具体的な数値で見る節税シミュレーション
章のゴール:シミュレーション数値を確認
それでは、早速不動産投資でどれくらい節税できるかをシミュレーションしてみましょう。今回は以下のパターンで計算してみます。
・【所得税・住民税】不動産所得のみの場合の節税効果
・【所得税・住民税】給与所得もある場合の節税効果(年収別)
・【相続税】相続する際の節税効果
次の章から順番に解説していきます。
【所得税・住民税】不動産投資をシミュレーション
不動産投資を行えば所得税・住民税の節税が可能です。条件ごとにどの程度節税になるのかを見ていきましょう。
まず、不動産所得のみの場合の初年度と2年目での節税金額です。
不動産所得のみの場合
不動産投資で不動産収入の他に収入がなく、不動産所得のみの場合をシミュレーションしてみます。設定する条件は以下の通りです。
・物件価格:8,000万円(土地:5,000万円、建物:3,000万円)
・家賃収入:月額10万円
・耐用年数:33年
・ローン金利:2%
計上できる経費が異なる初年度と2年目のシミュレーションを紹介します。
初年度
シミュレーション条件を基にして計算した場合、不動産所得のみで不動産投資を行った初年度は、所得税・住民税は課税されません。
不動産を取得した初年度は、以下のような費用がかかります。
不動産取得税は固定資産税評価額×4%で、建物の場合は時価の5〜6割程度が目安です。
ここでは、建物の固定資産税を3,000万円×60%=1,800万円とします。
これにより、不動産取得税は1,800万円×4%=72万円です。
減価償却費は、以下の計算で算出します。
建物価格3,000万円× 0.9×(耐用年数33年の償却率0.031)=83万円
年間利息は、物件価格8,000万円×金利2%=160万円となります。
以上の金額を計算すると、以下のようになります。
272万円の赤字になり、不動産収入のみの場合は所得税・住民税がかかりません。
2年目
シミュレーション条件を基にして計算した場合、1年目よりも節税額は減るものの、引き続き節税できます。
2年目は、物件取得にかかる費用と不動産取得税の支出はありません。事例では約122万円の経費がなくなり、減価償却費も若干下がります。269万円の経費となり、家賃収入が順調に入ってくる場合でも149万円の赤字です。
2年目以降は経費として支払う費用は少なくなるものの、減価償却費を計上できます。家賃収入などがあっても、所得税・住民税の負担は軽くなるでしょう。
給与所得もある場合
給与所得がある場合でも、所得税・住民税を節税できます。
給与所得もある場合、経費を差し引いて赤字となった不動産所得と合算すれば節税が可能です。ここでは、年収別に不動産投資の節税がどのくらいできるかをシミュレーションしてみましょう。
給与所得は年収から、収入に応じて定められている給与所得控除額を差し引いて算出します。
給与等の収入金額 | 控除額 |
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円〜1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円〜3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円〜6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円〜8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
出典:国税庁「給与所得控除」
所得税は、給与所得から基礎控除と社会保険料控除等を差し引いた金額に税率を乗じて計算します。
不動産投資をした場合の計算では、50万円の赤字が出た場合を想定してシミュレーションします。各年収の節税効果を見ていきましょう。
年収400万円の場合
不動産収入から経費を差し引いて70万円以上の赤字が出れば、所得税・住民税は課税されません。
年収400万円の控除額は400万円×20%+440,000円=124万円です。
400万円−124万円=176万円が給与所得となります。
年収400万円の人の社会保険料控除は約58万であり、基礎控除の48万円との合計106万円を176万円から差し引いて70万円が課税所得です。
なお、課税所得70万円の所得税率は5%であり、3万5,000円の所得税がかかります。また、住民税は70万円×10%+5,000円=7万5,000円です。
年収800万円の場合
不動産所得で50万円の赤字があれば、15万円の節税になります。
年収800万円の控除額は800万円×10%+1,100,000円=190万円です。
800万円−190万円=610万円が給与所得となります。
年収800万円の人の社会保険料控除は約112万円です。基礎控除の48万円との合計160万円を給与所得610万円から差し引き、450万円が課税所得になります。
