年収1200万円の節税対策。賢く「手取り」を最大化する次の次元の資産形成とは?

【税金対策】年収1200万円の場合の手取りや節税方法を解説

公開日:2023.04.05

最終更新日:2024.06.28

監修者:室田雄飛

執筆者:染谷 重幸

【税金対策】年収1200万円の場合の手取りや節税方法を解説

年収1200万円、到達おめでとうございます。長年のキャリアの積み重ね、専門性の向上、そして組織からの評価が形になった瞬間です。

しかし、このステージに立った多くの方が、共通の「戦略的な課題」に直面しています。

「昇給したにもかかわらず、手取り額の増加率が鈍化している…」
「年収800万円の頃と比べて、税・社会保険料の負担感が増している気がする…」
「このままでは、努力で勝ち取った高年収を最大限に活かせないのではないか…」

この課題意識は、まさに年収1200万円層が直面する「税率の壁」が原因です。

所得税率が23%ゾーンではあるもののもう少しで33%ゾーンへと本格的に突入間近の水準です。もう少し年収が増えて、課税所得が900万円を超えると、住民税と合わせれば「限界税率が43%に迫る」という、さらなる戦略的な対策が求められる水準に足を踏み入れることになります。それが、年収1200万円という水準の現実です。

そして、ここで多くの方が「ふるさと納税」「iDeCo」「新NISA」といった定番の節税対策に取り組み始めます。これらは資産形成の土台として確かに重要ですが、これらの対策をすべて実行しても、あなたの「手取りを最大化する」という目標は、根本的には達成されません。

なぜなら、簡単な節税対策だけではもう不十分な水準なので、さらに本格的な節税対策が求められます。年収1200万円というステージに到達したあなたには、もう一段上のレベル——「他人資本を活用する」という新しい次元の資産形成、すなわち「レバレッジ戦略」が必要なのです。

本記事では、まず検索されている「年収1200万円の節税対策5選」を提示します。ふるさと納税、iDeCo、新NISA、住宅ローン控除、そして不動産投資。これらの概要と効果を、きちんと解説します。

しかし、本記事はそこで終わりません。

その「5選」を、資産形成の「3つのステージ」に分けて、あなたが今、本当に進むべき「次のステージ」を明確化します。

・ステージ1:「控除」の最適化(守りの資産形成)
・ステージ2:「自己資本」の運用(攻めの資産形成)
・ステージ3:「他人資本」の活用(レバレッジの資産形成)

そして、なぜ年収1200万円のあなたが、「ステージ1・2」の限界を超えて「ステージ3」へと進むべきなのか。その理由を、税務上の数字とロジックで詳しく解説していきます。

この記事を読み終えるとき、あなたは次のことを明確に理解しているはずです。

・なぜ自分の「手取り」の伸びが鈍化しているのか(その税制上の正体)
・今まで取り組んできた節税対策が、なぜ「次のステップ」を必要とするのか
・そして、年収1200万円という「信用力」を持つ自分が、次に進むべき「戦略の分岐点」はどこなのか

それでは、年収1200万円の「税率の壁」を乗り越え、あなたを次のステージへと導く方法を自分自身で確かめてみましょう。

目次

 なぜ年収1200万は「手取りが伸び悩む」のか?

まず、あなたが感じている「手取りの停滞感」の正体を、税務上のメカニズムから解明しましょう。この「なぜ?」を理解するのが、次に進むべき道を見つける第一歩です。

税率の壁:「増収分」にかかる限界税率の上昇が鍵

年収1200万円という水準は、税務上、重要な「分岐点」に位置しています。それは、昇給によって増えた収入にかかる「限界税率」の上昇です。

日本の所得税は累進課税制度を採用しており、課税所得が高くなるほど税率が上がります。課税所得の税率区分は次の通りです。

課税所得 所得税率
195万円以下 5%
195万円超~330万円以下 10%
330万円超~695万円以下 20%
695万円超~900万円以下 23%
900万円超~1,800万円以下 33%
1,800万円超~4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

 年収1200万円の方の課税所得は、各種控除(基礎控除、給与所得控除、社会保険料控除など)を差し引いた結果、900万円を下回ります。この場合、あなたの所得税の最高税率は23%です(住民税10%と合わせても限界税率は33%)。

しかし、ここで重要となるのが、年収が上がった「増収分」に焦点を当てることです。

年収800万円や1000万円の頃、あなたの所得はまだ低い税率ゾーンにも分散していました。ところが、年収が1200万円に昇給し、増えた所得はすべて課税所得が高い層、つまり23%の税率ゾーンに上乗せされて課税されます。さらに住民税の10%が加わるため、昇給額に対する限界税率は33%です。

年収1000万円の頃から1200万円に昇給したとしても、この33%という限界税率に加えて、年収上昇に伴う社会保険料の負担増も発生します。

結果として、「増収分の3分の1以上が税金・社会保険料で消える」という構造になるため、年収800万円の頃のような手取りの伸びを実感しにくくなるのです。この限界税率の上昇と、高止まりする社会保険料が、あなたが感じている「昇給したのに手取りが伸びない」という停滞感の正体なのです。

【シミュレーション】年収1000万→1200万円。額面200万UPで、手取りはいくら増える?

では、具体的な数字でシミュレーションしてみましょう。(あくまで一例なので、イメージとしてとらえてください。)

◆前提条件
・東京都在住
・会社員(給与所得のみ)
・独身または配偶者の扶養なし
・社会保険料は年収の約14.5%で計算
・その他の控除は基礎控除と給与所得控除のみ

◆年収1000万円の場合
・給与収入:1,000万円
・給与所得控除:195万円
・社会保険料控除:145万円
・基礎控除:48万円
・課税所得:約612万円
・所得税:約77万円
・住民税:約61万円
手取り額】:約717万円

◆年収1200万円の場合
・給与収入:1,200万円
・給与所得控除:195万円
・社会保険料控除:174万円
・基礎控除:48万円
・課税所得:約783万円
・所得税:約116万円
・住民税:約78万円
手取り額】:約832万円

結果の分析

額面の増加:200万円(20%アップ)/手取りの増加:115万円(12%アップ)/税金・社会保険料の増加:85万円

つまり、200万円昇給しても、実際に使えるお金(手取り)は115万円しか増えていません。増えた分の42.5%が税金と社会保険料で消えているのです。

これが、あなたが感じている「割に合わなさ」の正体です。

さらに言えば、年収1200万円から1400万円へと昇給した場合、この「税金で消える割合」はさらに高くなります。なぜなら、増えた分のほとんどが23%(住民税込み33%)ゾーンで課税されるからです。

