不動産投資のキャッシュフローとは?計算方法や目安を解説【シミュレーション計算例あり】

公開日:2022.12.13

最終更新日:2024.01.04

監修者:室田雄飛

執筆者:染谷 重幸

不動産投資では、キャッシュフローを重視しなければなりません。キャッシュフローは不動産投資が成功したかの判断材料になるため、自分で計算できるようにしておく必要があります。

本記事では、キャッシュフローの計算方法やシミュレーション計算例を紹介します。

不動産投資のキャッシュフローとは

不動産投資で節税できる?節税できる仕組みや計算方法を解説

キャッシュフローとは、簡単に言うと「お金の流れ」のことです。不動産投資においては、「得られる家賃収入から、ローンの返済やマンションの管理費用などの諸経費が差し引かれるお金の流れ」を指します。

キャッシュフローは、「手元に現金がいくら残るか」を指す意味でも使われる言葉です。たとえば、手元に残る現金が多い場合には、「キャッシュフローに余裕がある」という表現を用います。

なお、不動産投資においては「利回り〇%」といった表現が頻繁に用いられますが、これは単純にキャッシュフローを表す数値ではありません。投資額に対してのリターンを表しているだけであり、実際の現金の動きとは異なる点に注意しましょう。

不動産投資を成功させるためには、単純な表面利回りだけでなく、キャッシュフローを重視することが大切です。

なお、キャッシュフローだけでなく、節税や物件選定のやり方など、不動産投資に関するあらゆる知識を身につけたいという場合は、J.P.ReturnsのeBookもぜひご覧ください。

 

不動産投資においてキャッシュフローが重要な4つの理由

不動産投資でキャッシュフローが重要な理由には、以下の4つがあります。

● 生活費を捻出する必要がなくなる
● 不動産投資事業の拡大が見込める
● 投資用不動産の査定価格が上がる
● 不動産投資が成功したかどうかの判断材料になる

ここでは、不動産投資でなぜキャッシュフローを重視しなければならないのか、それぞれの理由を詳しく解説します。

1.生活費を捻出する必要がなくなる

キャッシュフローに余裕があれば、毎月の利益から問題なくローンを返済できます。本来は生活に使うべきお金を、ローンの返済やマンションの管理のために捻出する必要はありません。

たとえば、副業で不動産投資を行っている場合、本来は手をつけなくていいはずの給与収入から不動産投資のためのローンを返済しなければならなくなります。

そうなると、生活の質が下がり、「不動産投資をしなければよかった」という事態を招きかねません。

キャッシュフローに余裕があれば、生活費を切り崩す必要もなく、むしろ収入がプラスになるため、精神的な負担も軽くなるでしょう。

2.不動産投資事業の拡大が見込める

キャッシュフローに余裕があると、不動産事業の拡大が見込めます。手元に現金が多く残るという成功体験があれば、それを元手に「2件目も購入しよう」という選択ができるためです。

キャッシュフローに余裕がある投資物件を1軒ずつ増やしていくことで、順調に利益を伸ばせます。手元に残る現金も物件が増える毎に増えていくので、規模の大きな投資も可能になるでしょう。

キャッシュフローを重視していけば、副業で行っていた不動産投資を本業にすることも夢ではありません。

3.投資用不動産の査定価格が上がる

キャッシュフローに余裕がある物件は、投資用不動産としての査定額が高くなります。物件を売却しやすくなるため、「管理が面倒」「十分な貯金ができたのでリタイアしたい」などの理由で不動産投資をやめようと考えたときにも、容易に手放すことができるでしょう。

ここで重要になるのが、「キャッシュフローに余裕がある状態を維持し続ける」ということです。購入時にはキャッシュフローに余裕があった物件も、設備の劣化等を理由に入居希望者が減り、空室が目立つようになると、キャッシュフローがマイナスになってしまう可能性もあります。

将来的な売却を考えているのであれば、家賃収入を下げないように日頃からキャッシュフローを意識した物件管理を徹底する必要があるでしょう。

4.不動産投資が成功したかどうかの判断材料になる

不動産投資におけるキャッシュフローは、不動産投資が成功したかどうかの判断材料の一つです。不動産投資においては、物件購入費用と減価償却費を経費として計上します。そのため、物件を購入した直後は、帳簿上では赤字続きになることが多いです。

