかる費用なのか、明確に区別する必要があります。ファッションアイテムの購入費用、フィットネスジムの会費などは、経費として計上できません。 |
グレーゾーンの経費には要注意
中には、経費として落とせるかの判断が難しいものもあります。本章では工事費と通信費の2つを説明します。
【工事費】
工事費が経費として計上できるかどうかは、その工事の内容によります。工事の目的が修繕なら、金額によっては修繕費として計上可能です。
一方、工事によって設備がグレードアップする場合は、資本的な支出と判断され、減価償却費に分類されます。
修繕費か資本的支出かの判断に迷う場合は、営業担当者や担当の税理士に相談してみましょう。
【通信費】
通信費が経費となるかどうかの判断が難しいのは、不動産投資の業務用なのか、個人的な用事なのか、区別のしにくい部分があります。スマートフォンなど、どちらの用事でも使っている場合には、業務用と個人用で割合を決めて計上する方法があります。
この方法が、「事業按分」と呼ばれるものです。「按分」には「振り分け」という意味があり、賃貸の自宅の一室を仕事場として使っているなら、家賃の中の一定の割合を、経費として振り分けて計上できます。
不動産投資における経費の注意点
不動産投資の経費計上の際に注意すべきポイントを2つ紹介します。
まず一つ目は、不要な経費は計上しないことです。
節税できるからといって、むやみに高額な設備等を経費計上するのはやめましょう。費用対効果の薄い投資は税務署から疑われるだけでなく、投資効率を下げることになり、資産拡大を妨げる可能性があります。
用途が分かりづらい経費が多いと、税務調査の対象となりやすい傾向があります。
二つ目は、不動産関連の費用のみしか計上できないことです。
経費として計上できるのは、当たり前ですが、不動産投資で所得増につながる費用のみになります。関連性のない費用は経費として認められません。
中には、家族など身内での飲食代を経費計上している人もいるようです。「不正に計上しているのではないか」と疑惑を抱かれたら、金額の多寡にかかわらず税務調査の対象になってしまい、不正と判断されてしまうとペナルティが発生します。
飲食費用など、あいまいになりやすい項目は、領収書を個人用と業務用でしっかり分けておくなど、税務調査になってもしっかり説明できるよう、日頃より準備しておきましょう。特に金額が大きいなど怪しまれそうな経費については、用途などを細かくメモしておくのがおすすめです。
不動産所得が20万円を超える場合は確定申告で経費を申告
不動産投資をするにあたって、確定申告は必要なのかと疑問を持つ方もいるでしょう。不動産所得が20万円を超える場合は、会社員であっても確定申告が必要です。
不動産投資の所得が20万円以下は、基本的に確定申告をする必要がありません。一方、赤字の場合は損益通算で節税するためには確定申告の手続きが必須になります。
以下の記事では、不動産投資での確定申告の手順について詳しく説明しています。
> 不動産投資での確定申告を分かりやすく解説|必要書類や提出の流れも
不動産投資の経費についてよくある質問
不動産投資の経費の限度額はいくらですか?
不動産投資の経費には、限度額はありません。不動産投資の運用にかかった費用であれば、いくらでも計上できます。
ただし、あくまでも家賃収入増に寄与する費用であることがポイントです。不動産投資にかかわらない費用を経費として申告すると、税務調査の対象となる場合があります。
まとめ:不動産投資するにあたって経費の範囲を理解することが重要
不動産投資を行う際には、落とせる経費の項目や内容、節税につながる仕組みを理解しておきましょう。
本記事では、具体的な経費項目についても解説しているので、判断に迷う際にはぜひチェックリストとして活用してみてください。不動産投資での節税はあくまで副次的な効果にすぎず、資産拡大という本来の目的を見失わないよう注意してください。
これから不動産投資を始める人にとっても、経費の考え方、節税の仕組みを知っておくことは大切になります。
本記事でも解説したように、どれくらいの節税額になるかは本業収入によっても異なります。自分の収入での具体的な節税額を知りたい人は、ぜひJ.P.RETURNSの無料個別面談をご活用ください。プロのコンサルタントが個別の状況を丁寧にヒアリングして、アドバイスさせていただきます。