「頑張れば頑張るほど、税金で持っていかれる」というジレンマ

この税率構造が生み出すのが、年収1200万円のハイクラス層が直面するジレンマです。

・昇進や転職で年収を上げても、手取りの伸び率は鈍化する
・残業や副業で収入を増やしても、半分近くが税金で消える
・「頑張る意味があるのか?」というモチベーション低下

この「停滞感」こそが、年収1200万円という水準に特有の悩みなのです。

そして、多くの方がこの悩みを解決するために、「節税対策」を探し始めます。ふるさと納税、iDeCo、新NISA…。しかし、ここで重要な事実をお伝えしなければなりません。

これらの「定番の節税対策」だけでは、あなたの「手取り停滞期」を根本的に打破できません。

その理由を理解するために、まずは「年収1200万円の節税対策5選」を見ていきましょう。そして、その後で「なぜそれだけでは足りないのか」を、資産形成の「3つのステージ」というフレームワークで解き明かします。

年収1200万円の税金対策「5つの選択肢」

ここでは、年収1200万円の方が検討すべき代表的な税金対策を、5つ紹介します。まずはそれぞれの概要とメリット・デメリットを見ていきましょう。

選択肢①:ふるさと納税(控除の最適化)

ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄付を行うことで、寄付額から2,000円を引いた金額が、所得税と住民税から控除される制度です。実質2,000円の負担で、返礼品を受け取れます。

年収1200万円の場合の控除上限額

年収1200万円(独身または共働き)の場合、ふるさと納税の控除上限額は約24万円です。つまり、24万円分の寄付を行えば、実質2,000円の負担で、約7万円相当(返礼率30%の場合)の返礼品を受け取れます。

◆メリット
・手続きが簡単(ワンストップ特例制度を使えば確定申告不要)
・返礼品という「目に見える得」がある
・リスクゼロ

◆デメリット
・「節税」ではなく「税金の前払い+返礼品」という構造
・手取りそのものが増えるわけではない
・年収1200万円の「高い税率」を下げる効果はない

ふるさと納税はやるべき施策ではあるものの、「節税」というより「お得な買い物」に近く、あなたの「手取り停滞感」を根本的に解消するものではありません。

選択肢②:iDeCo(控除+自己運用)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、毎月一定額を積み立て、自分で運用し、60歳以降に受け取る私的年金制度です。掛金が全額所得控除となり、運用益も非課税。受取時にも税制優遇があります。

年収1200万円の場合の節税効果

会社員の場合、iDeCoの拠出上限は月額2.3万円(年間27.6万円)、または月額1.2万円(年間14.4万円/企業年金ありの場合)です。

仮に月額2.3万円を拠出した場合:
・年間拠出額:27.6万円
・課税所得の減少:27.6万円
・所得税の軽減:27.6万円 × 23% = 約6.3万円
・住民税の軽減:27.6万円 × 10% = 約2.8万円
年間節税額】:約9.1万円

◆メリット
・確実な節税効果(年間約9万円)
・運用益も非課税
・老後資金の形成と節税が同時にできる

◆デメリット
・60歳まで引き出せない(流動性ゼロ)
・拠出上限が低い(年間27.6万円)
・年収1200万円の「手取り停滞感」を打破するには、スケールが小さい

iDeCoは優れた制度であり、手元のキャッシュがあるなら検討すべき対策です。しかし、年間10万円にも満たない節税では、あなたが感じている「昇給200万円のうち85万円が税金で消える」という喪失感を解消するまでには至らないでしょう。

選択肢③:新NISA(自己資本の運用)

2024年からスタートした新NISA制度は、年間最大360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、生涯投資枠1,800万円まで、運用益が非課税となる制度です。

年収1200万円の場合の節税効果

新NISAは、運用益が非課税になる制度であり、所得税や住民税を直接減らす「節税効果」はありません。(年収による恩恵の差はないです。)

仮に年間360万円を投資し、年利5%で運用できた場合、年間18万円の運用益が発生します。通常、この運用益には20.315%の税金がかかりますが、NISAでは非課税。つまり、約3.7万円の税金が免除されます。

◆メリット
・運用益が非課税(長期的には大きな差になる)
・投資枠が大きい(生涯1,800万円)
・いつでも売却・引き出しが可能(流動性あり)

◆デメリット
・「節税」ではなく「運用益の非課税」
・今年の所得税・住民税を減らす効果はゼロ
・元本割れのリスクがある

新NISAは、資産形成において重要な施策です。しかし、あなたが今年、来年と直面する「高い税率」を下げる効果はありません。あくまで「将来の資産を増やす」ための施策であり、「今の手取りを増やす」施策ではないのです。

選択肢④:住宅ローン控除(該当者の税額控除)

住宅ローン控除は、住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合、年末時点のローン残高の0.7%が、所得税(控除しきれない場合は住民税からも)から直接控除される制度です。控除期間は最長13年間。

年収1200万円の場合の控除額

仮に5,000万円の住宅ローンを組んだ場合:
・年末残高:5,000万円
・控除額:5,000万円 × 0.7% = 35万円

ただし、控除上限額は住宅の種類(認定住宅、ZEH水準住宅など)によって異なります。詳しくは以下表を見てください。

住宅の区分 居住の用に供した年 控除期間 各年の控除額の計算(控除限度額)
認定住宅等 認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
令和4年・令和5年 13年 年末残高等×0.7%(35万円)
令和6年 13年 年末残高等×0.7%(31.5万円)(注1)
令和7年 13年 年末残高等×0.7%(31.5万円)
ZEH水準省エネ住宅 令和4年・令和5年 13年 年末残高等×0.7%(31.5万円)
令和6年 13年 年末残高等×0.7%(24.5万円)(注2)
令和7年 13年 年末残高等×0.7%(24.5万円)
省エネ基準適合住宅 令和4年・令和5年 13年 年末残高等×0.7%(28万円)
令和6年 13年 年末残高等×0.7%(21万円)(注3)
令和7年 13年 年末残高等×0.7%(21万円)
その他の住宅 令和4年・令和5年 13年 年末残高等×0.7%(21万円)
令和6年・令和7年 0年(対象外)
(注4)
年末残高等×0.7%(0万円)(注4)

引用:国税庁|住宅借入金等特別控除の控除期間および控除額の計算方法

(注1)特例対象個人が控除を受ける場合には、控除限度額が35万円になります。
(注2)特例対象個人が控除を受ける場合には、控除限度額が31.5万円になります。
(注3)特例対象個人が控除を受ける場合には、控除限度額が28万円になります。
(注4)新築等のその他の住宅のうち、令和5年12月31日までに建築確認を受けたものまたは令和6年6月30日までに建築されたものは、控除限度額が14万円として10年間の控除が受けられます。ただし、特例居住用家屋に該当する場合は、令和5年12月31日までに建築確認を受けたものが対象となります。