しかし、家賃収入によって毎月のキャッシュフローがプラスであれば、不動産投資は成功したと考えて良いでしょう。

空室が少なく、安定した家賃収入がある物件であっても、毎月のキャッシュフローがマイナスの状態が続くのであれば、不動産投資としては失敗です。反対に、多少空室があっても、毎月のキャッシュフローがプラスの状態が続くなら、不動産投資は成功したと言えるでしょう。

 

不動産投資におけるキャッシュフローの計算方法

不動産投資におけるキャッシュフローは、以下の計算式で計算します。

● 税引き後利益 + 減価償却費 ー 返済元金 = キャッシュフロー(手元に残る現金)

ここでポイントとなるのは、以下の3点です。

● 税引き後利益は税金などすべての費用を差し引いて計算する
● 減価償却費は建物の築年数に応じた数字を利用して計算する
● 返済元金は月々のローン返済額から利息を差し引いて計算する

それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

税引き後利益は税金などすべての費用を差し引いて計算する

税引き後利益とは、不動産投資によって得られる利益から、支払う必要がある税金の額を差し引いた額のことです。不動産投資によって利益が発生した場合には、所得税と住民税の支払い義務が生じます。

ただし、不動産所得にかかる税金の額は、利益の額(所得金額)に応じて異なります。課せられる所得税の税率は5〜33%、住民税の税率は一律で10%です。

参考:国税庁「所得税の税率

不動産投資における経費には、税金以外にも以下のようなものがあります。

● 住宅ローンの金利
● 火災保険料・地震保険料
● 管理費用
● 仲介手数料
● 広告宣伝費用
● 修繕費用
● 不動産会社・管理会社との打ち合わせにかかる費用 など

税引き後利益を計算する際には、家賃収入からあらかじめ上記の経費を差し引いておきましょう。

減価償却費は建物の築年数に応じた数字を利用して計算する

不動産投資では、物件の購入にかかった費用を減価償却して経費計上します。減価償却とは、不動産や設備などの購入金額を、法定耐用年数に応じて配分し、経費として計上することです。

減価償却費を計上するうえで知っておくべきなのが、「法定耐用年数」です。建物における法定耐用年数は、構造や用途によって異なります。たとえば、不動産投資において購入されるケースが多い「鉄骨鉄筋コンクリート造・住居用」のマンションの場合、法定耐用年数は47年です。つまり、新築の物件を購入した場合は、47年にわたって減価償却費を経費計上することになります。

参考:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表

中古物件を購入した場合には、法定耐用年数は築年数に応じて計算する必要があります。中古物件における耐用年数を求める計算式は、以下の通りです。

● 法定耐用年数の全部を経過した資産:法定耐用年数 ✕ 20%
● 法定耐用年数の一部を経過した資産:(法定耐用年数 ー 経過した年数)✕ 20%

参考:国税庁「中古資産の耐用年数

また、減価償却費の計算式は、以下の通りです。

【定率法の場合】

● 減価償却費 = 固定資産の未償却残高 ✕ 定率法の償却率

【定額法の場合】

● 減価償却費 = 固定資産の取得価額 ✕ 定額法の償却率

それぞれの償却率は、国税庁のHPに記載されています。

参考:国税庁「減価償却資産の償却率表

返済元金は月々のローン返済額から利息を差し引いて計算する

返済元金とは、月々のローン返済額から利息を差し引いた金額のことで、金融機関から借り入れた金額を指します。利息については、税引き後利益に含まれています。

月々のローン返済額から返済元金を求める計算式は、住宅ローンの返済方法によって異なるため、確認が必要です。

【元利均等返済の場合】

● 利息返済額 = 直前の月末時点でのローン残高 ✕ 月利
● 元金返済額 = 毎月の返済額 ー 利息額

【元金均等返済の場合】

● 元金返済額=借入金額 / 返済回数

元利均等返済の場合、元金返済額は月によって異なります。一方、元金均等返済の場合は毎月変わらないため、比較的容易に返済元金を求めることが可能です。

 

