マンションの耐用年数とは?投資前に確認したいマンションの「寿命」

公開日:2018.07.27

最終更新日:2022.05.19

監修者:室田雄飛

執筆者:染谷 重幸

「マンションの耐用年数とは?」

現存する不動産には、(価値が低い一定のものを除く)全てに固定資産税がかかります。土地または建物の状態に応じて、固定資産を有する人には税金を課す仕組みが法律で定められていますが、納税に必要な評価は、「耐用年数」が大きく関わっているのです。

耐用年数とは

耐用年数とは、ある固定資産がどのくらいの期間にわたって利用に耐えられるかを示すもので、固定資産の減価償却期間がこれに当たります。減価償却期間とは、資産としての価値がなくなるまでの年数を示す指標です。

基本的に建物は、新築時の耐用度が最も高く、築年数と共に価値が低下していきます。しかし、一棟の建物がどのくらいの期間にわたって使用できるのかは、その建物に応じた使用方法や建築場所、周辺の環境など、条件によって変わってくるのです。

ただ、所有者が建物ごとに耐用年数を決めてしまうと、固定資産税等の課税基準が定まらず、納税に不公平が生まれてしまいます。例えば、同じ構造で価格もさほど変わらない建物があった場合、その建物が何年持つかを所有者の主観で決めてしまうと、建物の資産価値に対する評価にばらつきが生まれてしまします。そうなると、減価償却期間も一律ではなくなってしまうのです。

そこで、一定の基準によって建物の減価償却期間を決め、建物の現況ではなく基準に応じて納税をするように、法律で耐用年数を規定しています。

 

マンションの耐用年数は?

建物の耐用年数は、建築方法や使用目的に応じて異なります。

国税庁は、建物の耐用年数について、「木造・鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造」の構造ごとに、「住宅・店舗・事務所」として使用した場合の耐用年数を定めており、鉄筋鉄骨コンクリート造の住宅用マンションだと、耐用年数は47年としています。

しかし、実際に市街地や住宅街で見かける鉄骨鉄筋コンクリート造の建物は、この耐用年数よりもずっと長持ちしているものもあります。そして、建物が倒壊しない限りは、仮に100年を超える期間でも、物理的に使用することも可能です。つまり、耐用年数による減価償却のルールは、税務、会計上の取り決めでしかないということなのです。耐用年数=建物の寿命ではないことに留意しましょう。


※参考:国税庁「耐用年数(建物・建物附属設備)」
https://www.keisan.nta.go.jp/survey/publish/34255/faq/34311/faq_34354.php

 

マンションの寿命を決定する要素

マンションは、どれほどの期間にわたって現存し続けることができるか。寿命を左右する条件には、どんな要素があるのかを知っておきましょう。

建築物の専門家による調査では、「建物の寿命とは、ある建物が実際に存在した年数として『決まるもの』、建物の耐用年数とは、使用を予定する年数として『決めるもの』」だと前置きした上で、鉄筋コンクリート造共同住宅の全国平均的寿命を45.17年(2005年)と公表しています。ただし、建物自体に問題はなくても、「寿命」だと判断される要因があります。

マンションの寿命を決定する要素として、大きく以下が考えられます。
● 耐震性
● 管理体制(メンテナンス)
● 市場経済メカニズム
● 建材の質

それぞれ紹介していきます。


参考:財務省『「PRE戦略検討会」(第2回)における有識者ヒアリング』
https://www.mof.go.jp/national_property/councils/pre/shiryou/221021_05.pdf

 

・耐震性

日本では、東日本大震災、熊本・大分の大地震などの大型地震に加え、全国各地で震度5以下の地震を不定期に繰り返しています。震災が発生するたびに、建物の耐震基準は何度も見直され、改定してきました。

特にマンションなどの共同住宅では、耐震性と合わせて、免震・制震機能が建物そのものの価値に大きく関わります。しかし、どの構造であっても、建築基準法の改定基準に合致しない建造物は、必要に応じて補修、大改修、取り壊しと建て替えが必要です。

1981年の宮城県沖地震の発生をきっかけに、それまでの耐震基準を大幅に見直されました。1981年以前の基準を「旧耐震」、それ以降の基準を「新耐震」と呼び、区別しています。

2つの大きな違いとして、大地震に対する規定です。詳細の違いを見てみましょう。

 

● 旧耐震基準

旧耐震基準とは、1981年改訂以前の基準になっており、震度5程度の地震に耐えられることを基準としており、それより大きな地震については規定がありませんでした。

 

● 新耐震基準

新耐震基準は1981年改正以降の基準になっており、震度6強~7強程度の地震でも「崩壊・倒壊しない」レベルの耐震性を求めています。

大規模な地震が頻繁に発生する日本では旧耐震基準で建てられた中古マンションは選ばれにくく、売却しにくいと言われています。


※参考:国土交通省『住宅・建築物の耐震化について』
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html

 