◆メリット
・税額控除なので効果が大きい
・マイホーム取得という「資産」と「節税」を同時に実現

◆デメリット
・マイホームを購入する人にしか使えない
・控除期間は最長13年間(その後は終了)

住宅ローン控除は、該当する方にとっては有効です。しかし、賃貸派の方には使えません。また、控除期間が終了すれば、再び高い税負担に戻ります。

選択肢⑤:不動産投資(他人資本の活用)

不動産投資は、投資用の不動産(マンションやアパート)を購入し、家賃収入を得る方法です。税務上の特徴は、減価償却費という「会計上の経費」を計上できる点にあります。

建物は時間とともに価値が減少するという考え方から、購入した建物の取得価額を、法定耐用年数にわたって「経費」として計上できます。この減価償却費は、実際にお金が出ていかない「帳簿上の経費」ですが、税務上は正式な経費です。

例えば、3,000万円の投資用マンション(建物部分2,000万円、土地部分1,000万円)を購入すると、建物部分2,000万円を耐用年数(RC造の場合47年)で割って、年間約42万円の減価償却費を計上できます。

この減価償却費やローンの利息、管理費などの経費が、家賃収入を上回れば、「不動産所得の赤字」が発生します。この赤字を、給与所得と損益通算して、課税所得を圧縮し、所得税・住民税の還付を受けられるのです。

年収1200万円の場合の節税シミュレーション

仮に年間100万円の不動産所得の赤字が発生した場合:

・課税所得の減少:100万円
・所得税の還付:100万円 × 23% = 約23万円
・住民税の軽減:100万円 × 10% = 約10万円
年間節税額】:約33万円

◆メリット
・節税効果が大きい(税率が高いほど効果大)
・他人資本(融資)を使って資産を築ける
・ローン完済後は家賃収入が私的年金になる
・団体信用生命保険による保障効果

◆デメリット
・空室リスク、家賃下落リスク
・物件選びを間違えると資産性が低い
・融資の審査や手続きが必要
・ある程度の知識とパートナー選びが重要

不動産投資は、年収1200万円という「高い税率」を持つ方にとって、最も節税効果が大きい選択肢です。そして、単なる「節税」に留まらず、「資産形成」と「将来の収入源確保」を同時に実現できる、選択肢でもあるでしょう。

ただし、物件選びやパートナー選びを間違えると、大きな赤字を背負うリスクもあります。この点については、後ほど詳しく解説します。

その「5選」を資産形成の「3ステージ」で再分類する

さて、ここまでで「年収1200万円の税金対策5選」を見てきました。それぞれに特徴があり、それぞれに価値があります。

しかし、多くの記事はここで終わってしまいます。「5つの選択肢があります。自分に合ったものを選びましょう」と。

しかし、それでは、あなたの悩みは解決しません。

なぜなら、あなたが本当に知りたいのは「5つの選択肢の説明」ではなく、「今の自分が、次に何をすべきか」だからです。

そこで、本記事では、この「5選」を全く新しい視点で再分類します。それが、資産形成の「3つのステージ」というフレームワークです。

このフレームワークを理解すれば、あなたは次のことが明確に分かります。

・今まで自分がどのステージにいたのか
・そして、次に進むべきステージはどこなのか
・なぜ、年収1200万円の自分が、その「次のステージ」に進むべきなのか

それでは、「3つのステージ」を詳しく見ていきましょう。

ステージ1:「控除」の最適化(守りの資産形成)

ステージ1は、国が用意した「控除の枠」を使い切ることで、課税所得を圧縮し、税負担を軽減するステージです。いわば「守りの資産形成」です。

◆該当する選択肢
ふるさと納税:寄付金控除の活用
住宅ローン控除:税額控除の活用

◆特徴

・国が制度として用意した「控除枠」を使う
・手続きが比較的簡単
・リスクが低い(またはゼロ)
控除額に上限がある(スケールアップに限界)

ステージ1の施策は実行すべきですが、重要なのは、これらには明確な「上限」があるです。

これらを最大限活用したとしても、年間の節税額は合計数十万円程度が限界です。

あなたが「年収1000万円から1200万円に昇給して、85万円が税金で消えた」という規模感と比べてください。ステージ1の施策だけでは、その「消えた85万円」を取り戻すには、到底足りないのです。

ステージ2:「自己資本」の運用(攻めの資産形成)

ステージ2は、自分の「元手(自己資本)」を使って、資産を増やすステージです。いわば「攻めの資産形成」です。

◆該当する選択肢
新NISA:自分の資金を株式や投資信託で運用

◆特徴
・自分のお金を使う(リスクは自分が負う)
・運用次第で資産を大きく増やせる可能性
・流動性がある(いつでも売却可能)
「今年の税金」を減らす効果はない

ステージ2の限界

新NISAは、長期的な資産形成において重要です。年間360万円、生涯1,800万円の枠を活用し、複利の力で資産を増やせます。

しかし、ステージ2には決定的な限界があります。

それは、「今年の所得税・住民税を減らす効果がない」ことです。

新NISAで得られるのは「運用益の非課税」というメリット。つまり、将来、資産が増えたときに税金がかからないという恩恵です。しかし、今年、来年とあなたが直面している「年収1200万円、税率33%」という高い税負担を、今すぐ軽減する効果はありません。

さらに、ステージ2には「スケールの限界」もあります。

仮に年間360万円を投資し、年利5%で運用できたとしても、1年間で増える資産は18万円です。もちろん、複利で長期運用すれば大きく増えますが、それは「10年後、20年後」の話です。

あなたが今、「手取りが停滞している」と感じている悩みを、ステージ2だけで解決することは難しいでしょう。

ステージ3:「他人資本」の活用(レバレッジの資産形成)

ステージ3は、自分の「信用力」を使って、他人の資本(融資)を動かし、資産を築くステージです。いわば「レバレッジの資産形成」です。

◆該当する選択肢
不動産投資:金融機関からの融資を活用

◆特徴
・自分の信用力(年収、勤続年数、属性)で融資を引く
・数千万円という大きな資本を動かせる
・減価償却費による「今年の節税」が可能
スケールが大きい(節税額も資産額も桁違い)