(不動産投資をしない場合)
450万円の所得税率は20%(42万7,500円を控除)であり、450万円×20%−427,500円で、47万2,500円の所得税がかかります。
また、住民税は450万円×10%+5,000円=45万5,000円です。
(不動産所得で50万円の赤字がある場合)
課税所得は400万円になり、所得税率は20%(427,500円を控除)で、「400万円×20%−427,500円=37万2,500円」の所得税となります。住民税は400万円×10%+5,000円=40万5,000円です。
不動産投資により、15万円の節税が可能です。
年収1,000万円の場合
不動産所得で50万円の赤字があれば、15万円の節税になります。
年収1,000万円の控除額は上限の195万円です。1,000万円−195万円=805万円が給与所得となります。
年収1000万円の人の社会保険料控除は約130万円です。基礎控除の48万円との合計178万円を給与所得805万円から差し引き、627万円が課税所得になります。
(不動産投資をしない場合)
627万円の所得税率は20%(42万7,500円を控除)です。627万円×20%−427,500円で、82万6,500円の所得税がかかります。
また、住民税は627万円×10%+5,000円=63万2,000円です。
(不動産所得で50万円の赤字がある場合)
課税所得は577万円になり、所得税率は20%(427,500円を控除)で、「577万円×20%−427,500円=72万6,500円」の所得税となります。住民税は577万円×10%+5,000円=58万2,000円です。
不動産投資により、15万円の節税ができます。
年収1,500万円の場合
不動産所得で50万円の赤字があれば、21万5,000円の節税になります。
年収1,500万円の控除額は上限の195万円です。1,500万円−195万円=1,305万円が給与所得となります。
年収1,500万円の人の社会保険料控除は約190万円です。基礎控除の48万円との合計238万円を給与所得1,305万円から差し引き、1,067万円が課税所得になります。
(不動産投資をしない場合)
1,067万円の所得税率は33%(153万6,000円を控除)です。1,067万円×33%−1,536,000円で、198万5,100円の所得税がかかります。
また、住民税は1,067万円×10%+5,000円=107万2,000円です。
(不動産所得で50万円の赤字がある場合)
課税所得は1,017万円になり、「1,067万円×33%−1,536,000円=182万100円」の所得税となります。住民税は1,017万円×10%+5,000円=102万2,000円です。
不動産投資により、21万5,000円の節税ができます。
年収1,800万円の場合
不動産所得で50万円の赤字があれば、21万5,000円の節税になります。
年収1,800万円の控除額は上限の195万円です。1,800万円−195万円=1,605万円が給与所得となります。
年収1,800万円の人の社会保険料控除は約200万円です。基礎控除の48万円との合計248万円を給与所得1,605万円から差し引き、1,357万円が課税所得になります。
(不動産投資をしない場合)
1,357万円の所得税率は33%(153万6,000円を控除)です。1,357万円×33%−1,536,000円で、294万2,100円の所得税がかかります。
また、住民税は1,357万円×10%+5,000円=136万2,000円です。
(不動産所得で50万円の赤字がある場合)
課税所得は1,307万円になり、「1,307万円×33%−1,536,000円=277万7,100円」の所得税となります。住民税は1,307万円×10%+5,000円=131万2,000円です。
不動産投資により、21万5,000円の節税ができます。
【相続税】不動産投資をシミュレーション
不動産投資では相続税の節税もできます。
節税できるのは、現金よりも不動産の方が相続税の評価額が下がりやすいからです。不動産投資を始めると所得税・住民税の節税ができるだけでなく、将来の相続税対策にもなります。
ここでは、現金で相続する場合との比較をシミュレーションするとともに、生命保険など他の相続対策と比較してみましょう。
以下の記事では、不動産投資が相続税の節税につながる理由を詳しく解説しています。あわせて読んでみてください。
>不動産投資で相続税対策になる?節税ができる仕組みや注意点を解説
現金で相続する場合と比較
相続人1名で2億円を相続する事例を設定し、現金で相続した場合と不動産投資した場合を比較すると480万円の節税につながります。
(現金を相続した場合)
課税される相続財産は、次のように計算します。