不動産投資におけるキャッシュフローのシミュレーション計算例

ここで、不動産投資におけるキャッシュフローをシュミレーションしてみましょう。

【3,000万円の新築マンションを購入したケース】

● 構造:鉄骨鉄筋造
● 用途:住宅用
● 家賃:11万円/月
● 頭金:100万円
● 金融機関から借り入れた金額:2,900万円
● 返済期間:35年(年利1.7%)
● 月々返済額:約9.2万円 (元金6.9万円、金利2.3万円)
● 年間諸費:15万円(固定資産税等含む)

年間の家賃収入は、

● 11万 ✕ 12か月 = 132万円

となります。つまり、この物件の単純な利回りは、

● 132万 / 3,000万 × 100 = 4.4%

です。

次にキャッシュフローの計算に移りましょう。計算式は、以下の通りです。

● 税引き後利益 + 減価償却費 ー 返済元金 = キャッシュフロー(手元に残る現金)

まずは、税引き後利益を求めます。家賃収入は年間132万で経費が15万円かかっているため、税引き前利益(不動産所得)は117万円です。この場合、所得税5%、住民税10%の併せて15%が税金として差し引かれます。そのため、税引き後利益は99.45万円です。

次に、減価償却費を求めましょう。今回は、毎年計上する減価償却費が一定となる「定額法」を用いて計算します。

● 減価償却費=3,000万円×0.022(耐用年数47年の償却率)=66万円

また、返済元金は1か月あたり6.9万円、1年間で82.6万円です。つまり、今回のケースにおけるキャッシュフローは、以下のように計算できます。

● 99.45万円(税引き後利益)+66万円(減価償却費)ー82.6万円(返済元金)=82.85万円

参考:国税庁「減価償却資産の償却率表

 

不動産投資におけるキャッシュフローの増やし方

不動産投資のキャッシュフローはなぜ重要?計算方法や改善策も解説

不動産投資を成功させるためには、キャッシュフローを増やすことが大切です。キャッシュフローを増やすための方法としては、以下のようなものがあります。

● ローン利用時には低金利の金融商品を選択する
● ローンの繰り上げ返済をする
● 中古の投資用不動産を購入する
● 頭金を多くして借入金額を極力少なくする
● 賃貸管理の質を重視し家賃を維持する

それぞれの方法について、詳しく解説しましょう。

 

ローン利用時には低金利の金融商品を選択する

住宅ローンを利用する際には、できる限り低金利の金融商品を選択しましょう。同じ借入金額でも、金利の差によって総支払額に大きな差が出ます。

たとえば、同じ3,000万円を返済期間35年間で借り入れた場合による総支払額の差は、以下の通りです。

(いずれも元利均等返済)

金利 毎月の支払額 総支払額
0.6% 7万9,208円 3,326万7,640円
1% 8万4,685円 3,556万7,998円

借入金額は同じでも、金利が0.5%上がるだけで、総支払額に230万円以上の差が出てしまいます。住宅ローンにおいて、低金利の商品を選ぶことがいかに大切かわかります。

ローンの繰り上げ返済をする

住宅ローンを繰り上げ返済することで、将来支払うはずだった金利分の負担が軽減されます。家賃収入を継続的に得ていて、現金が余っている状態であれば、問題ないでしょう。ただし、手元の資金がなくなってしまう点は、デメリットです。

また、ローンの繰り上げ返済には、1回ごとに所定の手数料がかかります。複数回にわたって繰り上げ返済をすると、手数料の金額負担が大きくなるため、繰り上げ返済の回数は少ないほうが良いでしょう。

中古の投資用不動産を購入する

中古の投資用不動産は、新築物件と比較して利回りが良いと言われています。そもそも価格が低く、ローンの借入金額も少なくできる点がメリットです。

たとえば、すでに入居者がいる「オーナーチェンジ物件」であれば、新たに募集活動を行うための広告宣伝費用や、賃貸契約を締結するための諸費用、不動産仲介会社に支払うべき仲介手数料なども削減できるでしょう。