ステージ3の革命性

ステージ3が、ステージ1・2と決定的に異なるのは、「他人のお金を使える」という点です。

例えば、年収1200万円の方であれば、金融機関から3,000~5,000万円の融資を受けることも可能です(属性や頭金によって変動)。つまり、自分の手元資金が500万円しかなくても、5,000万円の資産を動かせます。これが「レバレッジ」です。金融機関から属性が高く評価されたら、数十万円程度の手出しで不動産投資を始められます。

そして、この「レバレッジ」こそが、年収1200万円という「手取り停滞期」を打破する、唯一の方法なのです。

3つのステージの比較表

項目 ステージ1(控除の最適化) ステージ2(自己資本の運用) ステージ3(他人資本の活用)
該当施策 ふるさと納税、iDeCo、住宅ローン控除 新NISA 不動産投資
使う資本 控除枠 自己資金 融資(他人資本)
年間節税効果 30~50万円(上限あり) 0円(運用益の非課税のみ) 数十万円~(規模次第)
資産形成の規模 小~中
リスク 中~高
必要な行動 制度への申し込み 投資・運用 物件選び、融資審査

なぜ年収1200万円は「ステージ1・2」の限界を超え、「ステージ3」へ進むべきなのか?

ここまでで、資産形成の「3つのステージ」を見てきました。

そして、多くの年収1200万円の方が、すでに「ステージ1」(ふるさと納税)を実行し、「ステージ2」(新NISA)にも取り組み始めています。

しかし、それでもなお、「手取りの停滞感」は消えません。

なぜなのか?

それは、「ステージ1・2」だけでは、年収1200万円という水準の「高い税率」と「大きな課税所得」に対して、スケールが足りないからです。

ここでは、なぜあなたが「ステージ3」へと進むべきなのか。その3つの理由を、明確に解説します。

理由1:「ステージ1・2」だけでは「手取り停滞」を打破できない(スケールの限界)

まず、冷静に数字を見てみましょう。

ステージ1の節税額

・ふるさと納税:実質負担2,000円(返礼品がお得なだけで、節税ではない)
・iDeCo(月2.3万円):年間節税額約9.1万円
・住宅ローン控除(該当者):年間節税額約21~35万円

仮に、これらすべてを最大限活用したとしても、年間の節税額は合計40万円程度が限界です。

しかし、思い出してください。

あなたは、年収1000万円から1200万円に昇給したとき、増えた200万円のうち85万円が税金と社会保険料で消えたのです。

50万円の節税では、この85万円の「消失」を取り戻せません。

ステージ2の限界

では、新NISA(ステージ2)はどうでしょうか?

新NISAは、確かに生涯1,800万円という大きな投資枠があります。しかし、新NISAには「今年の所得税・住民税を減らす効果」がありません。

あくまで「将来、運用益が出たときに、その運用益が非課税になる」という仕組みです。つまり、今年、来年と直面している「年収1200万円、税率33%」という高負担を、すぐに軽減できません。

さらに、新NISAは「自己資本の運用」です。仮に年間360万円を投資できたとしても、それは「自分の手元資金360万円を使っている」ということ。資産を増やすには時間がかかり、即効性はありません。

結論:ステージ1・2の限界

ステージ1とステージ2は、確実に実行すべき重要な施策です。しかし、年収1200万円という水準で直面する「高い税率」と「手取りの停滞感」を打破するには、スケールが足りないのです。

年収800万円程度であれば、ステージ1・2だけでも十分かもしれません。しかし、あなたは年収1200万円と、さらにもう1ランク上です。

この「高い税率」を活かし、「大きなスケール」で節税と資産形成を同時に進めるには、「ステージ3(他人資本の活用)」が必要です。

理由2:あなたの「年収1200万円」は「ステージ3」への最強の招待状

ここで、視点を変えましょう。

あなたは今、「年収1200万円なのに手取りが伸びない」と、停滞感を抱いているかもしれません。しかし、金融機関から見れば、「年収1200万円の信用力」は別格扱いです。

金融機関が見る「年収1200万円」の価値

金融機関が融資審査で重視するのは、次の3つです。

・年収(返済能力の指標)
勤務先・勤続年数(安定性の指標)
属性(公務員、上場企業、専門職など)

年収1200万円という水準は、日本の給与所得者の上位約5~6%に位置します。この年収帯にいると、それだけで「返済能力が高い」「安定している」と評価されるのです。

具体的には、年収1200万円の方であれば、金融機関から1億円以上の融資を受けるのも十分可能です(頭金や属性、物件の資産性や収益力によって変動)。

「信用力」という資産

つまり、あなたは「年収1200万円」という、目に見えない巨大な資産である信用力を持っているのです。

この「信用力」を使えば、数千万円という「他人のお金」を動かせます。自分の手元資金にあまり余裕がなくても、数千万円、あるいは1億円以上の資産を築けるのです。

これが、「ステージ3(他人資本の活用)」の本質です。

信用力を使わないことの機会損失

逆に言えば、この「信用力」を使わないのは、最大の機会損失です。

年収400万円や600万円の方は、この「信用力」がないため、たとえ不動産投資に興味があっても、融資を受けることが難しいでしょう。しかし年収1200万円クラスは、金融機関から見れば「ぜひ融資したい」と思われる属性なのです。

この「信用力」を、ステージ1やステージ2(自己資金だけの運用)に留めておくのは、あまりにももったいないと言えるでしょう。

あなたの「停滞期」はステップアップであるステージ3の入り口に手をかけている証拠です。つまり、あなたが感じている「年収1200万円なのに手取りが伸びない」という停滞感は、実は「あなたには、ステージ3に進む資格がある」というサインなのです。

年収600万円や800万円の方は、まだこの「停滞感」を感じません。なぜなら、税率がそこまで高くないからです。しかし、あなたは1200万円に到達し、33%ゾーンに突入した。だからこそ、「停滞感」を感じているのではないでしょうか。

理由3:あなたの「高い税率」が「ステージ3」のボーナスに変わる

あなたが「高すぎる」と嘆いていた税率23%(住民税込み33%)。この「高い税率」こそが、実は「ステージ3(不動産投資)」の利益に変わるのです。

税率が高いほど、損益通算の効果が大きい

不動産投資では、減価償却費やローンの利息、管理費などの経費が、家賃収入を上回った場合、「不動産所得の赤字」が発生します。

この赤字を、給与所得と「損益通算」することで、課税所得を圧縮し、所得税・住民税の還付を受けられます。

ここで重要なのは、還付される税金の額は、あなたの税率によって決まるのです。

具体例:年間100万円の不動産所得の赤字が出た場合

◆年収350万円の人(税率10%)の場合
・所得税の還付:100万円 × 10% = 10万円
・住民税の軽減:100万円 × 10% = 10万円
・【合計節税額】:20万円