・ 建材の質

マンションで使われているコンクリートの質も寿命の長さに関わります。

建築現場で用いられている生コンのうち、よい生コンとは具体的に「単位水量ができるだけ少なく、施工性がよいもの」のことを表しています。

建築材としてコンクリートが普及したのが、高度成長期(昭和33年~昭和48年)です。この頃は耐震基準も現在に比べると甘く、コンクリートに関する技術や知識が乏しかったため、質の悪いコンクリートが使われていることもあり、当時建てられたマンションの一部の物件では、築10年経つと雨漏りが相次いだという問題が発生しているようです。

また、給排水設備

・管理体制(メンテナンス)

マンションの管理体制も、建物の寿命に関わる大切な要素です。メンテナンスの具合や程度は、建物の物理的な強度と寿命を大きく左右します。

外壁や配管など、経年劣化が激しい部分だけでなく、構造物の骨組み部分(スケルトン:構造や強度を形成する部材)の補強や修繕をしっかりと行うと、建物寿命を延ばして良い状態を保てます。定期的にメンテナンスを行い、その時々に必要な修繕や補強を行えば、建物を長く維持することができるのです。

・市場経済メカニズム

物理的な寿命と合わせて、市場経済のメカニズムも建物の寿命に大きく関与します。主に、「マンション経営」という経済活動に付随する要素で、投資目的となるマンションのコストとリターン(収入)バランスを評価して建物の寿命を決定するという考え方です。現存しているかどうかではなく、投資によって利益を生むツールとして建物を評価した場合の寿命と捉えましょう。

建物の陳腐化、老朽化による資産価値の目減りや減価償却による建物価値の減少と、家賃収入による収益を足し引きし、マンション経営を維持することができる建物かどうかがポイントです。

 

「耐用年数を超えて賃貸できるマンションの選び方」

賃貸マンションは、新築物件に人気が集中する傾向があります。しかし、単純に新しい物件が吉というわけではありません。

マンションが建つ場所や周辺環境によって、市場価値は大きく変わります。中古でもマンションを良い状態で保つことができれば、ニーズに応じて借りたいと思う人は現れるでしょう。耐用年数にとらわれない投資物件を探すために、どんな点に注意すれば良いでしょうか。

 

立地条件

生活の拠点となる住まいを決める上で、最も大事なポイントは「生活のしやすさ」「利便性の高さ」です。築年数が経過しているマンション物件でも、その立地条件が良ければ、同じ敷地面積の他物件よりも高い家賃収入を見込めるでしょう。

交通アクセスが良いマンションは、賃貸・分譲問わず人気が高いのが通例です。一般的に駅からの距離が近ければ近いほど、賃貸物件の家賃は高くなります。

周辺施設や建物が充実しているエリアも、賃貸物件としては好条件な立地です。スーパーや病院など、日常生活の中で必要な施設が近くにある物件は特に人気です。

マンションや他の施設が多く集まるエリアでは、高層ビルやマンションが接近して建つ場所もあります。しかし、隣の建物が近いと日光をさえぎってしまい、部屋の日当たりが悪くなってしまいます。マンションのようなコンクリート造の建造物は、風通しや日当たりが悪いと湿気がこもってカビや苔が発生しやすくなるので、日当たりや風通しの具合を確認しておきましょう。

郊外地ののどかな環境に建つマンションも、近年では引き合いが多く、人気が高い物件です。しかし、海岸が近い場所にあるマンションを経営物件として選ぶには注意が必要です。コンクリート造建物の構造部分には、鉄骨や鉄筋を使用しているため、潮風や塩害が原因で腐食やサビを起こすリスクが高まります。

 

築年数

築年数は、浅ければその分耐用年数が長くなります。また経年の間に、建築技術や設備、仕様などは常に新しくなっていますので、建物の条件として新築マンション物件を選ぶのが最もおすすめです。

建築技法の進化や、部材部品の耐久性・高品質化の影響で、建造物そのものの寿命は延びています。最良の状態でマンションを購入して長く利用するという考え方から見ても、より築年数の浅い物件を選ぶのが理想的です。

築年数が古い物件の方が価格も手ごろで、気軽にマンション経営をスタートできるように感じるかもしれません。しかし、購入した後に、修理が必要な箇所や深刻な老朽化が分かれば、骨組みや構造に大きく関わる部分の大修繕、または改修をしなくてはならない場合もあります。安くマンションを購入しても、老朽化のメンテナンスや改修をすればコスト高になってしまい、最悪の場合には、建て替えを要することもあるので注意しなければなりません。

 

構造

マンションの構造には、大きく分けて、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造)と鉄筋コンクリート造(RC造)の二つがあります。構造の違いは建物の耐震性に大きく関わっており、一般的にはRC造よりもSRC造の方が耐震性は高いとされています。

建物の耐震性能基準として定められたのは、1981年の「新耐震設計法」です。1995年に起こった阪神・淡路大震災以後、建物の品質と耐震に対する法律改正が進み、1996年には「耐震改修促進法」が、2006年には改正法が施工されました。耐震と合わせて、制震や免震機能と予算のバランスで物件を選ぶようにしましょう。