なお、オーナーチェンジ物件とは、入居者が居住している状態のままで売買される物件のことです。買主としては、新たに入居者を募集しなくて良いというメリットがあります。

さらに、実際の物件を見た上で購入の可否を判断できるため、失敗しにくいのもメリットです。ただし、築年数によっては、すぐに設備の修繕やリフォームが必要になるケースもあり、物件の見極めには慎重な対応が求められます。

頭金を多くして借入金額を極力少なくする

キャッシュフローを増やしたいのであれば、ローンの支払額を少なくするのがポイントです。そのためには、頭金を多く出し、借入金額を極力少なくする必要があります。頭金を多く出すことで、毎月の支払額が減るのはもちろん、総支払額にも大きな差が出てきます。

同じ3,000万円の投資用物件を購入した場合、500万円の頭金を出した場合と頭金なしの場合でどのくらいの差が生じるのか確認しましょう。

【条件】

● 金利:年1%
● 返済方法:元利均等返済
● 返済期間:35年間

【頭金を500万円出した場合】

● ローン借入額:2,500万円
● 毎月の支払額:7万571円
● ローン総支払額:2,963万9,998円
● 総支払額:3,463万9,998円

【頭金なしの場合】

● ローン借入額:3,000万円
● 毎月の支払額:8万4,685円
● ローン総支払額( =総支払額):3,556万7,998円

差額:3,556万7,998円 ー 3,463万9,998円 = 92万8,000円

総額で100万円近い差額が出ただけでなく、毎月の支払額に1.5万円程度の差が出ていることがわかります。

賃貸管理の質を重視し家賃を維持する

毎月のキャッシュフローを安定させるためには、空室期間を作らず、家賃金額を下げないことが大切です。家賃を維持するためには、賃貸管理の質を重視しなければなりません。賃貸管理の質を高めたいのであれば、自分で管理するのではなく、プロの管理会社に賃貸経営や物件管理を任せることをおすすめします。

とくに、副業で不動産投資を行っている場合、自分で24時間・365日体制で物件を管理をするのは現実的ではありません。その一方で、管理会社の選び方に失敗すると、賃貸管理の質が落ち、空室リスクが高まってしまいます。

賃貸管理を任せるなら、管理物件数や取引実績が豊富な、信頼できる管理会社を選びましょう。賃貸管理の質を高められれば、必然的に家賃も維持され、空室リスクも低くなります。

 

不動産投資を行うときにはキャッシュフローを重視しよう

不動産投資は減価償却が重要!意味や計算方法を徹底解説

不動産投資を行う際には、キャッシュフローを重視することが大切です。そのため、投資用物件を見極める際には、単純な表面利回りだけでなく、毎月の家賃収入がどのくらい見込めて、ローンの支払額がいくらになるのか、手元に現金がいくら残るのかを意識する必要があるでしょう。

しかし、具体的にどのようなポイントをチェックすべきかがわからず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。不動産投資に失敗したくないなら、専門家の意見を参考にしてみることをおすすめします。

キャッシュフローの具体的な流れについても、物件を購入する前にシュミレーションしておくと安心でしょう。J.P.Returnsでは、不動産投資の専門家による無料の個別相談を行っております。実際の物件資料をご覧いただくことも可能なので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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室田 雄飛

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室田 雄飛

J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長

J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。

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染谷 重幸

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染谷 重幸

大学在学中に家庭教師のアルバイトをきっかけにデイトレーダーへ転身。24歳で資産運用法人を設立する。25歳から大手投資用マンションディベロッパーと業務提携後、およそ6年間にわたり資産運用アドバイザーとして活躍。その後、大手不動産仕入れ会社で販売統括責任者として従来の投資用物件の流通システムを革新するプロジェクトを立ち上げる。国内最大規模の投資イベント「資産運用EXPO」で登壇実績があり、同業他社からも多くの見学者が立ち見の列を作った。2020年にJ.P.RETURNSに参画。オンラインでの商談やWEBセミナーを導入し、コロナ禍でも年間300件以上の顧客相談を担当している。

資格

宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)

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