◆年収1200万円の人(税率23%)の場合
・所得税の還付:100万円 × 23% = 23万円
・住民税の軽減:100万円 × 10% = 10万円
・【合計節税額】:33万円

同じ「年間100万円の赤字」でも、年収1200万円の方が、10万円以上も多く還付されるのです。投資規模が拡大し、会計上の赤字が増えるとさらに節税額は大きくなります。

年収1200万円は、ステージ3で最も得をする

逆に、年収2000万円を超えると、融資の審査は通りやすいですが、税率が40~45%とさらに高くなり、相続税対策など別の課題が出てきます。

年収1200万円という水準は、ステージ3において「最もバランスが良く、最も効果的」な年収帯なのです。

「ステージ3(不動産投資)」がもたらす10つのメリット

ここまでで、なぜ年収1200万円のあなたが「ステージ3」に進むべきなのか、その理由を解説してきました。

ここからは、実際に「ステージ3(不動産投資)」に進むと、どのようなメリットが得られるのかを、10の観点から詳しく見ていきましょう。

メリット1【税務】:iDeCoを超える「ケタ違いの節税」

まず、最も分かりやすいメリットが「節税効果」です。

iDeCoとの比較

iDeCo(月2.3万円拠出)の場合:
・年間節税額:約9.1万円

不動産投資で年間100万円の赤字が出た場合(年収1200万円):
・年間節税額:約33万円

節税効果は簡易的なシミュレーションでさえ、3倍超の差です。

さらに、不動産投資の規模を大きくすれば、この節税額はさらに増えます。例えば、年間200万円の赤字が出る規模の投資であれば、年間節税額は約66万円になります。

これが、「ステージ1(iDeCo)」と「ステージ3(不動産投資)」の、スケールの違いです。

メリット2【時間】:多忙な本業を圧迫しない「手間ゼロ運用」

年収1200万円という水準に到達している方の多くは、本業が忙しいでしょう。管理職、専門職、経営者…。日々の業務に追われ、「副業」や「投資」に時間を割く余裕がありません。

ここで、「ステージ2(新NISA)」と「ステージ3(不動産投資)」の決定的な違いが現れます。

新NISA(ステージ2)の「時間コスト」

新NISAで株式投資や投資信託を行う場合、次のような時間が必要です。

・銘柄選び、市場のリサーチ
・ポートフォリオの管理、リバランス
・経済ニュースのチェック
・暴落時のメンタルコントロール

もちろん、インデックス投資で「ほったらかし」にするのもできますが、それでも定期的なチェックは必須になります。

不動産投資(都心マンション + 管理委託)の「時間コスト」

一方、都心のワンルームマンション投資で、管理をすべて委託した場合:

・入居者募集:管理会社が実施
・家賃回収:管理会社が実施
・トラブル対応:管理会社が実施
・修繕の手配:管理会社が実施

あなたがやることは、基本的に毎月のレポートに数分目を通すのみです。

これが、「都心マンション + 管理委託」の最大のメリットといえます。本業に集中しながら、資産形成と節税を同時に進められるのです。

年収1200万円という多忙な方にとって、「時間を使わずに資産を築ける」ことは、金額以上の価値があります。

メリット3【レバレッジ】:他人資本(融資)で資産を築く「ワープ」

これこそが、「ステージ3」の最大の特徴であり、「ステージ2」との決定的な違いです。

ステージ2(新NISA)の資産形成スピード

新NISAで、年間360万円を投資し、年利5%で運用した場合:

・1年後:約378万円
・5年後:約2,039万円
・10年後:約4,527万円

確かに、複利の力で資産は増えますが、これには「時間」がかかります。そして、年間360万円を投資し続けられる人は年収1200万円では厳しいでしょう。自分の自己資金を投入し続けなければいけません。

ステージ3(不動産投資)の資産形成スピード

一方、不動産投資で3,000万円の物件を購入し、自己資金300万円、融資2,700万円で始めた場合、以下のようになります。(実際は自己資金をもっと減らすことも可能です。)

初年度から3,000万円の資産を保有

もちろん、ローンの残債があるため、純資産(資産 – 負債)は小さいです。しかし、ローンを返済していくと、純資産は毎年増えていきます。

10年後:ローン残債約2,000万円(元本返済で約700万円減少)
資産:約1,000万円(物件価値3,000万円 – ローン残債2,000万円)

さらに、ローン完済後(35年後)には、3,000万円の資産が丸々あなたのものになります。(物件の条件によっては融資期間が短くなります。)

これが、「他人資本(融資)」を使う威力です。

自己資金300万円しかなくても、3,000万円の資産を築ける。これは、ステージ2(自己資本のみ)では絶対に不可能な「ワープ」です。

メリット4【未来】:ローン完済後の「自動家賃収入(私的年金)」

不動産投資の真価は、ローン完済後に発揮されます。

35年後、あなたのローンは完済済ですが、残債なしの物件は残り、家賃収入は続きます。

ローン完済後のキャッシュフロー

仮に、月15万円の家賃収入がある都心マンションの場合:

・家賃収入:年間180万円
・経費(管理費等):年間36万円
・【手残り】:年間144万円

これはざっくりの計算にはなるものの、月15万円以上の「私的年金」になります。

公的年金だけでは不安な時代、この「私的年金」は、老後の生活に大きな安心をもたらすでしょう。

さらに、物件を複数持てば、この収入はさらに増えます。月15万円の家賃収入がある物件を3つ持てば、年間約400万円超の「私的年金」になります。

メリット5【リスク】:団信による「生命保険」効果

不動産投資でローンを組む際、ほとんどの金融機関で団体信用生命保険(団信)への加入が義務付けられています。

団信とは?