2億円−基礎控除額(3,000万円+600万円×1名)=1億6,400万円
1億6,400万円の相続税率は40%で、控除額は1,700万円です。
1億6,400万円×40%−1,700万円=4,860万円
現金を相続した場合、相続税は4,860万円となります。
(2億円のうち、3,000万円を不動産投資した場合)
相続財産が建物の場合、相続税は固定資産税評価額で計算が可能です。固定資産税評価額は建物の建築費の6割が目安とされており、この事例では「3,000万円×0.6=1,800万円」を相続税の対象とします。
不動産投資以外の相続財産1億7,000万円+1,800万円=1億8,800万円が相続税の対象となり、これを基に計算します。
1億8,800万円−基礎控除額(3,000万円+600万円×1名)=1億5,200万円
課税の対象となる金額は、1億5,200万円です。
1億5,200万円×40%-1,700万円=4,380万円
現金で相続する場合の相続税4,860万円と比較して、480万円の節税ができます。
不動産投資で節税効果を最大化する方法
不動産投資で節税効果を最大化するには、いくつかの重要なポイントがあります。まず、節税効果を高めるための基本的な方法として、経費の最大限の活用です。具体的には、管理費、修繕費、保険料などの経常的な支出を適切に計上することで、課税対象となる所得を減らせます。他にも、不動産管理会社との打ち合わせの費用や、交通費なども経費となるので、忘れずに計上しましょう。
特に注目すべきは減価償却費の活用です。減価償却費は実際には現金支出を伴わないものの、税法上は経費として認められるため、大きな節税効果が期待できます。建物の耐用年数に応じて毎年一定額を経費として計上できるため、長期的な節税計画を立てる上で重要な要素となります。
減価償却費を多く計上する手段の一つとして、木造の中古物件を活用も、有効な方法の一つです。木造建築は鉄筋コンクリート造に比べて耐用年数が短いため、より早いペースで減価償却を行えます。さらに、中古物件であれば取得価格も比較的低く抑えられるため、初期投資を抑えつつ高い節税効果を得られる可能性があります。
ただし、木造中古物件の選定は慎重に行いましょう。築年数や状態によっては高い修繕費が発生する可能性もあり、物件の状態や将来的な維持管理コストを十分に検討してからの判断が大切です。しっかりと物件を見定められれば、減価償却による節税効果と安定した賃料収入の両立が可能となります。
節税に関する注意点と遵守すべきルール
不動産投資による節税を効果的に行うには、最新の税制や法規制を理解し、それらを遵守することが不可欠です。近年、不動産投資に関連する税制は頻繁に改正されており、これらの変更への適切な対応が、投資家にとって重要な課題となっています。
これらの税制改正に対応するためには、まず最新の情報を常に把握する必要があります。税理士や不動産の専門家と定期的に相談するなどして、自身の投資戦略に影響を与える可能性のある改正について確認しましょう。
また、節税対策を行う際は、合法的な範囲内にとどめましょう。例えば、減価償却費の計上に関しては、適切な耐用年数を用いて計算することが求められます。不当に短い耐用年数を用いて減価償却費を過大に計上すると、税務調査の対象となってしまします。
さらに、経費の計上についても注意が必要です。不動産投資に関連する経費は計上できますが、個人的な支出を事業経費としての計上は認められません。すべての経費について、事業との関連性を明確に示せるよう、領収書の保管や取引の記録を丁寧に行っておくのが重要です。
一方で、忙しい会社員の方などが、税制の変更をリアルタイムに追い続けたり、経費の専門的な分野を理解したりするのは難しいでしょう。そのため、不動産投資会社にサポートしてもらうのが現実的です。信頼できる会社であれば、購入後もサポートが続くため、何か変更があれば対応方法等を含め、丁寧に教えてもらえます。
まとめ:不動産投資で効果的に節税をして資産形成をしよう
不動産投資は、効果的な節税と資産形成を同時に実現できる優れた投資手法です。減価償却費の活用や、木造中古物件の選択により、所得税、住民税の軽減が可能です。また、不動産評価額は現金よりも低くなる特徴ゆえに相続税対策としても効果があります。
ただし、最新の税制改正にも注意が必要です。適切な範囲内で節税を行い、法令遵守を徹底してください。
物件選びに迷った場合は、プロの無料相談を活用しましょう。J.P.RETURNSでは、Webでもプロの担当者と無料相談が可能です。自分自身の状況に合った物件を紹介致します。専門家のアドバイスを受けることで、自身の状況に合った最適な投資戦略を立てられるのでぜひご活用ください。
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