また、建物構造によって、マンション専有部分のリノベーションが可能かどうかも変わります。配管がスラブに埋め込まれている直床や直天井の場合、間取りの変更や壁の穴あけに制限が出ます。二重床や二重天井は防音効果に優れている上、天井のダクト張り出しがなく、配管移動もしやすいため、需要にあわせて柔軟にデザインや間取りを変えることができるというメリットがあります。

 

メンテナンス

中古マンションを投資物件として選ぶ際は、建物室内の状態と合わせて、全体の管理体制が行き届いているかもチェックしましょう。マンションの管理組合がきちんと機能しているか、その管理費や修繕積立金の運用状況と、長期修繕計画を立案しているかどうかを確認する必要があります。

一室貸しの賃貸マンションでは、所有者が居住者とは別になるので、頻繁にマンションの状態を確認することができなくなることも想定しておきましょう。居住者は家賃を払って、その一戸を利用するのみです。管理組合の運用や機能に直接関わることがありません。マンション管理組合は、内外の維持管理を担い、必要に応じて修繕時の窓口となってもらうポジションなので、メンテナンスをしっかりと行っているかどうか確認して責任ある仕事をしているかどうかの目安にしましょう。

 

「欠陥マンションを購入しないためのポイント」

∟欠陥マンションを購入すると、耐用年数より早く大幅な修繕や立て替えが必要になるおそれがある

 

丈夫で強固な集合住宅、というイメージをマンションに抱く人は多いもの。しかし、一見して気づかないような部分のヒビ割れ(クラック)や、建物全体の歪み(地盤の沈み)など、重要な問題が潜んでいることもあります。

このような欠陥マンションを購入すると、耐用年数より早く大幅な修繕や建て替えを迫られる恐れがあります。専門家の調査を依頼することも検討しながら、自ら確認できるポイントを試して、慎重に建物の状態を見極める手間を惜しまないことが大切です。

 

住宅の性能を調べる

見た目で判断できない建物性能を知るためには、住宅性能表示の有無を確認すると良いでしょう。素人目に見てもなかなか良し悪しが分かりづらい性能を、プロの目で見て客観的に評価する制度です。(新築なら)専門の評価機関が10の分野をチェックします。

既存住宅も調査依頼をすれば実施可能で、調査後は既存住宅性能評価マークをもらいます。新築住宅の場合は、設計住宅性能評価と建設住宅性能評価の、二段階評価を行ってそれぞれのマークが付与されます。これらの評価書類を比較して、設計したとおりの性能で建てられているか確認しましょう。

評価の依頼は施工業者を通じて行いますが、物件を選ぶときにはこの評価を受けているものの方が安心感を得られます。同じ基準で評価を行うため、マンション同士の性能比較にも適しています。

 

部屋の床に玉を置いて転がらないか確認する

地味な作業のように思うかも知れませんが、素人でも手軽に確認できる重要なチェックポイントです。建物の基礎が陥没していると、マンション全体が傾いて物件の床が傾斜します。部屋全体の傾きは、パッと見ただけではなかなか体感しづらいものです。

ビー玉やピンポン玉などの丸いものを床に置いて見ましょう。転がったらその建物は傾いていることになります。できれば複数個準備して、玉の転がる向きとスピードを確認してその傾き具合を見ると良いでしょう。

 

ホームインスペクションを利用する

ホームインスペクションとは、第三者的または専門家の立場から、建物の劣化や欠陥、改修が必要な箇所などを調べて、修繕にかかるコストや行うべき時期のアドバイスを受けることを言います。多角的に判断をすることができる精通者(ホームインスペクター:住宅診断士)に診断をしてもらうことで、物件の状態や必要となるコストを購入前に客観的に判断できます。

 

「マンションを耐用年数にとらわれず長く活用するために」

住宅の購入は、仮に自分の住まいであったとしても、一生に一度経験するかしないかの大イベントのひとつ。生活を豊かにするために購入する投資用物件は、居住用の住まいと同様に、慎重かつ冷静に選ばねばなりません。

投資目的でマンションを購入し、長く運用し続けるには、何より良質な物件を手に入れることが重要です。コストを抑えながら良い状態を長くキープし、耐用年数以上の価値を感じられるようなマンション選びを心がけましょう。

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室田 雄飛

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室田 雄飛

J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長

J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。

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染谷 重幸

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染谷 重幸

大学在学中に家庭教師のアルバイトをきっかけにデイトレーダーへ転身。24歳で資産運用法人を設立する。25歳から大手投資用マンションディベロッパーと業務提携後、およそ6年間にわたり資産運用アドバイザーとして活躍。その後、大手不動産仕入れ会社で販売統括責任者として従来の投資用物件の流通システムを革新するプロジェクトを立ち上げる。国内最大規模の投資イベント「資産運用EXPO」で登壇実績があり、同業他社からも多くの見学者が立ち見の列を作った。2020年にJ.P.RETURNSに参画。オンラインでの商談やWEBセミナーを導入し、コロナ禍でも年間300件以上の顧客相談を担当している。

資格

宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)

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