団信は、ローン契約者が死亡または高度障害状態になった場合、ローンの残債が保険金で完済される制度です。

つまり、万が一のことがあった場合、ローンはゼロになり、物件だけが残るのです。

遺族への資産

仮に、3,000万円の物件を購入し、ローン残債が2,000万円残っている状態で、あなたに万が一のことがあったとします。

・団信により、ローン残債2,000万円が完済
・物件(3,000万円)は無借金で遺族のものに
・遺族は、物件を売却するか、家賃収入を得続けるかを選択できる

これは、実質的に「3,000万円の生命保険」に加入しているのと同じ効果です。

しかも、通常の生命保険と違い、保険料(団信の保険料)はローンの金利に含まれており追加の支払いが発生するケースはあまりありません(金融機関によっては金利に0.1~0.3%上乗せ)。

年収1200万円という家族の大黒柱にとって、この「保障効果」は、金額以上の価値があります。

メリット6【インフレ】:現金の目減りを防ぐ「実物資産」

ここ近年、日本でもインフレが顕在化してきました。仮に物価上昇率が2~3%で推移すると、すなわちそれは現金の価値が毎年2~3%ずつ目減りすることを意味します。

現金1,000万円の購買力の変化

仮に、年間3%のインフレが続いた場合:

・現在:1,000万円
・10年後:約744万円の購買力(約26%減少)
・20年後:約554万円の購買力(約45%減少)

つまり、何もせずに現金を持っているだけで、資産は目減りしていくのです。

不動産という「実物資産」

一方、不動産は「実物資産」です。インフレが進めば、物件価格も、家賃も上昇する傾向があります(立地や需要による)。

つまり、不動産を持つことは、インフレから資産を守る「ヘッジ」になるのです。

特に、都心の好立地ワンルームマンションは、需要が安定しており、インフレ時にも価値を保ちやすい資産です。特に東京都の中心地は需要の高さゆえに、近年は大きく物件価格が高騰しています。

メリット7【流動性】:「都心マンション」の高い「換金性(売りやすさ)」

不動産投資のデメリットとして、「流動性が低い(すぐに現金化できない)」という点がよく指摘されます。

確かに、地方の一棟アパートや築古の物件は買い手が見つかりにくく、売却に時間がかかるケースもあります。

しかし、都心の好立地ワンルームマンションは、流動性が高い資産です。

都心マンションが売りやすい理由

・需要が安定している:単身者の需要が常にある
・投資家にも人気:利回り目的の投資家が買い手になる
・価格帯が手頃:2,000~5,000万円程度(エリアによる)で、個人投資家でも買える
・管理がしやすい:ワンルームは管理の手間が少なく、買い手にとっても魅力的

つまり、「急に現金が必要になった」という場合でも、都心マンションであれば、3ヶ月程度で売却できる可能性も十分にあります。

これは、同じ不動産でも地方の一棟ものや、築古物件にはない、大きなメリットです。

メリット8【相続】:資産を圧縮して渡す「相続税対策」

年収1200万円という水準にいる方は、将来的に相続税の対象になる可能性があります。

現金と不動産の相続税評価の違い

相続税は、相続する資産の「評価額」に対して課税されます。

現金:額面通り(1億円は1億円として評価)
不動産:時価ではなく、「相続税評価額」で評価

不動産の相続税評価額は、賃貸用不動産の場合、「貸家建付地」「貸家」として評価が下がり、時価の50~60%程度になるケースもあります。

以下はイメージをつかむために簡素化したシミュレーションです。

時価3,000万円の都心マンション(賃貸中):
・相続税評価額:約1,500~1,800万円

つまり、3,000万円の現金を持つより、3,000万円の賃貸不動産を持つ方が、相続税の評価額を約1,200~1,500万円圧縮できるのです。

これが、不動産の「相続税対策」効果です。

メリット9【信用力】:あなたの「年収1200万円」を最大活用できる

これは、すでに何度もお伝えしているポイントですが、改めて強調します。

年収1200万円という「信用力」

不動産投資は、「信用力」がなければ始められません。なぜなら、数千万円の融資を受ける必要があるからです。年収400万円や600万円の方は、融資を受けられたとしても、金額が限定されたり、金利が高くなったりします。

しかし、年収1200万円のあなたは、金融機関から「優良顧客」として扱われます

・融資額:3,000~5,000万円以上も可能
・金利:有利な条件(1.5~2.5%程度)
・審査:通りやすい

つまり、年収1200万円という「信用力」を持っているあなただからこそ、「ステージ3」に進めるのです。

この「信用力」という資産を使わずに放置するのは、大きな機会損失と言っていいでしょう。

メリット10【安定性】:景気に左右されにくい「家賃」という収入源

最後に、「家賃収入」の安定性について触れておきましょう。

株式配当との比較

ステージ2(新NISA)で株式投資を行い、配当金を得ることもできます。しかし、株式の配当は、企業の業績や経済状況によって変動します。不況時には、減配や無配になるリスクもあるのです。

家賃収入の安定性

一方、家賃収入は、景気に左右されにくい収入源です。

確かに、空室リスクや家賃下落リスクはあります。しかし、都心の好立地ワンルームマンションであれば、単身者の需要は常にあり、家賃は比較的安定しています。

さらに、「住む場所」は人間の基本的なニーズであり、景気が悪化しても需要がゼロにはなりません。この「安定性」は、長期的な資産形成において、重要な要素です。

「ステージ3」の落とし穴(不動産投資を始める際の注意点5選)

ここまで、「ステージ3(不動産投資)」のメリットを10個紹介してきました。

しかし、どんな投資にもリスクはあります。不動産投資も例外ではありません。

ここでは、「ステージ3」に進む際に注意すべき5つのポイントを解説します。

注意点1:「節税」という言葉に釣られる(資産性のない物件の罠)

不動産投資の営業トークで、最もよく使われるのが「節税になります」という言葉です。

確かに、不動産投資には節税効果があります。しかし、「節税」だけを目的に物件を選ぶと、大きな失敗をします。

節税目的の罠:築古木造アパート

例えば、「減価償却を最大化できる」として、築古の木造アパートを勧められることがあります。

木造の法定耐用年数は22年です。築20年以上の木造物件であれば、耐用年数が短縮され、4年で減価償却できます。つまり、大きな減価償却費を計上でき、節税効果は高いのです。

しかし、築古木造アパートには、次のようなリスクがあります

・建物の老朽化が進み、大規模修繕が必要になり、多額の費用がかかる
・空室リスクが高い(築古は入居者がつきにくい)
・売却時に買い手がつかない(資産価値が低い)
・減価償却が終わると、節税効果がゼロになり、逆に税金が増える

つまり、「節税」という目先のメリットに釣られて、資産性のない物件を買ってしまうのです。

正しい物件選びの基準

不動産投資で最も重要なのは、「資産性(将来も価値を保てるか)」です。

・立地:都心、駅近、需要が安定している
・建物:RC造(耐用年数47年)、管理がしっかりしている
・価格:適正価格(高すぎない)

節税効果は、あくまで「副産物」として考えるべきです。まず資産性、その上で節税効果という順番を間違えないことが重要です。

注意点2:「一棟もの」というスケールの罠(「経営」と「投資」の違い)

不動産投資には、大きく分けて2つのタイプがあります。

区分マンション(ワンルーム):1部屋だけを所有
一棟もの(アパート・マンション):建物全体を所有

「一棟もの」は家賃収入も大きいため、魅力的に見えます。しかし、年収1200万円の多忙な会社員にとって、一棟ものは「経営」であり、一言で「投資」と言えるほど簡単ではありません

一棟ものの手間とリスク
・複数の部屋の管理(空室が出れば収入減)
・大規模修繕(屋根、外壁など、数百万円規模)
・入居者トラブル(騒音、家賃滞納など)
・売却が難しい(買い手が限られる)

一棟ものは、負荷の高い「不動産経営」であり、時間と労力がかかります。本業で多忙なあなたにとって、管理会社に委託するとはいえ、一棟ものは「手間がかかりすぎる」リスクがあるのです。共用部の管理責任もあるため、大規模修繕なども、自ら主導して行わなければいけません。

都心マンションが「投資」として合理的な理由

一方、都心のワンルームマンション(区分)は:

・1部屋だけなので管理が楽
・大規模修繕は管理組合が実施(自分で手配不要)
・管理をすべて委託できる(手間ゼロ)
・売却しやすい(流動性が高い)

つまり、ワンルームは賃貸経営とはいえ、手間を最小限におさえながらも、節税と資産形成を両立させる手段です。年収1200万円の多忙なあなたにとって、「手間ゼロで資産を築ける」都心マンションこそが、合理的な選択と言えるでしょう。

注意点3:「管理(空室)」の罠(サブリースへの過信と管理会社の選定ミス)

不動産投資で最も心配されるのが、「空室リスク」です。

ここで、「サブリース(家賃保証)」を提案されることがあります。サブリースとは、管理会社が物件を一括で借り上げ、空室の有無に関わらず、一定の家賃を保証する仕組みです。

サブリースの落とし穴

一見、安心に見えるサブリースですが、次のような落とし穴があります。

保証家賃が相場より低い(家賃の80~90%)
保証家賃が下がる(市場の変化を理由に減額)
解約が難しい(契約内容によっては、オーナー側から解約できない)

つまり、サブリースは「安心」ではなく、「管理会社が得をする仕組み」であることが多いのです。

正しい管理会社の選び方

重要なのは、信頼できる管理会社を選ぶことです。

・入居率が高い(95%以上)
・対応が迅速(トラブル時にすぐ動く)
・透明性がある(収支報告がしっかりしている)
・実績がある(管理戸数が多い)

そして、立地の良い物件を選べば、空室リスクは大幅に下がります都心、駅近、単身者需要が安定している物件であれば、空室期間は短く、すぐに次の入居者が見つかる傾向にあります。

注意点4:「融資」の罠(金利上昇リスクとフルローンの危険性)

不動産投資の最大の魅力は「レバレッジ(融資)」ですが、これは諸刃の剣でもあります。

金利上昇リスク

変動金利でローンを組むと、将来的に金利が上昇すれば、返済額が増えます。

例えば、3,000万円のローンを金利2%、35年で組んだ場合:

・月々の返済額:約9.9万円
金利が3%に上昇した場合:

・月々の返済額:約11.5万円(約1.6万円増加)
この金利上昇リスクを考慮せずに、ギリギリのキャッシュフローで投資を始めると、金利上昇時に赤字になるリスクがあります。

フルローン(自己資金ゼロ)の危険性

「自己資金ゼロで始められます」という営業トークもありますが、フルローンには次のリスクがあります。

・ローン返済額が大きく、キャッシュフローが悪化
・金利が高くなる可能性がある(自己資金を入れた方が有利な金利条件)
・売却時に残債が物件価格を上回る(売るに売れない)

安全なレバレッジの目安

・自己資金:物件価格の5~10%
・金利:固定金利、または変動金利でも余裕を持ったシミュレーション
・キャッシュフロー:金利が1~2%上昇しても黒字を保てる水準

注意点5:「パートナー」選びの失敗

ここまで紹介した4つの罠(節税目的の築古物件、一棟ものの手間、サブリースの落とし穴、融資のリスク)を回避するための、最も重要なポイントがあります。

それが、信頼できるパートナー(不動産会社)を選ぶことです。

悪質な不動産会社の特徴
・「節税」だけを強調し、資産性に触れない
・強引な営業(即決を迫る)
・物件の欠点を隠す
・サブリース契約を強く推す
・「絶対に儲かる」などの断定的な表現

信頼できるパートナーの特徴
・リスクを正直に説明する
・複数の物件を比較して提案する
・長期的な関係を重視(売ったら終わりではない)
・管理体制がしっかりしている
・実績と口コミが良い

不動産投資は、「一度買ったら終わり」ではありません。購入後も、管理、入居者募集、トラブル対応など、長期的な関係が続きます。

だからこそ、信頼できるパートナーを選ぶことが、ステージ3で成功するための最重要ポイントなのです。

あなた専用の「ステージアッププラン」を設計しませんか?

ここまで読み進めていただき、ありがとうございます。

あなたは今、次のことを理解されたはずです。

・年収1200万円は「手取り停滞期」であること
・その停滞を打破するには、「ステージ3(他人資本の活用)」が必要であること
・そして、あなたの「年収1200万円」という信用力と「高い税率」が、ステージ3で最大の武器になること

しかし、ここで一つ、疑問が浮かぶはずです。

「では、具体的に自分の場合、どんなプランが最適なのか?」

・自分の年収、勤務先、家族構成で、どの程度の融資が受けられるのか?
・どの立地、どの価格帯の物件が、自分に合っているのか?
・節税効果は、具体的にいくらになるのか?
・キャッシュフローは、どうなるのか?
・リスクは、どう管理すればいいのか?

これらの疑問は、一般論では答えられません。あなた専用の「オーダーメイドプラン」が必要です。

私たちは、年収1000万円超のハイクラス層の資産形成を専門とするコンサルタントとして、あなた専用の「ステージアッププラン」を無料で設計します。

無料個別面談で得られるもの

・あなたの融資可能額の診断(年収、勤務先、属性を基に)
・最適な物件タイプの提案(立地、価格帯、利回り)
・節税シミュレーション(具体的な節税額を数字で提示)
・キャッシュフローシミュレーション(月々の収支、10年後、20年後の資産予測)
・リスク分析と対策(金利上昇、空室、売却時のシナリオ)

これらを、あなたの状況に合わせて、完全オーダーメイドで作成します。

オンラインでも対面でも可能です。私たちの目的は、「あなたが正しい判断をするための情報を提供すること」です。無料相談できる機会をぜひ、検討されてみてください。

「ステージ1」「ステージ2」での努力は、もう十分です。

「ステージ3」だけが、あなたの「信用力」と「高い税率」を逆手に取り、今の停滞期を突き破る可能性を秘めています。

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【FAQ】年収1200万円の人のよくある質問

Q1: 自己資金はいくら必要ですか?

A: 一般的には物件価格の10~20%が目安と言われています。しかし、資産性の高い物件であれば、できる限り借り入れをして、投入する自己資金を減らした方が賢明な選択になるでしょう。

ただし、年収1200万円という属性であれば、自己資金が少なくても融資を受けられるケースもあります。属性と物件の条件など、さまざまな要素がそろうと数十万円程度の自己資金でも不動産投資を始められます。

Q2: 住宅ローンが残っていても「ステージ3」に進めますか?

A: はい、可能です。

住宅ローンが残っていても、不動産投資用のローンは別枠で審査されます。ただし、住宅ローンの残債や年間返済額は、融資審査の際に考慮されます。年収1200万円であれば、住宅ローンを返済しながらでも、投資用ローンを組める可能性は十分あるでしょう。

具体的な融資可能額は、あなたの状況によって異なりますので、個別面談でご相談ください。

Q3: ステージ1, 2(iDeCo, NISA)と、ステージ3(不動産投資)は併用できますか?

A: はい、併用が最強です。

iDeCo、新NISA、不動産投資は、それぞれ異なるメリットを持っています。

iDeCo:確実な節税(年間約9.1万円)
新NISA:運用益の非課税(長期的な資産増加)
不動産投資:大規模な節税+資産形成+私的年金

これらを併用すると、短期(節税)、中期(資産増加)、長期(私的年金)のすべてをカバーできます。

年収1200万円であれば、すべてを同時に進められる可能性もあります。

Q4: なぜ「都心マンション」がステージ3の第一歩として最適なのですか?

A: リスクと手間の観点から、最もバランスが良いからです。

不動産投資には、さまざまなタイプがあります(一棟アパート、戸建て、地方物件など)。しかし、年収1200万円の多忙な会社員にとって、都心マンションが合理的です。

都心マンションのメリット

手間ゼロ:管理をすべて委託できる
需要安定:単身者需要が常にある
流動性高い:売りやすい
価格帯が手頃:2,000~4,000万円で始められる
管理が楽:1部屋だけなので複雑さがない

一棟ものは規模の大きさが魅力的ですが、手間とリスクもそれなりにかかります。地方物件は良い利回りである一方、空室リスクと売却リスクが高いです。

ステージ3の第一歩として、リスクと手間を最小化しながら、確実に資産を築くには、都心マンションがおすすめです。

Q5: 個別面談で「プラン設計」をしてもらうと、営業されますか?

A: 強引な営業は一切ありません。

私たちの目的は、「あなたが正しい判断をするための情報を提供すること」です。

面談では、あなた専用のプランを設計し、メリットもリスクも正直にお伝えします。その上で、「今は見送る」と判断されても、全く問題ありません。ぜひ、安心してご相談ください。

まとめ:「手取りの停滞期」に留まるか、次の「ステージ」へ進むか。

年収1200万円の到達、改めておめでとうございます。

しかし、あなたが感じている「手取りの停滞感」。それは、決してあなたの努力不足ではありません。

それは、所得税と住民税の合計税率33%ゾーンへの突入という、税制上の構造が生み出している現象です。年収1000万円から1200万円に昇給しても、増えた200万円のうち85万円が税金で消える。この「割に合わなさ」は、年収1200万円という水準に特有の悩みなのです。

そして、多くの方が、この悩みを解決するために、「ふるさと納税」「iDeCo」「新NISA」という「定番の節税対策」に取り組みます。

繰り返しになりますがこれらは実行すべきです。しかし、それだけでは足りません。

なぜなら、これらは「ステージ1(控除の最適化)」と「ステージ2(自己資本の運用)」だからです。年間の節税額は合計数十万円程度が限界であり、あなたが直面している「高い税率(33%)」と「大きな課税所得」に対して、スケールが足りません。

あなたには、「ステージ3(他人資本の活用)」が必要です。

そして、この「ステージ3」に進めるのは、「年収1200万円」という抜群の信用力を持つあなただけです。

・年収1200万円は、金融機関から見れば「別格の信用力」であり、3,000~1億超の融資を引ける力

・その「信用力」を使えば、自己資金が少なくても、数千万円という「他人のお金」で資産を築ける

・そして、あなたが「高すぎる」と嘆いていた税率33%は、不動産投資の損益通算において「最大の武器」になる

年収1200万円という「停滞期」は、実は「分岐点」です。

ここで、2つの道があります。

◆道A:停滞期に留まり続ける
・iDeCoで年間約9万円の節税を続ける
・新NISAで自己資金を少しずつ運用する
・しかし、「手取りの停滞感」は消えず、昇給しても税金で半分消える日々が続く

◆道B:ステージ3へと進む
・年収1200万円という「信用力」を使い、数千万円の資産を築き始める
・年間数十万円以上の節税を実現する
・ローン完済後は、年間数百万円の「私的年金」が自動的に入ってくる未来を手に入れる

どちらを選ぶかは、あなた次第です。

しかし、一つだけ確実に言えることがあります。

「年収1200万円」という信用力は、永遠に続くものではありません。

年齢を重ね、定年退職すれば、この「信用力」は消えます。融資を受けられる「今」だからこそ、ステージ3に進めるのです。

面談の結果、「今回は見送る」という結論に至っても、それは一つの正解です。最がリスクが高いのは、不確かな情報のまま迷い続けること。

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監修者

この記事を監修した人

室田 雄飛

この記事を監修した人

室田 雄飛

J.P.Returns株式会社
CR室担当部長

J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。

Writer

執筆者

この記事を書いた人

染谷 重幸

この記事を書いた人

染谷 重幸

大学在学中に家庭教師のアルバイトをきっかけにデイトレーダーへ転身。24歳で資産運用法人を設立する。25歳から大手投資用マンションディベロッパーと業務提携後、およそ6年間にわたり資産運用アドバイザーとして活躍。その後、大手不動産仕入れ会社で販売統括責任者として従来の投資用物件の流通システムを革新するプロジェクトを立ち上げる。国内最大規模の投資イベント「資産運用EXPO」で登壇実績があり、同業他社からも多くの見学者が立ち見の列を作った。2020年にJ.P.RETURNSに参画。オンラインでの商談やWEBセミナーを導入し、コロナ禍でも年間300件以上の顧客相談を担当している。

資格

宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)

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